企業は自治体に対して
どんどん希望を出すべき

このほか市町村に見られる最近の変化は、企業の留置活動にも力を入れるようになったことだという。

「誘致した企業には、いつまでもとどまって発展してもらいたい。その思いを具体的な形で表すようになってきました」

企業留置においては、柔軟な補助金制度などもポイントの一つだろう。一般的に補助金の交付というと、新規立地のときに限られることが多い。また、その後に交付のチャンスがあるとしても、雇用増を伴う事業の拡張が対象となる制度がほとんどだ。藤田氏は、「こうした縛りをなくし、追加の設備投資を行っただけでも補助が受けられるようにすれば、効果的な留置対策の一つになり得る」と言う。

そもそも自治体による補助金の現況は、どうなのか。日本立地センターの調べによると、上の表に示すとおり補助金額は確実に増えている。また、立地企業に対してでなく、企業誘致に関する有力情報提供者への成功報酬制度を定めている県もある。さらに、留置を狙ったユニークな方策として、小規模の設備投資を積み重ねることで、一定の要件を達成すれば補助の対象とみなすマイレージ制度の導入も見られる。熱心な自治体は、さまざまな工夫に努力を傾けているのである。

藤田氏は企業に対し、こうも勧める。

「企業側は、わがままなくらい希望を出していいと思います。いまは『御社のために自治体は汗をかきます』という時代。むろん補助金の交付条件を一社に限って変えたりはできませんが、法や条例の範囲で諸施策の柔軟性や対応のスピードを上げることならできるはず。自治体側も、まだまだ聞かされないと気づかない点が少なくありません。希望をぶつけて、どこまでも親身に努めてくれる地域こそが、より満足度の高い立地成果をもたらしてくれるのではないでしょうか」