将来への不安が高まる中、資産運用は必須の時代になっている。ところが「何から始めればいいのか分からない」という人が多い。ファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子氏は第一歩として“家計の見える化”を勧める。その理由と効果を聞いてみた。

得意・不得意にかかわらず
資産運用が必須の時代に

このところ資産運用に対する意識が高くなっています。その理由は、年代によって少し異なります。30代、40代の会社員は、公的年金に不安を持っている人が多く、将来の老後資金をいかに蓄えるかが大きな関心事です。

これは、確定拠出年金の導入とも大きくかかわっています。確定拠出年金は企業年金の一種で、積立金は会社が負担しますが、運用方法は社員が自ら選択しなければなりません。預金や保険など元本が確保されるタイプがあれば、投資信託などで積極的なリターンを狙うタイプもあります。どれを選ぶかで将来の年金額が大きく変わるのです。最近は確定拠出年金を導入する会社が増えてきましたので、得意、不得意にかかわらず、資産運用に目を向けざるを得なくなっているのです。

一方で50代、60代の中には、今後のインフレを心配する人が多くなりました。そもそも資産運用は、購買力を維持するために行うものです。アベノミクスによって、日本は長いデフレから脱出する可能性がでてきました。デフレであれば、モノの値段が下がるので現金の価値が上がります。よって資産は現金や預金で保有していれば購買力は維持できました。

ところがデフレから脱出し、インフレになれば、モノの値段が上がり、現金の価値は目減りします。現金や預金のままでは購買力が維持できませんから、資産運用に目を向ける必要があるのです。

特に50代、60代は、過去のインフレを経験していますから、その恐ろしさを記憶しています。「何かしなければ」という気持ちが高まっているのは確かでしょう。いまの段階で本当にインフレが来るかどうかは分かりません。しかし、日銀は年2%の物価上昇を目指しています。仮にインフレになったとしても困らないような準備をしておくべきでしょう。

きっかけが年金不安であってもインフレ不安であっても、資産運用が必要になっていること自体に変わりはありません。いま踏み出せるか、踏み出せないか、この違いが将来の大きな違いにつながっていくことは確かです。

今年1月から少額投資非課税制度「NISA」がスタートしました。年間100万円まで非課税で投資ができるというのは、大きなメリットです。これを機会に資産運用の第一歩を踏み出すことをお勧めします。

とはいえ、いきなり多額の資金を一気に投じるのは禁物です。まったく泳げない人が高さ10メートルの飛び込み台からプールに飛び込んでしまうようなものです。2度とチャレンジできないような痛手を負ってしまわないよう、まずは準備から始めなくてはなりません。

最初に実践すべきは「現状把握」です。収入と支出、資産と負債を洗い出します。最近はライフスタイルが多様化し、“老後資金としていくら貯めればいいのか”という一般的な目安がなくなってきています。同じ40代の会社員であっても、シングルの人、共働きで子どもがいない家庭、専業主婦で子どもがいる家庭など、人それぞれ違うのです。自分の場合にはどうすればいいのかを個別に見極めなければいけません。そのために現状把握が欠かせないのです。