Jトラスト(東証二部上場/証券コード 8508)は、国内外で金融サービス事業を中心に展開する持ち株会社。韓国とインドネシアで銀行経営も手がけ、いまや金融資産の額は海外のほうが国内を上回る。そのJトラストが現在、積極的にIR活動を推進し、投資家から高い評価を得ている。そこには、どんな思いや狙いがあるのか。同社代表取締役専務でIR担当の千葉信育氏に聞いた。
 
千葉信育(ちば・のぶいく)
Jトラスト株式会社
代表取締役専務 執行役員
韓国金融事業担当 兼
広報・IR部門担当
1973年、北海道生まれ。2008年より取締役副社長、09年よりステーションファイナンス(現・日本保証)代表取締役社長、12年より韓国のJT親愛貯蓄銀行理事(現任)などを歴任し、Jトラストグループ各社の経営に携わる。
 

業績にかかわらず真の姿を伝える

──まず、IR活動を強化している背景を聞かせてください。

【千葉】Jトラストにとって、IRとは“Integrity Relations”でもあります。つまり、大切なのは“誠実さ”。たとえ決算の数字がよくなかったとしても、そうしたときほど投資家の皆様にきちんと説明したいと考えました。

例えば、2015年度の決算では当期純損失が出ており、PBRの低下も招きました。これは、海外での銀行業進出による不良債権処理などの影響です。08年に現社長の藤澤信義がTOBで当社の筆頭株主となって以来、初めての純損失でした。

当社はアジア諸国の破綻した銀行を買収し、再生して地域密着型の経営を続けています。時々「再生して売却するPEファンドなのか?」と尋ねられますが、そうではありません。当社の真の姿をお伝えするためにもIRを強化しているのです。

──貴社の基本戦略である「徹底的な逆張り」にも説明がいりそうです。

【千葉】はい。一言でいうと、当社は挑戦する企業。例えば12年の韓国貯蓄銀行進出時も、よく「日本企業の成功は難しいのでは?」といわれました。しかし当社の韓国事業は伸びています。

確かに当社の発想は大勢の逆かもしれない。でもリスクをしっかり把握し、それを取り込み、自らの筋肉に変えているのです。もちろん、逆張りで当社だけが成功したいのではなく、お客様方が本当に喜んでくださる金融サービスを提供したい。こういう考え方にも投資家の皆様のご理解、ご支持をいただけたらうれしく思います。

海外投資家にも迅速に分かりやすく情報開示

──IR活動で心がけていることや、特徴的な取り組みはありますか。

【千葉】いまはIR担当を務めている私も、もとはグループ会社でCOO(最高執行責任者)の立場から事業に携わってきました。現場を熟知する人間として、真実をお伝えしたい。タイムリーに、分かりやすくお伝えすることも重視しています。

例えば決算情報は、証券取引所のルールに基づく短信だけでは不十分でしょう。決算説明資料、さらには補足説明資料も作成し、可能な限りの情報をご提供しています。

また決算説明会の開催は、年2回だったのを四半期ごと計4回に増やしました。その動画も配信し、英語のナレーションや字幕を付けています。

──海外の投資家も重視した手段をとっているわけですね。

【千葉】この3年、当社の株主様は約3割が外国の方々です。そこで決算情報の資料も和文・英文を両方つくるようにしました。日ごろのニュースリリースを含め、開示時刻はできる限り16時(日本時間)と決め、和英同時開示も徹底しています。

──15年度は海外でロードショーも実施したとのことですが。

【千葉】はい、英国、北米、アジアの各地へ。3カ月で地球を1周半した計算です。国内外とも投資家の方々というのは、ご自身が直接経営なさるわけでない企業に資金を提供してくださいます。これは非常に勇気がいること。だからこそコミュニケーションと信頼の醸成が大切だと再認識しました。

国内投資家の皆様との面談回数も過去1年余りで4~5倍に増えたのですが、海外での出会いはいっそう新鮮に感じましたし、国内外でこれほどの皆様のバックアップがあれば素晴らしいビジネスができると思いました。ぜひWIN─WINの関係を確立するとともに、世界中を元気にするビジネスをご一緒に実現したいですね。