“仕組み化”でお金の流れをシンプルにしている
所得が高くても、無意識の出費がかさんで、「資産運用の原資もつくれない」といった人は少なくありません。お金と上手に付き合う第一歩として、収支の動きを把握しやすくする仕組みづくりは欠かせないでしょう。
例えば「使う」と「貯める」を一つの口座で管理するのは難しいので、口座を目的別に「使う」「貯める」「増やす」の三つに分ける。そして、「使う口座」には給料日に1カ月分の生活資金、例えば30万円を入れ、予備の0.5カ月分と合わせて45万円程度があるようにしておきます。もし次の給料日前に残高が15万円を切っていたらお金の使いすぎ。口座の残高がセンサーの働きをしてくれます。逆に残高に余裕があれば、それを「貯める口座」に移動。さらに一定額が貯まったら「増やす口座」に移して運用資金にします。
こうした“仕組み化”を行うことで、お金の流れを把握しながら上手に「使う」「貯める」「増やす」を実践できるようになります。
消費、浪費、投資。支出の割合をきちんと把握している
支出を「消費」「浪費」「投資」に分けて把握するのも、資産管理の基本です。「消費」とは食費、住居費、学費など。「浪費」は生活に必ずしも必要のない嗜好品や娯楽のための出費。「投資」とは資産運用の資金や自己投資に使うお金で、後にリターンが期待できるもの。貯蓄も含みます。
これまで多くの方の家計の再生をサポートしてきた経験から、理想的な支出の割合は、およそ消費70%、浪費5%、投資25%です。まずはご自身の家計の割合を計算してみてください。
加えて一つアドバイスをするなら、ある程度は「浪費」も必要。あまり切り詰めてばかりだと、どこかで資産管理が破綻してしまいます。無意識に無駄遣いをするのではなく、“意識的な浪費”を心がけましょう。
リスクとの適切な付き合い方を知っている
超低金利が続き、インフレへの動きも強まる中、“キャッシュ イズ キング”とは言えない状況になっています。近年、資産運用に関わる優遇税制なども登場していますが、これは「将来に向けて、それぞれで自助努力をしてください」という国からのメッセージだととらえるべきでしょう。
「リスクが怖い」という声もよく聞きますが、リスクとは本来「危険性」ではなく「不確実性」、つまりリターンのブレ幅のことです。預貯金にもインフレによる目減りというリスクがあります。
年齢、家族構成、現在持っている資産の額や種類などによって、リスクとの向き合い方は変わってきます。短期間で資産を形成するにはある程度高いリスクを取る必要がある。不動産を所有していれば、長期的な視点でリスクとリターンのバランスを見極めることが求められるでしょう。
いずれにしても、リスクがないところに、基本リターンはありません。自身の置かれた状況から客観的にリスクの許容度を判断することが重要です。
あらゆる情報を“自分だったら”という視点で受け止めている
資産運用を成功させるうえで、「学び」は不可欠です。ただし、メディアなどから得た知識を鵜呑みにしてはいけません。賢く資産運用をしている人は、あらゆる情報を“自分だったらどうか”と自分基準に変換して受け止めています。基本方針がないまま他人の成功事例を真似しても、資産運用ジプシーになってしまい、成功はおぼつかないでしょう。
資産運用は金融機関や不動産会社などの事業者を通して行うことがほとんどのはずです。事業者を選ぶ際、その担当者が自分の“学びのパートナー”になってくれるかどうか、ぜひ見極めてほしいと思います。わからないことがあれば何でも質問でき、相手の答えが自分の知識やスキルの向上につながっていく。そうした関係性をつくることができれば理想的です。
家族で定期的にマネー会議を開いている
お金と生活とは密接につながっていて、生活が乱れればお金の使い方も乱れてくる――。これは、多くの家計を見てきての実感です。
そうした乱れを正し、お金に関して家族全員のベクトルを合わせるのに役立つのが、家族でのマネー会議です。
わが家では毎月マネー会議を開き、月々の収入の説明、支出の振り返りなどを行っています。さらに、それぞれが買いたいものについてプレゼンテーションもする。子供にも「“want”ではなく“need”でないと買わないよ」と伝えています。
そうしたベクトル合わせをしながら、同時に「モノはお金が形を変えたもの」という意識を持つように心がけましょう。身の回りのものも、資産運用の対象も、お金に置き換えて管理していくのです。これができるようになると、必要なもの、不要なものの判断がしやすくなります。
繰り返しになりますが、お金と生活は切り離せないもの。家族や夫婦で一緒にお金について考えるのはとても有効です。将来の目標や進むべき道筋を共有することで無駄がなくなり、効率的な資産形成を実現することができます。