グローバル化が進むなか、小学校の英語教育は大きく変わり始めた。6年後には小学校3年生から英語学習がスタートする予定だ。子供たちがこれから身につけなくてはいけない英語力とは、どのようなものか。上智大学言語教育研究センター教授・藤田 保先生にお話をうかがった。
小学生に大事なのは
知識より使う意欲
小学校における英語学習の開始年齢が、現在の小学校5年生から3年生に引き下げられる見通しとなった。文部科学省発表の計画では、2018年度に一部先行実施、本格的な実施は2020年度以降になる予定だ。日本人の英語学習が大きく変わっていくわけだが、そもそもグローバル社会への適応を求められる子供たちが学ぶ英語とは、どんな英語なのか。外国語教育の専門家である、上智大学言語教育研究センター教授の藤田保先生はこう解説する。
「現在、世界中で英語を使う人は21億人とも22億人ともいわれていますが、その中で、英語を母国語としない人が7割から8割を占めます。日本のビジネスパーソンが海外で英語を使って対話する相手も、アジアやアフリカ、南米の人たちであることが少なくない。そこで交わされるのは、ネイティブスピーカーでない人同士の会話であり、求められるのは、ネイティブと同じレベルの発音や、気のきいた慣用句ではなく、互いに主張し、渡り合うための英語です。つまり、正確さより、通じるかどうかが大事。子供たちがこれから身につけていくべき英語も、こうした、実際に伝わる英語です」
では、使える英語、伝わる英語を身につけるための英語教育とはどんなものなのか。藤田先生によれば、現場ではすでに、英語を使うための意欲を高めることが、重視されているようだ。
「現在の学習指導要領でも、小学校、中学校、高校と続く英語教育の方針として、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成が謳われています。これまでの英語教育では単語や文法といった知識を身につけることが重視されてきましたが、その一方で、覚えた知識をどう生かすかという視点が抜けていました。その結果、ほとんどの日本人が英語で数を数えることができ、疑問文や否定文をつくることができるのに、英語はできますかとインタビューされたら80~90%の人ができないと答えるような状態になった。実際にはかなりの知識を持っているのに英語はできませんと答えるのは単に自信がないから。頭に知識を入れるばかりで、どこでどう使うかを学んでこなかったからです。ここで大事なのは、知識をさらに増やすことではなく、手持ちの知識の使い方を学ぶこと。そのためには、英語を使おうという意欲を高めることがもっとも重要です」