毎年、各種国家試験で高い合格率を誇る昭和大学は、医学部、歯学部、薬学部、保健医療学部(看護学科、理学療法学科、作業療法学科)の4学部6学科からなる国内屈指の医系総合大学だ。90年を超える歴史を持ちながら、2021年度から「国語」を入試選択科目に採用するなど、新たな取り組みも積極的に進めている。

異なる学部の学生がチームを組み、課題の解決策を探る

1928年に昭和医学専門学校として開学した昭和大学が変わらずに追求していること。それは、“これからの医療界で求められる人材”の輩出といっていいだろう。当時、官立(国立)大学出身の医師の多くが、病気の見立てはできても検査や治療ができないといわれる中、「実地に役立つ医師の育成を」と設立されたのが昭和医学専門学校だ。以来、社会の変化をとらえながら、教育、研究の質を高め、医療現場のニーズに応えてきた。

学長の久光正氏は言う。「今日、医療の世界では各分野の専門性が高まり、AIやロボットの活用も進んでいます。医療の進歩自体は歓迎すべきものですが、それが『患者さん』ではなく、『病気』を診ることにつながってはならない。私たちが目指しているのは、何より患者さんの立場になって考え、行動できる医療人の育成にほかなりません」。その思いは、建学の精神である“至誠一貫”にも見て取れる。至誠とはつまり「まごころ」のこと。心を込めて、「人」に対して医療を施す。これが昭和大学の根本なのである。

そんな同学が、かねて重視しているものの一つが「チーム医療」だ。医師や薬剤師、看護師、理学療法士、作業療法士など多様なスタッフが連携して治療やケアにあたるこのスタイルは、近年国も「患者の生活の質(QOL)の維持、向上などに大きく貢献する」と推進している。実は昭和大学は、このチーム医療を教育するのに非常に適した環境を持っている。なぜなら4学部6学科の学生が継続的に連携して学ぶことができるからだ。

まず特徴的なのは、1年次の全寮制生活である。昭和大学のすべての1年生は富士吉田キャンパスで学部の枠を越えた寮生活を送る。あえて学部の違う4人が同じ部屋で暮らす目的について、久光学長は「異なる価値観や習慣を持つ者が共同生活を行う中で生じる行き違いや衝突を乗り越える訓練をするため」と説明する。実際、寮生活を通じて自らを見つめ直し、大きく成長する学生は多いという。

すべての学部の1年生が全寮生活のもとで学ぶ、昭和大学の富士吉田キャンパス。学部の異なる学生4人が同じ部屋で寝食を共にする中で、他者への思いやりや幅広い視野を養っていく。

またカリキュラムにも、全学部の教員および附属病院が連携して構築した独自のプログラムが組み込まれている。初年次から各職種の立場で症例を検討し、患者さんが抱える課題を解決に導く実習を展開。4年次(保健医療学部は3年次)以降は、学部混合で学生がチームを組み、病棟の入院患者さんを担当する。8つある附属病院で、全学部のすべての学生が臨床実習を行えるのは昭和大学の大きな強みだ。例えば薬学部の学生も、病棟のベッドサイドで実習が可能。これは、他学ではなかなかできない経験である。

「学生時代からチームで課題の解決に取り組む意義は、第一に視野が広がること」と久光学長。「1年生のうちは目の前のことや自分の専門に考えが集中してしまいがちですが、年次を重ね、より臨床現場に即した課題と向き合う中で患者さんをいろいろな角度からとらえられるようになるのです」

4学部混合のチームで学ぶPBL(問題解決型学習)では、数人のグループで与えられた課題について討論・発表を実施。各学部の考えを出し合うことで、多様な視点から解決策を探っていく。

論理的思考力を重視し、「国語」を入試選択科目に

設立以来、時代の要請に応えてきた昭和大学はこのたび、入試選択科目に「国語」を採用した。論理的思考力の適切な評価が一つの目的だ。人々の生活が急速に変化する中で、物事を的確に判断する分析力や論理的思考力は医療人にとっても極めて重要。あわせて、医療の現場では「言葉」も患者さんの状態を知る大事な手段であるというのが背景にある考えだ。確かに、異なる価値観や感性を持つ者同士がやりとりする際に論理性は欠かせない。コミュニケーション力ともつながる「国語」の入試科目への採用は合理的なものといえるだろう。

一方、2021年度の医学部入試においては「地域枠」の設定も予定している。地域医療に貢献したいと考える者を支え、同時に地域による医師の偏在を解消する手段でもある地域枠選抜は、社会的意義がいっそう高まっている取り組みといえる。同学では、静岡県5名、新潟県2名の地域枠を設ける計画だ。

歴史に基づく伝統と、新たな取り組みを積極的に進める革新性。双方を兼ね備える昭和大学が目指すのは、繰り返しになるが、患者さんと真に向き合う医療人の育成である。充実した附属病院を有し、医系総合大学として独自の教育、研究環境を備えるこの大学からどのような人材が輩出されるのか――。社会が大きく変化する中、これまで以上に期待と関心を集めることになりそうだ。

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