日々変動するビジネス環境。経営効率化や迅速な戦略展開へのニーズは、BPOの活用目的も変え始めた。野村総合研究所の能勢幸嗣氏と竹田正氏が、これからのBPOについて解説する。

マネジメント力や
提案力にも期待

BPOの役割が
変化してきている

能勢幸嗣●のせ・こうじ
(株)野村総合研究所
金融IT事業開発部
グループマネージャー

業務の一部を外部に委託する「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)」。日本では90年代からコスト削減を主目的に、単純入力業務を外部に任せる動きが徐々に広がっていった。その後、総務や経理、人事などの業務委託が急速に普及。近年は対象となる業務分野もいっそう拡大し、付加価値創造の手法としても、活用され始めている。

「やはり注目すべきは、BPOベンダーの役割の変化」と指摘するのは、野村総合研究所の能勢幸嗣氏(金融IT事業開発部グループリーダー)だ。新たな役割の一つはビジネスパートナーとしての提案力。背景には環境変化の常態化がある、と能勢氏は説明する。

「市場環境や法規制、顧客接点の多様化、それに伴う異業種からの新規参入など、いま企業を取り巻く環境は目まぐるしく変動しています。あわせて、これまで定型業務といわれていた経理や財務なども、制度改正やグローバル化などの影響を受け、事務処理の手順や様式が変化しています。そうしたなかで、BPOベンダーにも、業務の変化に迅速に対応するための業務設計力やマネジメント力が求められる時代となっているのです」

さらに同じ部署の竹田正氏(主任コンサルタント)は、それに関連して「システムのスパゲティ化も深刻」と注意を促す。業務処理の効率化などを目的に、この間企業にはITシステムが次々に導入された。その結果、「いまや過度の『密結合』、つまりスパゲティのように絡み合った状態になっている」と言うのだ。

つまり度重なる拡張などによって、システムが複雑に絡み合い、わずかな変更でも、システムの全体的な改修が必要となってきたのである。しかし社内は分業化が進み、業務とシステムの全体を概観できる人材がいない。そこで当該分野に豊富な業務知識を持つBPOベンダーのノウハウとコンサルティング力を活用しよう、という考え方が出てきているというのだ。

運用状況の見える化で
得られるメリットとは?

「BPOベンダーの強みは、業務の運用状況の“見える化” が実現できている点です。日常的にオペレーションに従事することで、日々の処理件数はもとより、ミスの発生状況などを正確に把握しています。また、同種の業務を多くのクライアントから受けており、生産性向上や効率化の面でも、ノウハウが蓄積されています。そうしたなかで浮き彫りになる課題や見える化から着想するアイデアなど、クライアント企業と共有できる財産は多いですね」(能勢氏)

例えば、経理部門の業務効率を正確に把握している経営者や、営業マンが提出する日報から効率性を読み取れる上司がどれだけいるだろう? それが、BPOベンダーと連携することで可能となる場合があるわけだ。 「業務の課題や生産性が明らかになるのは、BPOの活用がもたらす大きなメリット。そして、そのもう一歩先にあるのが『業務再設計』へとつながる提案力でしょう」と能勢氏は言う。