菊田氏は、S氏が望む本格茶室のために、十和田石や銘木の鉄刀木(たがやさん)といった希少な素材を探して見本を見せ、イメージが伝わりやすいよう、立体的なスケッチを描いて持参した。加えて、空中庭園を思わせる坪庭やオリジナルのスチール階段、やきものが飾れるミニギャラリーなど、独自の遊び心をプランに盛り込んで提案したのだ。

S氏は「他社は私が言ったとおりの案を出してきたけれど、菊田さんは発想がユニークで、こちらの予想をいい意味で裏切ってくれた」と評価する。

青みがかった十和田石を敷いた、路地風の廊下に続く茶室。珪藻土塗りの壁、和紙畳、網代天井と、素材は本物にこだわった。

施主の要望に応え、細部まで徹底的にこだわる

S氏がこだわったのがガレージと茶室なら、S夫人のこだわりを実現したのが2階LDKだ。これまでの同社標準仕様の天井より30センチ以上高い、天井高2メートル72センチのゆったりした空間は「xevoΣ」の大きな特徴。加えて、暗くなりがちな中央部に吹き抜けとハイサイドライトを設け、伸びやかさと明るさを演出している。

2階LDK。コンパクトな空間ながら、高い天井と吹き抜けでゆとりが感じられる。キッチン袖壁のカラフルなモザイクタイルが空間を彩る。

キッチンは、窓側にコンロ、対面式カウンターにシンクを設けた2列型レイアウトで、動線が短く使いやすい。手の届く高さだけに吊り戸棚を設けるなど、行き届いた設計だ。

「S夫人は、キッチンやインテリアに関してきめ細かな意見をお持ちだったので、ご納得いただけるまで、毎日のように打ち合わせを繰り返しました。ご要望はすべて実現できたと自負しています」と菊田氏。

施主のS氏(左)と、菊田浩彰氏(右)。東西に細長く、三方を道路に接するという設計の難しい敷地だった。完成した住まいに、S氏は大満足している。

さらに東日本大震災の経験を踏まえて新たに開発された「xevoΣ」は、独自のエネルギー吸収型耐力壁「D-NΣQST(ディーネクスト)」を導入している。強い揺れを受けるとバネのようにしなり、震度7クラスの地震エネルギーも吸収する「Σ形デバイス」で、繰り返しの地震にも耐える。

S氏夫妻の安全はもちろんのこと、こよなく愛する車やバイク、焼きものも、安心して保管できる住まいが完成した。

S氏にとって、家づくりはこれで3棟目になる。終の棲家ともいえる新居にかける熱い想いに、菊田氏は見事に応えたのだ。