コロナ禍で最も変わったことは何か? そう聞かれて、「健康への意識」と答える人は多いだろう。今後もインフルエンザと新型コロナの同時流行などが懸念され、いっそうの注意と対策が求められる。そうした中、改めて存在感を高めているのが味の素グループだ。キーワードは「アミノ酸」である。

100年以上にわたりアミノ酸研究に注力

3密の防止やソーシャルディスタンスの保持をはじめとする「新しい生活様式」。その実践は感染症の拡大防止にあたって大事なものに違いない。しかし社会活動を継続する以上、それで完全に感染リスクを排除するのは難しい。そこで多くの人が関心を寄せているのが“免疫力”だ。身体の防御機能を高めることでウイルスに対抗しようというわけである。

免疫力の維持には、適切な栄養の摂取と休養の確保、そして適度な運動が欠かせない。まさにこれら3つをアミノ酸によって支えているのが味の素グループだ。グループCEOの西井孝明社長は言う。「例えば、鶏肉や大豆に含まれるシスチンや緑茶のうま味成分であるテアニンといったアミノ酸は、免疫力を高める働きがあることがわかっています。また、質の良い睡眠をサポートするアミノ酸や運動による筋肉のダメージを抑えるアミノ酸の存在も明らかになっている。そうした事実を多くの人に伝えることは、100年以上にわたりこの分野の先端研究に力を注いでいる私たちの役割です。そこで今回、キャンペーンメッセージとして『食べる、眠る、運動する―健康を育む、アミノ酸のはたらき』を掲げ、CMの制作なども行いました」

企業メッセージ広告では、食べること、眠ること、運動することの大切さをストレートに伝えている。

自身の免疫力を向上させることは、「プレハビリテーション」の考え方にもつながる。プレハビリテーションとは、もともと外科手術の前に術後の回復促進を目的として行う準備のこと。現在のように健康リスクが高い状況では、食べる・眠る・運動するという
基本的なことを大切にして自身の免疫力を維持・向上するということが重要です。

では具体的に、味の素グループはどのような形で私たちの健康や免疫力を支えているのか――。まず「栄養」について、同社グループでは「おいしい減塩」「たんぱく質摂取促進」など栄養戦略における重点取組項目を設けたうえで、事業を展開している。各種調味料やメニュー用調味料の開発、販売はもちろんその中心だ。例えば「Cook Do®」を使えば、家庭で手軽にタンパク質と野菜を摂ることができる。1978年の発売以来、40年以上日々の食卓の栄養バランスに貢献しているのだ。

一方、味の素グループは世界の子どもたちの栄養課題の解決にも取り組んでいる。ベトナムで2012年に開始した「学校給食プロジェクト」はその代表例。日本の優れた給食システムを現地で普及させるべく、メニューブックや食育教材の提供、給食運営と衛生管理を総合的に向上させるためのモデルキッチンの設置などを行い、2022年度末までに約143万人の小学生に栄養バランスのよい給食を提供することを目指している。

ベトナムでは、教育訓練省や保健省等の中央行政とともに、全土に栄養バランスの良い学校給食が普及することを目指して活動を続けている。右の写真は、現地で設置したモデルキッチン。

「さらに世界的な栄養課題としては“減塩”や“高齢者の低栄養の改善”も当社が追求しているテーマ」と西井社長は言う。高血圧の改善に重要な減塩については、関連商品を提供するとともに、うま味を用いたおいしい減塩を公衆衛生の視点から証明する共同研究を英国キングス・カレッジと実施している。また高齢者の栄養に関する分野では、筋たんぱく質の合成にロイシンというアミノ酸が大事な役割を果たすことなどを解明済みだ。「現在、世界で高血圧の問題を抱える人は約16億人、高齢期に低栄養になっている人は約1億5000万人ともいわれます。これらの課題の解決に尽力することは、“2030年までに10億人の健康寿命を延伸する”ことを目標とする私たちにとって一つの責務だと考えています」

睡眠や運動の分野でも多様な知見を持つ

そして味の素グループは、意外に思うかもしれないが「休養」についても独自の知見を有している。特に睡眠については長年研究を続け、グリシンというアミノ酸が睡眠の質に関係する深睡眠をサポートすることを発見。サプリメントとして商品化し、すでに15年にわたり多くの愛用者を獲得している。「実はグリシンの睡眠改善効果は偶然発見されたもの」と西井社長。「ある研究者が別の目的で飲んでいたところ、いびきが減っていることに家族が気づき、そこから本格的に睡眠と結び付けて研究するようになったのです」。アミノ酸には、未知の機能が潜んでいる。そのことを示すエピソードだろう。

世界最先端のアミノ酸研究から生まれた、食品に含まれ、体内でもつくられるアミノ酸による睡眠改善効果は、まさに今、注目に値するソリューションと言える。

免疫力を支えるもう一つの要素「運動」については、アミノ酸をはじめとしたスポーツ栄養科学の分野で多くの研究成果がある。また、多くのトップアスリートを支えているのも味の素グループの特徴だ。2009年に国立施設として日本初の命名権を獲得した「味の素ナショナルトレーニングセンター」は、日本のトップレベルの競技者用トレーニング施設。同社は、この施設での選手との共同研究によりスポーツ栄養科学の研究を進化させてきた。各種アミノ酸の最適な配合、その消化吸収についてなど、科学的な知見を見いだし、アスリートに向けた栄養サポートや商品開発を行ってきたのだ。もちろんその成果は、一般生活者向けの商品や手軽に栄養バランスを摂れる食情報、レシピ・献立の提案にも存分に生かされている。

明確な目標を原動力に、明日のよりよい生活に貢献

“コロナ禍に際して、味の素グループとして自らの役割をどう認識したか”という問いに西井社長は次のように答える。「商品をつくり、お客様に届ける。普段当たり前だと思っていた活動が、決して当たり前ではないことに気づかされたのが今回の事態。ただし、そうした中でも健康のために非常に重要な食品、またアミノ酸の供給を止めるわけにはいかない。私たちの事業も、人々の日常生活に欠かせないエッセンシャルワークの一つであることを再認識しました」

西井孝明(にしい・たかあき)
代表取締役 取締役社長
最高経営責任者
1959年生まれ。82年味の素株式会社入社。営業やマーケティング、人事などを担当し、2004年に味の素冷凍食品の取締役に就任。その後、味の素社の人事部長、取締役常務執行役員などを務め、15年より現職。

事実、コロナ禍において、「手料理の回数が増えた」「栄養を意識した食事をする回数が増えた」という人は、それぞれ50%、30%ほどに上ったという(ヴァズ株式会社調べ)。多くの人が食や栄養の大切さをあらためて実感したわけだ。それを商品やサービスによってサポートをすることが味の素グループの役割にほかならない。

「まさに当社グループのミッションは、『私たちは地球的な視野にたち、“食”と“健康”、そして、明日のよりよい生活に貢献します』というものです。また、申し上げたとおり2030年までに10億人の健康寿命を延伸することも掲げている。こうした目標こそが、研究活動や商品開発をはじめとするあらゆる事業活動の原動力となっています。私たちはよく“腹落ちする”という表現を使いますが、一人一人が目標を自分のものとして、チームでそれに向かっていくのが味の素グループの企業文化。今後も世界No.1のアミノ酸メーカーとして使命をしっかりと果たしていきたい」と西井社長は力を込める。

食べる、眠る、運動する――。大事なこととは理解しながら、日々の忙しさを理由におろそかにしがちなこれらを継続するには、やはり後押ししてくれる存在が必要だ。そうした中、生命の源ともいえるアミノ酸を基軸に私たちの暮らし、そして健康を支えてきた味の素グループは、頼りになるパートナーといえそうである。