既存住宅の断熱性能は先進国のなかでも最低水準
健康のために日々の食事や運動に気を使っている人は少なくない。しかし、住環境は案外見過ごしがちだ。例えば、夏暑く冬寒い室内の気温や、段差の大きい階段などを「少し我慢すればいい」と考えてやり過ごしている人は多いのではないか。こうした小さな暮らしのストレスは、将来、思いがけない事故や病気につながる可能性がある。
その一つが断熱性能だ。日本の既存住宅には断熱性能のほとんどない床や壁、熱を伝えやすいアルミ枠などの窓が残っており、その断熱性能は先進国では最低レベルと言われている。無断熱、あるいは断熱性能の低い家では夏の猛烈な暑さや冬の寒さがダイレクトに室内に伝わり、体に悪影響を及ぼすリスクがある。
国土交通省の調査の中間報告によると、明らかになりつつある知見として、室温が下がるほど起床時に高血圧になりやすい傾向がみられるほか、断熱改修をすると夜間にトイレに行く回数が優位に減少するなどの研究の経過が報告されている。
人体への影響だけではない。家の内外での温度差が大きいと結露が生じ、住まいの躯体そのものを傷める可能性もある。断熱改修によって結露などを改善することは、建物の維持にも貢献する。
課題は早めに改善し健康で長生きできる家に
これからリフォームを進めるなら、国の「次世代住宅ポイント制度」を活用するのが得策だ。2019年10月の消費税引き上げの緩和策として始まった支援で、一定の性能を持った新築住宅の購入やリフォームに対してポイントが付与される仕組み。ポイントはさまざまな商品への交換に活用できる。適用には条件があるため事前に施工会社などに確認しておこう。
トラブルが起きない限り、リフォームはおっくうになりがち。しかし80歳、90歳までわが家で暮らし続けることを考えれば、早いうちに手を入れておいたほうが投資対効果は高い。退職して余暇の割合が増えれば、自宅で過ごす時間はさらに増えていく。早いうちに住まいの健康対策をしていくことが、健康長寿につながっていく。