「働き方改革」が叫ばれているが、現在、病気を治療しながら仕事をしている人が労働人口の3人に1人いるという。中でもがん患者のうち3割以上が退職や解雇により仕事が続けられないという調査もある。病気治療と仕事を両立しやすくなれば、本人の経済的自立を支えるだけでなく、会社にとっても働き手を失わないですむ。治療を受けながら安心して働ける職場に必要な条件とは――。

3人に1人が病気を治療しながら仕事をしている

「病気を抱えながら働くことを考えるD&Iフォーラム」が都内で開催された。

現在、国内には病気を治療しながら仕事をしている人が労働人口の3人に1人と多数を占めており、病気を理由に仕事を辞めざるを得ない人たちがいる。働き方改革の一環として、病気の治療と仕事を両立できる環境を整備する動きが広がっている。しかし、課題は少なくない。

ジョンソン・エンド・ジョンソングループの医薬品部門である日本法人のヤンセンファーマは5月12日、「病気を抱えながら働くことを考えるD&Iフォーラム」を都内で開催した。テーマは、潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患(IBD)を抱えながら働く社員の就労と治療との両立。

前半のセッションでは、聖マリアンナ医科大学病院・メディカルサポートセンターのソーシャルワーカー・桑島規夫氏が、患者が安心して働ける職場作りには医療機関と企業との情報共有、連携が必要であることを提言した。

後半のセッションでは、北里大学北里研究所病院・炎症性腸疾患先進治療センターの副センター長・小林拓医師と、患者である社員2人が登場した。特に病気であることを会社に伝えるか否か、その場合の問題や課題などを自らの体験などを交え、報告した。

2人の社員は職場環境に比較的恵まれ、周囲の社員には一定の理解を得ることができているようだった。一方で、会社に病状を伝えることをためらう社員がいることも、意識調査の結果として報告された。病気を抱えながら働くことを考えるうえでの1つの壁が、会社に病気であることを伝えるか否かであることが浮き彫りになった。

社員が会社を信じることができる「仕組み」づくり

ここからは、がんになりながら働く社員を支援する企業を紹介したい。

厚生労働省によると、がんを治療しながら就労する人は約32万人いるという。がん患者のうちで、診断後に仕事を辞めた人は会社員の34%、自営業者のうち廃業した人は13%になる。