省エネ、省コストをはじめ、ニーズが多様化する業務用空調。切り札となる新しいハイブリッド空調と制御サービスが誕生した。

ビルの新築や既存施設の空調設備の更新を計画中ならば、注目すべき新しいソリューションが4月に東京ガスより販売開始となる。ガスヒートポンプ(GHP)と電気ヒートポンプ(EHP)のハイブリッド空調「スマートマルチ(※)」、そのクラウド制御サービス「エネシンフォ」だ。

同社都市エネルギー事業部長の児山靖氏は、開発の理由をこう語る。

児山 靖●こやま・やすし
東京ガス株式会社
都市エネルギー事業部長

「建物の使い方が多様化するなか、フロアごと、部屋ごとに、空調をコントロールしたい。そうした個別空調へのニーズがいっそう高まっていました。エネルギー価格の変動などを受け、事業者の方々のコスト削減への意識はますます強くなっています」

これらに応えるため、「スマートマルチ」では個別空調システムとして日本で初めて同一冷媒系統にGHPとEHPを組み合わせた。

「冷媒配管の共通化により、状況に応じてガスと電気を柔軟にコントロールすることが可能になりました。また室内機配置の自由度も高まり、施工費も低く抑えられます」

そして、「スマートマルチ」という“ボディ”を動かす“頭脳”として遠隔制御を担うのが「エネシンフォ」だ。「スマートマルチ」から送られる運転実績データ、建物の電力使用実績と、ガス、電気それぞれの料金の情報などをもとに、GHPとEHPが最適な比率で運転するよう遠隔から指令を送信する。

フレキシブルな制御が生み出す新たな価値


契約電力に対する余裕や、時間帯ごとの電気料金単価などを踏まえ、GHPとEHPの時刻別運転比率を自動的に遠隔制御し、徹底的な省エネ・省コストを実現する。

「あらかじめ翌日の時刻別に最適な運転比率を計算しておき、いわばガスと電気のいいとこ取りをするわけです。さらに、当日も実際の使用状況や気象データを加味して制御。例えば夏の昼間に、契約電力を超えないようにコントロールすることはもちろん、ユーザーの希望に応じ、コストよりもエネルギー消費やCO2排出量の最小化を優先する制御も可能です」

最適制御により、同規模のEHPと比べ、ランニングコストで約20%の削減を実現するという。また状況に応じてガスと電気を賢く使い分けられるとなれば、将来のガス料金、電気料金の変動にもフレキシブルに対応することができるため、心強い。

一方、現在再生可能エネルギーの普及は社会的テーマだが、実はここでも「スマートマルチ&エネシンフォ」の貢献度は高い。例えば電力需給がひっ迫した時にEHPからGHPへ切り替えることで、電力系統の安定に寄与することができるからだ。これが、出力の不安定さという再生可能エネルギーの課題の解決につながるのである。

多様な価値を持つ新たな業務用個別空調システム。その潜在的な顧客に向け、最後、児山氏は次のように言う。

「新築時だけでなく、既存のビルや施設にも設置できるのがスマートマルチ&エネシンフォの特徴です。エネルギーマネジメントのやり方しだいでコスト削減、環境負荷低減に大きな差がつく時代、ぜひ東京ガスのサービスをご活用いただきたいと思います」

※「スマートマルチ」は、東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、パナソニックの4社で共同開発。