この先、定年が延びるといわれ、40代前半で子どもを持っても、大学を卒業させるまで両親が働けそうな状況です。また、流産の問題も、着床前診断(後述)などで回避することが可能にもなりそうです。

こうした流れの中で、ほんとうに現在の、「40歳では厳しい」一辺倒な情報をどう思うか、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課の田中桜課長補佐に意見を聞いてみました。

厚生労働省 田中 桜さん

【田中】医学的見地からは、高年齢での妊娠・出産は、妊娠高血圧症候群や前置胎盤など合併症のリスクが上昇し母体への負担が大きくなり、また流産率が上昇するなど出産に至る確率も低くなることが明らかになっています。

――加齢で確率が下がるのはわかります。ただ、世界各国や日本の大正時代の出生率を見ると、40歳では相当可能性が残っていると思えるのですが。

【田中】過去や他国の事例とは単純に比較はできないと考えます。また、妊娠・出産を経験していない女性は子宮内膜症や卵巣チョコレート嚢腫などにもかかるリスクが高く、これらの疾病が原因でさらに妊娠・出産しにくくなる可能性もあります。

――それが、言われすぎではないですか。その結果、あきらめる女性、焦る女性、恋人の両親から責められる女性、と問題が多発しています。

【田中】不妊治療に至れば、経済的、身体的、精神的な負担は非常に大きく、時間がかかる場合もあります。子どもをもちたいという希望がある方は、年齢は重要な因子ではありますが、個人差もあり、可能性はゼロではないので、挑戦することをあきらめる必要はないと思います。

――でも、それは女の人ばかりの責任ではないでしょう。

【田中】不妊症の原因は男性側にある場合も少なくありません。早い段階からの普及啓発や、不妊治療に対する職場の理解、妊娠・出産・育児をサポートする体制づくりなども重要と考えます。

田中 桜
雇用均等・児童家庭局の母子保健課にて課長補佐。生殖補助医療対策準備室室長。医学博士。小児外科医として活躍後、厚生労働省に入省。