実はとても重要だった偶発的なコミュニケーション
当初コロナ禍の緊急事態をしのぐ方策ととらえられていたテレワークが、恒常的な働き方として定着しつつある。そこで浮かび上がってきたのがコミュニケーションに関わる課題だ。
「ちょっと雑談をしたり、他部署のメンバーと立ち話をしたり──。オフィスでは当たり前だった何気ないコミュニケーションの喪失がテレワーク特有の疲れやストレスの要因になっていると感じます」とoViceのジョン・セーヒョンCEOは言う。
「既存のウェブ会議システムや電話で仕事に必要なやりとりはできますが、それだとふと思いついたことを話したり、ついでの報告をしたりといった偶発的なコミュニケーションが生まれにくい。私自身、チュニジア出張中に新型コロナウイルスのパンデミックが発生し、長期のテレワークを余儀なくされました。そこでのフラストレーションが、oVice開発の出発点になっています」
oViceの特徴は、何よりコミュニケーションに“空間”の概念を取り入れた点にある。ブラウザ上の仮想のオフィスの中を自分の分身である「アバター」が行き来する。アバターがオフィス内を移動すると、周囲の声が自然に耳に入り、話者に近づくほどクリアになる。興味があれば雑談の輪に加わることも可能。現実のオフィスと同じように、周りのさまざまな声を耳にしながら、メンバーと気軽にやりとりできるのだ。
「oViceでは音声でのコミュニケーションが基本。相手との距離感や位置関係をリアルに再現するため、その聞こえ方にはこだわりました。アバターの動きに合わせて直感的に話せるように作り込んでいます」とジョン氏。
ほかにもオフィス同様のやりとりを助ける機能が実装されている。例えば、画面共有は容易でPC画面を見せながら相談する感覚で話すことができる。また会議室を使えば会話は周囲に漏れないため、機密性の高い打ち合わせや商談も問題なく行える。専用アプリは不要でブラウザからアクセスでき、低速の通信環境でも作動するため、利用する場所を選ばないのも利点だ。
会話の録音やチャット履歴の保存機能は現時点ではないが、今後外部ツールと連携して導入する予定。実現すれば、会議の議事録を簡単に取ることが可能になる。
「業務上のやりとりに向いているチャットツールと偶発的なコミュニケーションを助けるoVice。この両方を掛け合わせることでテレワークの可能性が高まると私たちは考えています」とジョン氏は話す。実際、これまでのコミュニケーションツールにoViceを加えることで、効果を上げている企業は多いという。
サービスリリース半年で利用は2500件以上
企業がこの新たなバーチャルオフィスにどれだけの価値を見いだしているか。それはユーザー数を見れば明らかだ。oViceは昨年8月にリリースされ、特に2度目の緊急事態宣言以降、利用数が急増。今年2月末時点で2500件以上となっている。どこからでも同じ場所に出社できるため、一度使ったら手放せなくなる企業は多い。
「背景には、現場レベルでテレワークへの不満が着実に高まってきている現状がある」とジョン氏は見る。
「会社の旗振りで全社一斉に導入するよりも、まずはコミュニケーションに課題を感じているチームのリーダー主導で取り入れられるケースが多いですね。利用者が自発的なコミュニケーションを楽しむことで定着が進んでいきます。また最近は、空間としてのoViceに着目し、オフィスだけでなく、交流会や学生向けの説明会、ECサイトの接客スペースなどに活用する事例も出てきています」
テレワークを持続的な働き方にするためには、人と人のつながり方を再設計する必要がある。そのツールとしてoViceはさまざまな可能性を持っている。2週間の無料トライアルが可能なため、まずはチームで体験してみるのが近道だ。
導入企業からの声
出社率1割以下でも拠点間の交流は活性化 今後はOJTなどにも活用を
ウイングアーク1st
各種ソフトウェアを提供するウイングアーク1stでは、働き方改革やコロナ禍への対応のためテレワーク化を加速。テクニカルセールス部約30人がoViceを活用中。
昨年10月にオフィス床面積の3分の2を縮小。実オフィスへの出社率は1割以下ですが、oViceによりテレワークで失われたコミュニケーションを取り戻せています。遠方のメンバーとの会話も増え、拠点間の交流は以前より活発になりました。
導入にあたって最初の1カ月はテスト期間として週単位でアンケートを実施。社員が入ってきやすい、入りたい環境を用意するためレイアウトも自分たちで作成し、雑談スペースや集中スペースを用意しました。なかでも温泉エリアは人気です。
さらに、カスタマーサクセス部のキャリア採用組の歓迎会にもoViceを活用しました。参加者からは「コミュニケーションを重視している企業だとわかった」「交流がリアルに近い印象」「全員に聞かれない形で会話できるので、個人的な話もできた」などの声が寄せられています。今後は新入社員のOJTでの活用も検討中。テレワークでよく発生する「先輩にすぐに聞けない」「会社の雰囲気がわからない」などの問題が軽減されるのではないかと期待しています。