最高変換効率だけでは
計れないパワコンの性能

川上勝史●かわかみ・まさふみ
SMAジャパン株式会社
テクニカルダイレクター

2006年よりSMA Solar Technology AG製品の分散型オフグリッドおよびパワーコンディショナを扱う。10年、日本への本格市場投入準備として、JET(電気安全環境研究所)認証取得を支援。11年、日本法人立ち上げに伴い、現職に就任。

太陽光発電システムの設置にあたっては、まず太陽光パネルの種類やメーカーが気になるところだろう。しかし、発電量や売電収入を考えたとき、もう一つ見逃せない装置がある。「パワーコンディショナ」(以下パワコン)だ。

太陽光パネルで発電した電気は「直流」だが、家庭で使ったり、電力会社の送電網と接続するには「交流」に変換する必要がある。この変換を行うのがパワコンだ。日本では多くの場合、パネルとパワコンがセット販売されているため、これまであまり注目されることがなかった。だが、「欧州などでは、パワコンは選んで購入するのが一般的」。そう話すのは、ドイツのパワコン専業メーカーであるSMAソーラー・テクノロジーの日本法人、SMAジャパンの川上勝史テクニカルダイレクターだ。「発電効率や売電による収支モデルに大きく影響するパワコンは、太陽光発電システムにおける基幹装置。そのクオリティーに対する視線は非常に厳しいものがあり、欧州ではいわゆる“指名買い”も一般的です」。

では、パワコン選びのポイントはどこにあるのか。やはり、まず重要なのは変換効率だ。太陽光発電システムの発電量は、パネルの効率とパワコンの効率の掛け算で決まる。わずか数%の違いであっても、10年、20年に及ぶ売電期間を考えれば、その差は非常に大きなものとなる。

そしてもう一点、実は重要なポイントがある。それは、例えば朝方や夕方、曇りの日でも高い変換効率を実現できるかどうかだ。一般にパワコンの性能は最高変換効率などで示されるが、日照が弱いときなどの変換効率は製品によって大きく異なる。つまり、条件の悪いなかでも高効率を維持できるかどうかで、発電の総量はかなり変わってくるわけだ。そのため、欧州では入力電力が低いときの変換効率も加味して総合評価した値が示されているという。

世界シェア第1位
SMAのパワコン

太陽光発電システムにおけるもう1つの重要な構成要素。そんなパワコンの業界で世界的なリーディングカンパニーの位置にあるのがSMAだ。米調査会社IHSによれば、2013年の世界のパワコン販売シェアで第1位。日本の専門家も、その品質の高さについては、口を揃えて評価する。

「SMAは世界21カ国に拠点を持つグローバルカンパニー。2011年に日本法人を立ち上げ、本格的に日本市場に進出しました。住宅用、産業用、メガソーラー用とすべてのパワコンをラインアップしており、すでに日本国内に3万台以上の設置実績を有しています」と川上氏は言う。

SMAのパワコンの特長は、第1に高効率であること。最高変換効率はおよそ97~98%だ。しかも高効率で自己ロスが少ないため連系運転に至るまでの立ち上がりが早く、日の出から日没まで長時間の発電を可能にする。先述のとおり、この性能が発電総量のアップに貢献することになる。

太陽光発電システムに欠かせないパワコン。日本でも、“屋外設置型”のニーズは高まりつつある。

一方、厳しい環境下でも安定的に作動し、故障が少ないことも同社製品の評価の対象だ。実はSMAのパワコンはすべて屋外設置仕様。屋外に設置できれば屋内の場合に気になる排熱や音の面などでユーザーにとっては確かにありがたい。だが、それには日本で一般的な屋内設置型と比較して相応の耐久性が求められることになる。

その点について川上氏は「SMAにとってパワコンは産業機器」と表現する。つまり、同社の製品は住宅向けであっても業務用レベルの品質を確保。寒冷地や高温地域、潮風に晒される海岸沿いなどでも、一定の性能を発揮することが前提なのだ。そのため開発にあたっては、塩害、風害、高温、寒冷など、あらゆる条件での耐久試験を繰り返している。