地方創生の実現には、地域内外からの企業の進出も大きく貢献する。そうしたなか、いま企業は新たな拠点の設置について、どう考えているのか。一方で、企業も地域も直面せざるを得ないのが、産業構造や人々の暮らしにさまざまな変革をもたらすであろう「第4次産業革命」と呼ばれる大きなうねりだ。新たな変化の只中にある日本。企業も地域も、ともにギアチェンジが求められている。

企業の地方立地促進へ国も新たな減税策を実施

地方創生への大前提は、地元からの人口流出を止め、少子高齢化による人口の自然減も防ぐことである。そのために多くの地方自治体は、地元での雇用創出を重点的な目標とし、地域内の資源を生かしながら、地域外からの企業誘致にも努めている。

これについては国も支援に一段と力を入れており、2015年度に「地方拠点強化税制」を新設。東京23区内の本社機能を地方(おおむね三大都市圏以外)へ移転する企業や、すでに地方にある本社機能を拡充する企業などに対し減税措置をとっている。地方での雇用も減税の対象だ。また2016年度には、いっそう手厚い制度へと変更が加えられた。

本社機能とは、必ずしも本社の全機能ではない。重要な役割をもつ事務所・研究所・研修所の地方移転や地方での拡充が、適用条件だ。研究所だけとか、本社内の情報処理部門だけでも制度は適用される。ただし、工場や店舗などは制度の対象外だ。

工場に対しては、企業立地促進法があり、企業は優遇税制をはじめ、最大8つの支援措置を受けられる。

では、企業側の意識はどうなのか。経済産業省が今年1月、「企業の地方拠点強化に関するニーズ調査」を実施した。全国・全業種の従業員50名以上の企業が対象で、有効回答は7586社。回答企業の業種は、製造業が1925社、卸売業・小売業が1274社と顕著に多かった。

全業種の1349社が地方拠点強化の計画あり

同調査の結果、「地方に新規拠点の立地計画がある」のは1349社。有効回答の17.8%だった。

計画の内訳は、地方への「移転」という回答が最多で495件(36.7%)。仮に東京都心にある本社を丸ごと地方へ移す計画なら、これに含まれる。他の計画は、地方拠点の「新設」と「増設」があわせて736件(54.6%)、「未定」が62件(4.6%)だった。

また、計画している施設は、上の図1のとおり「オフィス(本社等)」がトップだった。

近年、IT企業のサテライトオフィスの誘致で実績を上げている地方自治体が全国に複数見られる。企業側も賃料や人件費などの固定費を抑えつつ、ビジネスのパフォーマンスでは大都市のオフィスと同じか、上回る水準を維持できているようだ。

「オフィス(本社等)」に次ぐ2位は「業務用施設(営業所、店舗等)」。3位は「工場」の22.8%で、実数は307件だ。

立地計画の理由や背景について多かった回答は、図2のとおり「需要増に対応」「手狭感の解消」「老朽化」で、どれも30%を超えた。