さらに野中氏は、「退職金で不動産投資を考えるのであれば、親子で協力するのも一つの方法」と言う。

例えば、遊休地に4000万円のアパートを建築する場合、父親が退職金の一部と貯蓄から2000万円を出し、残りの2000万円は子供がローンを組む。父親は、ある程度のまとまった資金はあるがローンは利用できない。子供はローンを利用できるが、まとまった資金がない。両者の強みを合わせることで有利な投資が可能になるわけだ。建築費の半額を頭金として支払えれば、当初から黒字になる可能性が高いだろう。

鷹の目とアリの足で地域の特性を掴む

そして、実際に賃貸物件を建てるにあたっては、綿密な市場調査をした上で、確実性の高い収支計画を立てることが求められる。

「そこでよくお話しするのが、“鷹の目”と“アリの足”で地域の特性を把握してくださいということです。近くに高いビルがあれば、屋上や最上階から街全体を俯瞰してみる。そして、自分の足で路地も含めて歩いてみる。そうすることで、土地の強みが見えてきます。例えば駅から少し離れていても、エリア内に大きな病院があれば、賃貸ニーズは高くなります。病院関係者は、職住近接を望む人が多いからです」

また、住宅の最も大事な役割は人命を守ること。このところ甚大な自然災害が相次いでいることから、建物の耐震性や堅牢性を重視する入居者も多い。住宅の基本性能の高さは、賃貸物件づくりにおいて、いっそう重要なポイントとなってきている。

さらに、賃貸経営は長期にわたるだけにパートナー選びも大事だ。

「施工会社や不動産会社を選ぶ際は、確かな実績があることに加え、建築後もオーナーと積極的にコミュニケーションをとっているところが安心です。言うまでもなく、賃貸経営は建ててからがスタート。何かあったときに相談できる関係性があれば、問題が起きても小さなうちに解決できる可能性が高くなります」

“建ててから”ということでは、オーナーを支えるさまざまな関連サービスも充実してきていると野中氏は言う。

「空室や家賃の滞納、住民同士のトラブルなど、賃貸経営にはリスクが存在します。そのリスクを軽減する多様なサービスが登場し、マーケットが活性化する中で質にも磨きがかかっている。これが今の状況でしょう。建物や設備・機器といったハードに加えて、ソフトの面でも物件の価値を高めていくことは、賃貸市場の競争が激しくなる中、ますます重要になるはず。自分にとってどんなサービスが有用か、しっかり精査して、上手に活用することが、安定経営への道を開くことにつながると思います」

超低金利やインフレ政策などを背景に、貯蓄から投資への流れが強まる中、自身はどんな投資対象を4番バッターに据えるのか。一度、真剣に考えてみてもよさそうだ。