誰にとっても身近な素材である発泡スチロール(※1)。しかし、特性や利用法については知られざる事実や誤解も多い。今回、発泡スチロール協会の会長を務める青井郁夫氏と、副会長を務める片岡孝次氏に、その真価や可能性について聞いた。

多彩な優れた特性を持ち経年劣化もしにくい

──協会では「発泡スチロールの優れた特性で地球環境を守ります」というスローガンを掲げています。具体的にどんな特性があるのでしょうか。

【青井】まず挙げられるのが省資源性。発泡スチロールは、石油製の発泡剤入りビーズを約50倍(※2)に膨らませてつくるため、98%は空気でできています。その製造に相当量の石油が使われているイメージがあるかもしれませんが、2018年の数字では日本が必要とした約4億トンの原油のうち、発泡スチロールに使われたのはおよそ12万トン。わずか0.03%程度に過ぎません。

発泡スチロール(EPS)の優れた特性で地球環境を守ります
発泡スチロールは、少量の石油からつくることができる省資源な素材。断熱性や緩衝性、耐久性をはじめ、さまざまな特性を持ち、地球環境の保全に大きく貢献する。また、ほとんどが単一素材であるため分別が容易で、使用済み製品の有効利用率も約90%と非常に高い。

【片岡】内部に空気を多く含んでいるため、断熱性や緩衝性、軽量性などを備えているのも発泡スチロールの特徴で、それを利用すること自体が地球環境保護や社会貢献につながります。

例えば住宅用断熱材として利用され、ゼロエネルギー住宅の実現を後押し。経年劣化しにくく、南極・昭和基地に使われたものが40年以上経っても当初の性能を維持していたという実績もあります。また軽くて丈夫なので、鉄筋コンクリート造の建物の床に埋設して柱や梁の負担を減らしながら耐震強度を上げたり、軟弱地盤を補強する土の代わりに道路基礎として用いられたり、災害国である日本で強靱な国土づくりにも役立っています。

──野菜や魚を運ぶ容器に使うイメージが強かったのですが、目に見えないところでも活躍しているんですね。

【青井】確かに最も多いのは魚や農産物の鮮度を保つ食品輸送容器で、2019年の輸入品も含めた国内年間需要のうち、約53%を占めています。2番目が建築・土木向け資材で約17%。その次が弱電向け緩衝材や構造断熱部材で約15%となっています。

【片岡】さらに残り15%の用途は、住設機器や自動車といった工業製品向け断熱・軽量材、ビーズクッションや医療・介護用の固定具、各種モニュメントの造形材、ヘルメットの芯材など、本当にさまざまです。

──なじみ深い素材なのに、お話を聞いてみると、なるほど知らなかったことが多いです。

【青井】使用済み発泡スチロールの有効利用率もそうだと思います。その数字は、熱源として利用されるサーマルリサイクルとプラスチック原料として再資源化されるマテリアルリサイクルを合わせて約90%。特にマテリアルリサイクル率は約53%で、国内プラスチック製品全体の約28%と比べて2倍近い数字になっています(いずれも2018年)。

さらに、よくある誤解として燃やすとダイオキシンのような有害物質が出るというものがありますが、発泡スチロールの化学式は(C8H8)nで、燃焼時に出る黒い煙は炭素です。法律に適合した食品輸送容器やシックハウスに配慮した低VOC製品など、発泡スチロールは環境や人体にやさしい素材でもあります。

──循環型社会における発泡スチロールの役割をどうとらえていますか。

【片岡】お伝えしたとおり、発泡スチロールはわずかな原料を有効活用し、リサイクル率も高い循環型社会に適した素材で、その特性が経年劣化しにくいのが強み。40年以上使用可能という耐久性が生きるのが、建築・土木向け資材、ビーズクッションなどのライフグッズ、工業製品向け断熱・軽量材といった分野です。現在、業界を挙げてこれらの需要拡大に取り組んでいます。

協会として、その特性をこれからの社会を担う世代にも知ってほしいとの思いから、全国の小中学生、高校生に向けた体験プログラムなどもより充実させていきたいと考えています。

※1:発泡スチロールには複数の種類がある。今回の内容は球状のポリスチレン(ビーズ)を発泡させ、成形したEPSが主な対象。
※2:50倍以外もある。

幅広い分野で活躍する発泡スチロール
断熱性、耐水性、緩衝性を生かし、鮮魚や農産物の輸送容器として活用。高い保温・保冷性により食品の鮮度を保持できる。軽量のため運搬の負担も少なく、強度があるため積み上げても潰れにくい。
流動性と緩衝性を生かしたビーズクッション。原料であるビーズを発泡させ、成形せずにそのまま縫製した側地に詰めている。空気を多く含むため適度なクッション性が生まれる。
建材は、断熱性、耐久性、軽量性が大きな力を発揮する分野。長期にわたり断熱性能が劣化しないため、海外における発泡スチロールの主要な用途で、国内でもさらなる伸びが期待される。
軽量性、自立性、耐水性、強度の高さを生かした利用法。軟弱地盤での盛り土、道路幅の拡張、崖などの崩壊を防ぐ構造物の裏込めなど使用例が拡大。加工性が高く、軽量で運搬しやすいのも利点。

グローバルな連携で環境問題にも対応

──地球温暖化や海洋プラスチック問題への対応について聞かせてください。

【青井】発泡スチロールのサプライチェーンは世界に拡大しており、温暖化対策や再利用の促進も、国内だけの取り組みでは難しくなっています。そこで1995年にAMEPS(アジアEPS生産者機構)を、さらに98年には欧米の組織と共にINEPSA(世界EPS同盟)を設立。私たち発泡スチロール協会は、中心メンバーとして情報交換や再利用率の向上を推進しています。

一方、海洋プラスチックごみ問題では、政府の「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」により設立された水産庁、環境省の2組織の委員として活動し、発泡スチロール製フロート(浮き)の有効再生処理の実例などを紹介しました。フロートについては、割れ欠け流出予防となる樹脂コーティングを進め、使用済み品の固形燃料化処理も実施しています。

──環境面の課題解決も重要なテーマとしているわけですね。最後に、今後の抱負を聞かせてください。

【片岡】発泡スチロールは、多様な特性を生かす形でこれまでその用途を広げてきました。社会のあり方やニーズが変化する中にあって、今後もその可能性は無限。実際、ユーザー企業からは、「こんな用途に使えないか」という要望を日々いただいています。技術開発にいっそう力を入れ、その声に一つ一つ応えていきたいと考えています。

【青井】より省資源で、リサイクルしやすく、有益な特性を持つ発泡スチロールを生み出していく──。そのための研究や開発はまさに業界の責任です。産官学との共同研究などもさらに進めながら、使用済み製品の100%有効活用を目指していきたい。同時に、今日お話ししたような正確な情報の発信にも力を注ぎ、協会としてその価値や有効性を周知する努力も重ねていきたいと思います。