場所と時間にとらわれない働き方が広がるなか、その実践の場として注目されているのが長野県だ。独自に「信州リゾートテレワーク」を推進し、企業主導のワーケーションもサポートしている。今回、実践企業の一社である日本ユニシスの永島直史執行役員に取り組みの内容や現地の魅力を聞いた。

「日本ユニシスは、長野県および長野県立大学と連携協定を結び、地域活性化に取り組んでいます。そのなかで現地の人や自然の魅力に触れ、ワーケーションを行うことになりました。参加したのは、社会課題の解決を目的とした新サービス創出を担うチームの6名。昨年11月に一泊二日、立科町で実施しました」と永島氏は言う。

永島直史(ながしま・なおし)
日本ユニシス株式会社
執行役員
スマートタウン戦略本部長

大きな目的は二つ。メンバーが地域の課題に直に触れ、新たな事業の気づきを得ること。そして、場所を選ばない働き方を体感することだ。

「結論からいえば、いずれにおいても非常に有意義でした。町役場による調整のもと、行政職員やテレワーカーの方とディスカッションする場も設けていただきました。雇用関連の課題など、リアルな声を聞けたのはやはり現地に行ったからこそです。また、その他の時間は意識して普段通りの業務を行いましたが、こちらも極めて快適。業務後は地元の商店を訪れたり、温泉を楽しんだり、東京では味わえないゆとりの時間を過ごすことができました」

加えて日本ユニシスが評価するのが、その受け入れ体制だ。立科町をはじめ長野県内の多くの自治体は、すでに何年にもわたりワーケーションをサポートしてきた実績がある。宿泊施設や業務スペース、高速のネット環境など、細かな要望を出さなくても、基本的なものは準備されていたという。

確立された長野ブランドを体感しながら働ける

コロナ禍で在宅勤務が続くなか、実際にメンバー同士が顔を合わせられたこともメリットという今回の取り組み。永島氏はさらに一つの可能性を見いだすことができたという。

「メンバーは通常、東京で事業の企画を立てています。それはどこかのタイミングで現場での検証が必要となる。ならば、企画立案の拠点自体を現地に置き、地域の方々と一緒に構想を練るのも有効な方法だと感じました」

長野県は、未来の子どもたちのため産学官で環境保全や教育、福祉に先進的に取り組んでおり、「暮らす人たちに誇りを感じる」と永島氏は話す。

「長野ブランドがしっかりと確立しているというのが私たちの印象。そうしたものを体感しながら働くことは、当社が重視している『自ら考え、自らチャレンジできる人財』を養うことにもつながるはずです。その意味で、今後も長野県との関係性を深め、多様な働き方ができるように変革していきたいと考えています」

そして最後に、今回の立科町での成果を踏まえ、ワーケーションのとらえ方について次のように付け加えた。

「ワークとバケーションの掛け合わせの観点から、福利厚生や生産性の効果は検証されるべきでしょう。しかし、これからはワーク×イノベーションの側面も大事にして、ワーケーションの創造的な効果にもいっそう目を向けるべきだと感じています」

企業のワーケーションをサポートする三菱地所はこう考える

働く人のスイッチが切り替わる非日常感、ワクワク感が長野県の魅力

玉木慶介(たまき・けいすけ)
三菱地所株式会社
営業企画部 専任部長

三菱地所では、ワーケーションを単に「ワーク×バケーション」ではなく、「ロケーション」を変えて、「コミュニケーション」を深めたり、「イノベーション」を創出したり、さまざまな「ation」を実現するものと定義し、現在軽井沢と南紀白浜でそれを支えるワークスペースを企業に提供しています。

柔軟な思考や活発な議論を後押しするワーケーション。その取り組みはコロナ禍で新たな価値を持ちつつあります。企業の多くは従来、「従業員が共に同じ時間を過ごす」ことで組織の求心力を維持してきましたが、昨今の在宅勤務はこれを崩す負の側面があります。これに対し、ワーケーションという濃厚な「リアルな場」は、組織の健康を維持する「サプリメント」のような効果が期待できるのです。

そうしたなかで、長野県の魅力は何より非日常感やワクワク感を醸成するブランドが確立されている点です。付加価値創出につながるワーケーションの実現には、日常から非日常に「スイッチを切り替える」ことが重要です。長野県は、首都圏などからのアクセスが良好ながら、非日常を感じられる要素を十分に備えています。

そして、ワーケーションのメリットは、受け入れ地域にももたらされます。人の流入による経済効果はもちろんですが、自治体などが自分たちの魅力や優位性を振り返る機会を得られる。この「考える過程」が地域にとって貴重な財産になると考えています。

長野県より

40を超えるリゾートテレワーク拠点がモチベーションや幸福感の向上を後押し
阿部 守一(あべ・しゅいち)
長野県知事

豊かな自然をはじめとする多彩な魅力に触れることで、クリエイティビティを最大限発揮させ、モチベーションや幸福感を向上させてほしい。長野県ではそうした思いのもと、「信州リゾートテレワーク」を推進しています。

具体的には、県内各地でテレワーク環境の整備や体験会の開催などを支援。すでに40を超えるリゾートテレワーク拠点が誕生しています。

新幹線が通り、高速道路網も発達した長野県はアクセス抜群の身近なリゾート地です。スキー、温泉、森林セラピー、ワインなど、魅力的なコンテンツを数多く有し、「田舎暮らしの本」(宝島社)でも、「移住したい都道府県ランキング」で15年連続1位に選ばれています。高い技術力を持ったものづくり企業が集積し、近年はクリエイティブ企業の立地が進むなど、ビジネス環境も魅力です。

実際にテレワークをされた方たちからは、「澄んだ空気や自然の音に癒やされ、仕事がはかどる」「仕事の合間にすぐリフレッシュできる」といった声をいただき、さらに「チーム合宿で普段にはない雑談や一歩踏み込んだ議論ができ、一体感が強まった」との評価もありました。

広大な県土に地域の特性を活かしたさまざまなテレワーク拠点を構える長野県で、ぜひこれからの時代の豊かなライフスタイルを実現していただければと思います。