仕事、家庭生活、お金、親子関係……、さまざまなお悩みに、100冊以上の著作を誇る作家の本田健さんと、PRESIDENT WOMAN Onlineの連載「WOMAN千夜一夜物語」でおなじみのコラムニスト河崎環さんが回答する人生相談、今回は「保育園での引き渡し」に関するご相談です。

【今回のご相談】
息子の保育園の送り迎えを、夫と分担しています。登園時の引き渡しで子供が別れをぐずると、夫は「お父さんが会社に行ってお仕事をしないと、○○くんはご飯を食べたりおもちゃを買ってもらったりすることができなくなるんだよ」とい言い聞かせますが、子供が「仕事とは、見返りのために嫌なことを我慢して行うもの」だと思いそうなのでやめてほしいです。私は「お母さんも○○くんと一緒にいたいけど、○○くんが保育園でお友達と一緒にいろいろなことに挑戦するように、お母さんも会社でお仕事を頑張りたい。一緒にお仕事をする人も待っている」と伝えています。本田さん、河崎さんはどう思われますか。
「子供をモノで釣るような言い方は嫌。働くことの本質を伝えたい」という志の高いワーキングマザーからのご相談。さて回答は?……(イラスト=伊野孝行)

親は罪悪感を持たずに、肯定的な声がけを

【河崎環さんの回答】

お母さん、100点満点の答えだと思います。人は皆、大人も子供も「やりたいこと」と「やらねばならないこと」を一生かけてバランスを取るのですよね。「やらねばならないこと」が「やりたいこと」と一致するなら、それに勝る幸せはない。「お母さんは会社でお仕事を頑張りたい」と語るお母さんの姿は、仕事とは嫌なことではなく楽しいことなのだというメッセージを真っすぐに伝えていると思います。

とはいえ、朝の保育園でパパやママと離れたくなくてぐずる息子さんに困り、説得してしまう旦那さんの気持ちも、少し分かります。「お父さんが仕事をしないと、ごはんもおもちゃも買えないんだよ」と口にする旦那さんの中には、“仕事はつらいものだアピール”というよりも「自分は息子に負担をかけているのではないか」との罪悪感があるのかもしれません。そのため、旦那さんはつい、“説得”というより“言い訳”をしてしまっているのです。人は、言い訳をするときに「◯◯しないと、◯◯できない」という否定の仮定法で正当化しようとします。

まずは、保育園の朝の別れで罪悪感を持つ必要はないのだ、今の時代、子供が保育園に通って友人を作ったり集団生活の中でいろいろなことを学んだりするのは当たり前なのだと旦那さんに理解してもらいたいところです。そして、別れのときの感情的なつらさでつい否定的な説得の言葉を口にしそうになったら、肯定文で話してあげてね、とアドバイスしてください。

「お父さんが会社で仕事をしないと、ごはんもおもちゃも買えないんだよ」ではなく、「君が保育園で先生やお友達と楽しく過ごす間、お父さんも会社でバリバリ仕事をするから、休日はおいしいごはんを食べて一緒に遊ぼうね」と声をかけてもらったお子さんは、働くことや学ぶことに、よりポジティブなイメージを持つことができると思います。

女性回答者プロフィール:河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。