20年後、30年後の暮らしに直結する現在のマネープラン。お金を取り巻く環境の変化が激しさを増す中、現役世代は何をすべきなのか──。ファイナンシャル・プランナーの永田博宣氏に聞いた。
環境や自身の変化を見極めることで、資産運用の質を高められる
永田博宣●ながた・ひろのぶ
株式会社フリーダムリンク
代表取締役
ファイナンシャル・プランナー(CFPR認定者)
不動産コンサルティングマスター
1970年生まれ。大手不動産仲介会社の営業管理職、資格専門学校講師を経て(株)フリーダムリンクを設立。不動産取引から相続対策、土地活用、賃貸管理、不動産に関する権利関係の調整まで数多くの不動産実務に携わる。
自分とどう関わるか
具体的に考える
──資産運用やマネープランを取り巻く状況が変化しているように感じます。ファイナンシャル・プランナーの目からご覧になって、一般の人たちの意識も変わってきていると思われますか。
【永田】消費税増税、相続税増税などは、やはり多くの人がお金についてあらためて考え直すきっかけになっています。資産運用に関わる業界からの情報発信も盛んになっていますから、それに応じて一般の方たちの関心度が上がっているという状況もあるでしょう。そこで大切なのは、発信された情報が“自分とどのように関わっているのか”、これを具体的にとらえることです。漠然と興味を持ったり、不安を感じたりしても、なかなかその後のアクションにつながりません。同じ情報でも、受け手によって当然その意味合いは変わってきます。
かつては資産運用というと、まさに資産家や地主さんたちの話というイメージがありましたが、現在は普通のビジネスパーソンの方たちも決して無関係ではありません。相続税にしても、来年1月からの改正で、都市部に戸建てを所有していれば、相当の確率で申告の対象になるといわれています。
──マネープランを立てるにあたり、まず「資産の棚卸しを」といわれます。
【永田】基本ですね。ただ、ここでも具体性が大事です。例えば不動産について、よく「うちには、これくらいの土地や建物がある」という言い方をしますが、こうした総体的な把握の仕方だと、いざ対策を取ろうとしたときに動きづらい。税金や資産承継を考えるとき、一つには名義の問題が重要になってきます。祖父、祖母、父、母……誰の資産がどれだけあるかによって、動き方は違ってくるのです。
しかし一方で、あまり詳細な棚卸しにこだわると、これも問題です。特に不動産の評価額の決定には複雑な部分もありますから細かく詰めていこうとすると時間がかかります。いつまでも試算が終わらずに対策に入れないというのもよくあるケースです。
リスク、手間、時間を
軽減できるサービスも
──投資や資産運用について、「自分とは関係ない」「失敗するのが怖い」という人がいますが、どう思われますか。
【永田】経験していない人にとっては、ある意味当たり前の反応だと思います。メディアなどで誰かが失敗した話を聞けば、それが印象に残ってしまいます。その一方で、若い世代に投資の動きが広がっていることも事実。背景には、投資対象や周辺サービスの充実もあると考えられます。
例えば賃貸物件への投資や土地活用による賃貸経営などは相応の資金を必要とする資産運用ですが、現在はサブリースという形で空室保証をする会社も増えていますので、投資する側としては一定のリスク軽減になります。また建物の管理や入居・退居の手続きなども、同じグループの会社がフォローしてくれる場合がある。不動産が、ある種金融商品化してきているのです。手数料はかかりますが、ほかに仕事を持ちながら不動産投資をする人にとっては、手間と時間を節約できるメリットのあるサービスといえるでしょう。
分散投資の観点からいえば、不動産への投資は従来から見逃せない選択肢の一つです。各社が競争する中で、サービスの内容やクオリティは向上していますので、目的に合った会社をパートナーに選ぶといいでしょう。