(上)「仲間見世」1号店の「太宰府天満宮」。案内所のリニューアルに併せて、中川政七商店が併設の土産物屋の運営・商品開発・接客教育・売場演出などをサポートした。(下)太宰府の名物である梅をモチーフとしたオリジナルテキスタイルを用いた限定のポーチ。

売り上げを6倍に増やした土産物屋

「日本市プロジェクトは地元の小規模な工芸の会社と土産屋とをつないでつくる小さな循環モデルです。太宰府天満宮はそのパートナーショップ“仲間見世(なかまみせ)”の1号店。観光案内所のリニューアルに併せて中身も立て直したいとオファーをもらいました」

具体的には、中川政七商店が企画やデザインを担当した地域色あふれる土産物を地元の小規模な工芸メーカーと共に開発し、メーカーは質の良い土産物を製作する。その土産物を中川政七商店が買い上げてパートナーの土産物屋に卸し、その土地の限定感のある商品を販売してもらうという仕組みだ。売り場の演出や接客教育も行うという。

太宰府ではオリジナルテキスタイルを開発し、それを使った店限定の小物を販売。中川政七商店のヒット商品であるふきんにも、神牛や太鼓橋、ウグイス、梅が枝餅などの太宰府天満宮にまつわるモチーフをデザイン。売り場にはほかにも地元福岡県の工芸品が並ぶ。

「当初は本当にただ“売店”という風情の店だったのですが、リニューアルから2年経った現在は売り上げも6倍までアップしました」

この成功をきっかけに仲間見世は全国に拡大。昨年12月には函館空港内に5号店「函と館」をオープンしたところだ。

仲間見世は現在、全国に5店舗。2015年12月に5号店「函と館」が函館空港にオープンしたばかりだ。日本を代表する貿易港として世界に門戸を開き栄えた函館に今も残る和洋折衷の建築様式に着想を得て、内装は和と洋の「対」をキーワードに設計。一面的にはとらえきれない函館の奥深い魅力を象徴するオリジナル雑貨が並ぶ。

「土産物屋はその土地のものを売る必要があると思うのですが、現状を見ると、多くの土産物屋には地域性も特色もない同じような商品が並んでいる。それでは魅力的な店にはなり得ない。また、地域の工芸品をつくる会社にしても、家族だけでやっているような本当に小規模なところは、どこに売られるかも分からないものづくりに対応して疲弊しているわけです。そうではなく、地元のものを愛着を持ってつくることで、工芸の仕事に誇りを持ってもらいたいと考えました」

中川政七商店は疲弊した状況にある土産物屋と工芸メーカーをつなぐ役目を果たし、「地産地消の土産物屋」をつくることを目指しているという。ここに自分たちが直接出店しないのか、という問いには次のような答えが返ってきた。

「特にこういう観光地って僕らがしゃしゃり出ていくようなところではないと思うんです。参道があって昔からそういう商売をしている人たちがいますから。そこに我々が直営店を出すのではなくて、やっぱり地元の人が起点になるのが望ましい。僕らはそこにノウハウを提供するので、地元の人たちとどんどん新しいものづくりに取り組んでいただければいいと思うんですよ。それが地方が元気になることにつながると考えています。“地方が元気”というのはふわっとした概念ではなくて、そこに暮らす人や会社が元気でなければならない。中小企業の経営が良くならなければそれは達成不可能です」