環境とどう向き合うべきかを問う優秀賞作品
──「環境フォト・コンテスト」の募集テーマは「写真の力~レンズがとらえた瞬間~」。どのような思いを込めたのですか。
【佐藤】写真を眺めていると、撮影時には気づかなかった発見があったり、新たな感情が湧き起こったりすることがあるでしょう。「写真の力」とは、見過ごしてしまうような瞬間的な美しさ、はかなさ、「今」でなければとらえることができない時代性といったものを、克明に記録できる点ではないかと思います。ふだん目に見えているものは、広い世界のほんの一部分。そんな感覚を、写真を通じてたくさんの人と分かち合えればと想像して設定した募集テーマです。
──優秀賞として「競演」を選定した理由を教えてください。
【佐藤】気候変動の影響を抜きにして、これからの都市のあり方を語ることはできません。持続可能な未来を実現するために、人類は自然の力を利用した再生可能エネルギーの導入を進めています。その一方で、近年、自然災害の脅威にさらされる場面が増加していることも忘れてはなりません。私たちは環境とどう向き合っていくべきか、どうやって共存を探ればいいのか、立ち止まって考えるきっかけを与えてくれるのが「競演」という作品だと感じます。
意表をつかれる「稲妻」と「花火」のコラボレーション。単なる偶然の産物ではなく、刻々と変化する状況の中、作者が予測に基づいて的確にアングルやポジションを調整した結果でしょう。ポイントの一つは、精密に描写された海辺の近代都市。このディテールがあるからこそ、落雷と花火の組み合わせがより際立ち、心に強く訴えかける一枚になったのだと思います。また、小さな被写体が生き物の死や自然界の循環といった「大きな営み」について伝えてくれる「最期の輝き」、地球と彗星の一期一会を描いた「天の輝き、地の灯り」の佳作2点についても、私たちが期待する「写真の力」がみなぎっていました。
自分たちの事業活動にも厳しい目を向ける
──企業として取り組む地球環境保全へのアプローチの軸も「写真」ですね。
【佐藤】当社は、写真文化を守り続けることが、すなわち地球環境の維持にも貢献すると考えています。地球環境の大切さや変化を記録し、共有する上で「写真」の存在は不可欠です。写真を愛する人々に向けた撮影や作品発表の機会の創出、写真の魅力を幅広い年齢層の方々に知っていただくための啓発活動などを継続しています。具体的な行動指針として、私たちは社会に対して「写真文化活動」「環境保護活動」から成る「7つの約束」を掲げています。
まず「写真文化活動」の一つ目は「美しい自然の写真コンテストを続けます」。写真コンテストの主催あるいは協賛によって、環境保護への関心を高め、行動に移す後押しをすることが目的です。次に「“思い出づくり研究所”で思い出づくりに貢献し続けます」。「思い出の残し方」についてさまざまな角度から調査・分析・考察に取り組み、その重要性を社会へ発信していくことが研究所の役割です。
──「環境フォト・コンテスト」に期待するのはどのようなことでしょうか。
【佐藤】「環境保護活動」の項目に「“環境フォト・コンテスト”の協力を続けます」と含めているとおり、コンテストの趣旨に共感し、当社の重要な活動として位置付けています。環境問題を乗り越えるには、企業と市民が互いに協力する体制をつくることが重要。その架け橋になればと思っています。そして二つ目、三つ目は「“日本野鳥の会”の賛助を続けます」「“知床財団”の賛助を続けます」。野鳥が生息する森や、世界自然遺産が、未来にも素晴らしい姿のままで残ることを強く願っています。
もちろん、当社の事業活動そのものについても自ら厳しい目を向け、改善を重ねながら環境への配慮を深化させていくつもりです。写真プリントにおいても、環境負荷をいかに低減するか、常により良い方法を検討。「ミニラボの安全な処理を続けます」という約束を引き続き守っていきます。最後の七つ目の約束として挙げている「お客さまの使用済みフィルムケース、電池、インクカートリッジの回収を続けます」も、写真文化をさらに発展させていこうとする中で、当然私たちが負うべき責務。写真に関わる人もそうでない人も、誰もが気持ちよく過ごせる地球環境のために、いっそう徹底していきたいと考えています。
──最後に、今後に向けてひと言お願いします。
【佐藤】シャッターを押した瞬間の記憶や感動を、写真は見るたびに何度でも呼び起こしてくれます。この「写真の力」が地球環境を守ることにつながるよう、「キタムラだからできる」環境活動を積極的に展開していきたいと思います。