上手に活用してこそ節税や収益確保が可能

土地は、生かしてこそ価値を生む。いまや持っていれば値上がりし、利益を得られる土地は非常に限られている。所有している土地には、当然ながら毎年税金がかかり、今年に入っても政府が空き店舗の立つ土地への課税強化を検討していることが話題になった。

一方で土地は、賃貸経営など上手に活用することで固定資産税や相続税を節約できる。住宅用地は、更地と比べて課税評価額が大きく引き下げられることはよく知られているとおりだ。

そうした中、土地活用に関わる専門家らは、“経営者としての目線を持つことが大事”と口をそろえる。アパートやマンションなど賃貸住宅のオーナーといえば「大家さん」という呼び名が思い浮かぶ。しかしながら、「大家と言えば親も同然……」とはなかなかいかないのが今の時代だ。賃貸住宅管理会社への調査(※)によれば、入居時に賃料や敷金・礼金、設備について、当たり前に交渉が行われている。オーナーと入居者の立場は、基本的に対等なのである。

賃料に関する交渉は全体の6割超で行われている。設備設置についても、4人に1人の割合で交渉がある。

どんな経営でも共通して大切なのは、“顧客を知ること”に違いない。では賃貸住宅の市場において、入居先を探している人たちはどんなことを求めているのだろうか。

物件そのものについていえば、例えば間取りへのこだわりは強い。一人暮らしでも寝食を分離したい、趣味やくつろぎのスペースをつくりたい、という人が増えている。またファミリー層であれば、生活動線や家事の効率性を重視する傾向がいっそう強まっている。いずれにしても、自身や家族の生活スタイルにマッチしているかが吟味されることになる。また、賃貸住宅におけるトラブルで代表的なものとして騒音がある。こうした点へ配慮することも物件づくりでは欠かせないだろう。

一般ファミリーで60%以上、単身者(学生除く)でも20%以上が同じ住まいに4年以上入居する中(※)、入居者に「住み続けたい」と思わせる要素をどれだけ持っているかが賃貸経営の成否を左右するといっていい。

自身のアイデアや感性を生かすことができる

所有する土地の場所や地域の環境を変えることはできないが、自身のアイデアや感性を建物のデザイン、設備仕様などに反映させられるのが土地活用、賃貸経営の大きな魅力だ。仮に同じ敷地面積でも、空間の使い方しだいで選ばれる物件にも、そうでない物件にもなるというわけである。

経営的なセンスを発揮できる機会は建物をつくるときに限らない。最近は、更新時、入居者に独自の特典を提供するオーナーなども見られるようになってきた。ちょっとした気遣いや心配りが長期入居者の確保につながるからだ。

オーナーをサポートする不動産会社やハウスメーカーの商品、サービスも進化、充実する中で、いかに住む人の心をつかむか──。創意工夫で、結果に大きな差が付く土地活用はやりがいのある事業といえるだろう。

(※)公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 日管協総合研究所「賃貸住宅市場景況感調査」(2017年6月)より