英語の語順には明確なルールがある

では語順をマスターするにはどうすべきか。実は、語順のルールは単純なのだ。

「例えば、『父はあの背の高い男です』を英語にするとMy dad is the tall guy.ですが、このtheもtallもguyを指定する言葉として前に来る。

Unfortunately(残念ながら)とか、It looks like(~しそうだ)などの前提や予告も、後に来る文章の前に置かれる。さらには、fully(十分に)、really(本当に)、maybe(もしかすると)、never(絶対に)なども、文全体のレベルを伝える場合にはその動詞の前や文頭に置かれる。このように、前に置かれる単語や語句は、後の単語や文章を指定しているのです。このルールは極めてシンプルで、美しいと思います」

前に置かれた単語や語句によって指定された単語や文に、さらに説明が必要なときはどうするのか。この場合、さらなる説明はすべて、指定された単語や文の後に連なる。これもまた、英語の語順の確固たるルールだ。

「先の例のguyが赤いジャケットを着ていると説明を加える場合は、the tall guy in a red  jacket.となる。ある語句を説明するためにthatを用いた同格節を用いたり、関係代名詞を使ったり、あるいは現在分詞やto不定詞で説明するなど方法は自由です。ただし、説明は必ず後に連なるというルールは同じです。さらに言うと、こうした語順をマスターするためには、英語に触れるときに、後ろから訳するのではなく、語順どおりに理解することが大事です」

すなわちMy dad is the tall guy in a red jacket.なら、「父はあの背の高い人、赤いジャケットを着た」の順で考え、理解すべきということだ。

「『ピンチのときに助けてもらえるか、彼女に聞いてくれ』を英語にするときは、Ask herという動詞句を思い浮かべ、後からそれを修飾するif she can help us in a pinch.をつなげる。ここでは動詞句が主食、if節がおかずと考える。おかずは常に後ろにつながるわけですが、この語順どおりに意識を動かす訓練が必要です。日本語から英語へ、英語から日本語へ訳すことをやめ、英語の語順で考える訓練をしましょう。使いこなせない表現があったらメモをとり、語順を頭に叩きこむ。語順や文法を忘れるくらいにそれを徹底すれば、ビジネスパーソンの皆さんなら、英語を話せるはずです」

語順のルールはシンプルそのもの。とにかく慣れ親しんで自分のものにしたい。

(大竹 聡=取材、文 中林 香=撮影)