1950年創立。全国254の信用金庫の収益力向上などを支援するセントラルバンク機能、機関投資家・コーポレートファイナンス機能、中小企業や地域の課題に信用金庫と連携してソリューションを提供し持続可能な社会を実現する機能を持つ。
1987年学習院大学卒業後、信金中央金庫に入庫。ロンドン・信金インターナショナル代表取締役社長、総合企画部長、理事(大阪支店長委嘱)、常務理事、専務理事を経て、2022年副理事長。26年6月より現職。レディング大学ヘンリー・ビジネススクールMBA、慶應義塾大学大学院経営学修士。
地域社会に目を向ければ、人口減少や少子高齢化、人手不足、気候変動など、複合的な課題に直面しています。ただ、私は決して悲観しているわけではありません。信金中金と全国254の信用金庫が一体となって支援することで、地域の中小企業が課題を解決し、元気になる。そのことが日本全体の成長につながると確信しています。
その基盤が、全国に広がる信用金庫のネットワークです。信用金庫は約7000店舗、約10万人の職員を擁し、地域に深く根差した強固なネットワークを築いています。信用金庫は地域と一心同体です。地域が元気になれば信用金庫も成長できる。信金中金は、信用金庫が各地域で発揮する役割と、私たちが持つ国内外のネットワークや専門性を結び付け、地域社会に新たな価値を生み出していきます。そのために、次の四つの分野に注力します。
AIの活用が進むほどお客さまと向き合える
私たちが最も重視するのは、地域のお客さまと長年にわたって築いてきた「Face to Face」の信頼関係です。資金ニーズへの対応にとどまらず、事業承継や人材確保、国内外での販路拡大まで含めて伴走する姿勢こそ、これからも変わらない私たちの強みだと考えています。こうした対面の価値をさらに高めるため、新たに立ち上げたDX戦略推進チームを軸にした「積極的なAI活用による業務革新」を一つ目の注力分野に据えました。信用金庫の業務効率化に向けて、これまでも数多くの事務共同化スキームを提供してきました。生成AIの活用で、この取り組みを一段と加速させます。事務作業を効率化できれば、職員は人にしかできない「お客さまとの対話」により多くの時間を振り向けられます。
加えて、AIは提案の質の向上にも役立ちます。例えば信用金庫が持つ膨大な取引データから、教育資金や住宅購入などの資金需要が生じるタイミングを読み解き、営業の糸口を示す「しんきんDB」を信用金庫へ提供しています。お客さまと向き合う時間を増やし、悩みに即した提案をタイムリーに行う。こうした成功事例を全国でスピーディーに共有・展開できれば、課題解決の精度も高まるでしょう。デジタルを導入するほど、人にしか果たせない役割はむしろ明確になります。AIの活用は、人と人が向き合う時間と価値を向上させる手段なのです。
二つ目は、守りと攻めを両立するいわゆる「両利きの経営」の徹底です。守りの面では、マネー・ローンダリングやサイバー攻撃などのリスクが増大する中で、信用金庫が地域社会のインフラとしての機能を持続的に発揮できるよう、業界全体の危機対応力の強化に一段と注力していきます。また、災害復興において、各地域でその最前線を支える信用金庫の存在は欠かせません。信金中金は業界として地域の災害復興や防災・減災を支援するため、「しんきん復興支援ファンド」と「しんきん防災応援ファンド」を組成し、激甚災害の被災企業や地域のレジリエンス向上に取り組む企業に資金供給しています。そして攻めでは、新設した成長戦略投資チームが中心となり、地域の社会課題の解決に貢献しながら信用金庫業界の収益機会にもつながるCSV(Creating Shared Value=共通価値の創造)投資を戦略的に進めていきます。
「つなぐ力」を発揮して地域の成長を後押しする
三つ目が「信金中金・信用金庫業界のブランド力の向上」です。信用金庫と信金中金は、地域課題の解決のためにここまでやってくれるのか――そう皆さまに実感していただき、さまざまなご相談をお寄せいただくことが、地域の成長への第一歩だと考えています。そこで力を入れているのが、信金中金が「ハブ」となって信用金庫同士、そして産官学金の外部ネットワークをつなぐことです。全国の信用金庫の取引先同士を引き合わせて販路拡大を支援するビジネスマッチングサービス「しんきんコネクト」がその一例です。信用金庫業界の「つなぐ力」は、非常時にこそ真価を発揮します。2024年の能登半島地震では、輪島で販路を失った事業者の産品を東京の信用金庫が自身の支店で販売し、被災地の農産物をインターネットで販売する仕組みを整えました。顧客とのつながりを生かして被災地と消費地を結んだのです。
これらの変革を支える土台が、四つ目の「信金中金の人財力の強化」です。どれほど優れた戦略を描いても、それを現場で実行する人が育たなければ変革は前に進みません。だからこそ、私は職員ファーストの経営を徹底していきます。職員が安心して挑戦し、成長を実感できる機会を積極的に提供することが、組織の力を高め、ひいては地域やお客さまへの支援の質を高めると考えているからです。職員一人一人が成長し、地域社会への貢献を実感し、その実感が次の挑戦への意欲につながる。そんな好循環が、信金中金、そして信用金庫業界の持続的な成長の原動力になると確信しています。地域の未来は、これから、もっと輝きを増す――そう信じて、私たちは歩みを進めていきます。