世の多くの女性は不妊治療の中身についてよく知らないのではないでしょうか。ここでは、不妊治療についての全体像を詳しく説明することにします。

▼連載「ほんとうに40代出産は厳しいのか?」過去の記事はこちら→http://woman.president.jp/category/pw00057

なかなか妊娠をしない。その理由について、妊娠のメカニズムに沿って見ていきます。まず、夫婦の営みによって膣内に射精された精子は、子宮頚管へと上っていきます。その後卵管に到達し、卵巣から排卵された卵子と出合うことになります。

そうして受精した卵は、ゆっくりと卵管から今度は子宮へと移り、子宮内で定着します。これが着床です。着床したことにより、妊娠と認められます。この一連の流れのどこかに問題があるために、妊娠できないのが不妊となります。

そこで、施術を通して妊娠の確率が上がるように、不妊治療は進化してきました。ただ、その歴史はそれほど長くありません。ここに挙げた施術の多くが、30年前にはなかったものばかりなのです。まだ発展途上ということで、治療成果にも、施術に関する方針にも医師による違いが見られます。その差をよく知り、自分の症状や考え方にあった医師を選ぶ必要があるでしょう。

不妊治療のステップ

【STEP1】タイミング法

不妊治療の第一歩。排卵の時期を予測し、そのタイミングに合わせたセックスで妊娠の確率は上がる。

【STEP2】人工授精(AIH)

イラスト=Takayo Akiyama

妻の排卵日に合わせて夫の精子を採取、洗浄・濃縮し、元気のいい精子を子宮頚管を越えて卵管上部にまで注入する。

【STEP3】生殖補助医療(ART)

イラスト=Takayo Akiyama

卵子を採取し、人工的な環境で精子と卵子の出合いをつくる。以下のように、受精の方法にはさまざまな方法がある。

●3つの受精方法

・配偶子卵管内移植(GIFT)
卵子と精子を取り出し、卵管に戻す方法。受精は体の中の自然のメカニズムに任せる。
・胚移植(IVF-ET)
受精した卵を培養してから、卵管ではなく子宮に直接戻す方法。
・顕微授精(ICSI)
顕微鏡で見ながら精子を卵子の中に打ち込み、卵核に到達させることで、受精確率を上げる方法。

卵子の採取

体内には卵子になる予定の卵母細胞は万単位であり、通常の排卵周期でもその中の数十個が目を覚まします。ただし、その多くは卵子となりえず体に吸収されていきます。人 工授精の場合は、排卵誘発剤などでそれらを卵子にまで育てて採卵するため、複数の卵子を採取できます。30代中盤であれば、10個以上の卵子を採取できることも。そして人工授精を行うと、複数の卵子が受精するのでいくつかは凍結して保存します。ちなみに、凍結胚のほうが着床率は高く、妊娠に成功しています。

イラスト=Takayo Akiyama