物流施設、医療・介護施設、ホテルなど多彩に活用

下西佳典(しもにし・けいすけ)
大和ハウス工業株式会社
取締役常務執行役員
流通店舗事業担当

1981年大和ハウス工業入社。和歌山流通店舗営業所 所長、福岡流通店舗営業所 所長、名古屋支社 流通店舗事業部 事業部長などを経て、2017年常務執行役員 流通店舗事業推進部長(東日本担当)。18年6月より現職。

さまざまな資産の中でも「土地」が持つ大きな利点の一つは、継続的に収益を生み出し得ることである。一方で、所有していれば支出も避けられない。大和ハウス工業(株)取締役常務執行役員の下西佳典氏は次のように話す。

「土地には税金が付きもの。固定資産税や都市計画税がかかり、いずれは相続税も加わります。まずは税金に見合う分、土地を活用する。これがすべての土地オーナー様の基本課題です」

ただしここで重要なのは、土地は個別性が高い資産であるということ。それぞれの価値を最大限引き出す活用法の見極めがポイントとなる。

まさにその観点から、長年にわたり全国の土地オーナーたちをサポートしているのが大和ハウス工業だ。賃貸住宅を建てるのはもちろん主要な活用法だが、それだけに限らない。下西氏が統括する流通店舗事業では、主に住宅用途以外の建物を扱っている。

「1977年、飲食店・服飾店チェーンなどのロードサイド店舗を運営する企業の出店ニーズを受け、土地オーナー様に『建て貸し』をご提案したことに始まる事業です。以来40年余り、社会情勢は変化し、対応する業種も広がりを見せています。さらに、専ら店舗だったニーズも多様化し、現在流通店舗事業において店舗そのものが占める割合は全体の3分の1程度です(2017年度売上高ベース)」

流通店舗事業の業績は事業開始以来、着実に伸長。特に2010年度以降は右肩上がりである。では具体的に、店舗以外にはどういった用途の建物があるのだろうか。

「産業用事務所・物流施設、医療・介護施設、店舗付き賃貸住宅などがあります。またインバウンド効果も追い風となってホテル需要もかなり増え、それぞれ11~12%の比率となっています」

選択肢が多様だから、土地の特性に合った活用を実現できる

 
 

ロードサイドでよく目にする店舗のほか、ホテル、医療・介護施設、店舗付き賃貸住宅、複合商業施設など、大和ハウス工業ではさまざまな物件を手がけている。豊富な施工実績の中で技術力も養っており、建物の質の高さでも定評を得ている。

 

約4000社に上るテナント企業と関係を構築

土地オーナーをサポートし、最適なテナント選びを実現するのが、大和ハウス工業の「LOC(ロック)システム」である。同社が築いてきた膨大な数の土地オーナーおよび約4000社に上るテナント企業とのネットワークを基盤に、土地オーナーと出店(立地)を考える企業のマッチングを推し進める。

「当社の強みは、表面的な情報だけによるマッチングは行わないこと。今の時代、加工された情報は大量にありますが、そこからはなかなか具体的な活用、立地のイメージが立ち上がってきません。土地オーナー様ともテナント企業様とも直接会い、じっくりお話しすることで真のニーズを理解し、最適なパートナーをご紹介しています」

両者のニーズにより、マッチング後の契約形態は大別して二通りだ。一つ目は土地オーナーが建物を建設して賃貸する「建物賃貸借方式」。建設に際してテナント企業側から協力金を得られるケースもある。二つ目は土地オーナーが土地だけ賃貸する「事業用定期借地方式」。建物はテナント企業が建設し、あらかじめ定めた契約期間が満了すると、土地はオーナーへ返される。

「1992年に借地借家法で定期借地権が設定されてから、土地オーナー様の土地活用に対する意識も大きく変わりました。特に先祖代々の土地を大切になさる方々にとって、貸した土地が必ず戻ってくるという安心感があるため、土地活用への積極性もアップしたのです。それに伴って、当社も流通店舗事業の拡充を図ってきました」

現在では全国で約720名の営業担当者が「LOCシステム」を支えている。この全国規模の拠点網も見逃せない同社の優位性だ。テナント企業によっては、全国展開を視野に入れているところもあるだろう。“大和ハウスに相談すれば、地方でも適した土地を提案してもらえる”となれば、当然関係性は深まる。そうしてテナント企業の情報が大和ハウス工業に集まることは、土地オーナーにとってもプラスになるわけだ。

土地オーナーとテナント企業をつなぐ「LOC(ロック)システム」 土地活用を考えている土地オーナーと新たなビジネス拠点を確保したいテナント企業をマッチング。これまでに取引実績のあるテナント企業は4000社を超えており、活用の幅は非常に広い。LOCは、「Land Owner and Company」の略。

大和ハウス工業が持つもう一つの強みは、各地の「大和ハウス流通店舗オーナー会」である。土地オーナーたちの情報交換の場となったり、専門家を招いて研修会や相談会を開いたり、約6700名の会員にとって実務的な経営知識を磨く場であり、心強い仲間同士の集まりでもある。

「過去40年の間に代替わりされた土地オーナー様も少なくありません。私どもの営業担当者も替わります。そこで変わらぬ仕組みとして設けているのがオーナー会です。皆様と当社の信頼関係を維持していくうえでも、意義ある場だと考えています」

そして下西氏が「さらに、もう一つ」と加えるのは、すでに所有する土地は有効活用しているが、さらなる資産運用や組み替え、相続対策を希望するオーナーへの対応である。大和ハウス工業が土地オーナーの希望により、所有地を買い取ったり、新たにテナントが誘致された事業用の土地・建物の売買物件を紹介するなどの提案も行うのだ。既存オーナーに限らず、現預金などで不動産運用を考える人々も対象とする。

土地は何代も受け継がれる資産。それだけに、唯一無二の土地も活用法が移り変わるのは当然だ。

「近年になってホテルもそうですし、介護施設や保育施設に対し社会からの要請が高まっています。土地オーナー様の間でも、収益だけでなく社会的使命を重視する方々が増えています。私たちも、今の時代を走りながら次の時代を見通し、皆様のご期待に応えていきます。もちろん建物づくりも当社の本業。その企画・設計から契約、メンテナンスや契約満了後の後継テナントあっせんまで、一気通貫で土地オーナー様に貢献していきます」