アベノミクス効果もあり、工場等の国内立地にも追い風が吹いてきた。企業を取り巻く経済環境が変化しつつあるなか、地方自治体による誘致活動の現状や事業用地選択のヒントを、一般財団法人日本立地センターの藤田成裕氏に聞いた。

企業の立地意欲は上昇
設備投資にも前向き

「全国各地の自治体の方々にお会いすると、『企業から事業用地への引き合いが増えている』という声が多いですね。アベノミクスの効果もあり、企業の立地意欲は高まっていると考えていいと思います」

一般財団法人日本立地センター産業立地部次長の藤田成裕氏が、日ごろの業務を通じ、得ている実感である。

雇用や税収などを確保する方策として、企業誘致は地方自治体が推進する重要なテーマだ。同財団が昨年10月から11月にかけて全国1736の市区町村を対象に行った「企業誘致活動に関するアンケート調査」(有効回答数1029)によると、誘致活動に取り組んでいる自治体は約80%。「住民らに向け教育や福祉の充実などだけでなく、企業誘致への積極姿勢を示す首長も増えた」と藤田氏は言う。同調査では、「企業誘致のために取り組んでいる内容」として「首長による積極的なトップセールスの展開」を挙げた自治体がおよそ30%に達した。

企業からの用地引き合いの増加は、設備投資が活発化する趨勢とも相関している。まず、製造業の大企業と中堅企業については、日本政策投資銀行によると(本年6月発表)「2014年度国内地域別設備投資額は、全地域が対前年比で2桁の増加」という勢いだ。最高は関西地域の35.3%増。増加の幅が最も小さい東海地域も14.4%増である。

同じく中小企業については、日本政策金融公庫によると(同右)「国内設備投資は13年度まで4年連続の増加」「14年度の当初計画(4月時点)は、前年同時期に策定された13年度当初計画に比べ9.6%増」とポジティブな結果が出ている。

実際の工場立地に見る
特徴的な傾向とその背景

現時点の立地意欲や設備投資計画の具現化まではタイムラグがあるものの、すでに顕著な立地増加を遂げている業種として、固定価格買取制度が導入され、電力自由化も控えた電気業(メガソーラー)がある。「平成25年における工場立地動向調査」(経済産業省)によると、電気業の立地件数は1年間に全国で1000件を超え前年の3.5倍強。総立地面積は、約6500ヘクタールにも及んでいる。

電気業以外による立地も、リーマンショック直後に大きく減ったとはいえ、以降はおおむね横ばいだ。なかでも食料品メーカーの立地が多い。これらの立地動向の特徴について、藤田氏は次のように解説する。

「メガソーラーが進出する用地は、何らかの理由で工場や他の事業施設に適さないケースが多い。その場合、自治体にとっては太陽光発電に活用されれば、結果としてプラスになります。食料品メーカーの立地が相対的に多いのは、かねてからの傾向です。景気の影響をあまり受けませんし、ほとんど内需のビジネスなので海外立地が少ない。それに自治体側も地元の農産物等を生かす戦略の一環で、食料品分野に誘致の重点を置いているのです」

アベノミクスにより始まりつつある経済の好循環を一過性でない持続的な成長軌道につなげるべく、本年6月に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2014」。そこでは環境・エネルギー制約の克服、電力システム改革の断行、クリーン・経済的なエネルギー需給の実現といったテーマも重視されている。さらに、農林水産物・食品の輸出増加や新たな国内市場の開拓、農業の6次産業化といった方向性も示された。電力や食品関連産業は、日本再興の一翼を担うことが期待される存在でもあるのだ。