経営陣の隠れた悩み…急速に増えた社内依頼による「リマインド疲れ」
このところ大企業を中心に経営陣の隠れた悩みになっているのが、いわゆる「社内依頼」の増加だ。ESG経営やDX推進、情報セキュリティ対策、コンプライアンス強化など、企業として取り組むべき課題が増える中、社内依頼が増加すること自体は避けられない側面もある。問題は、増えた社内依頼を適切にコントロールできないことで対応漏れや遅延が発生し、本来実施すべき取り組みが徹底されなくなるリスクがあることだ。
実施者である社員サイドから見れば、社内依頼は主業務ではないうえに数が多いため、つい後回しにしてしまいがち。放っておくうちに締め切りが来て「あの依頼はどうなりました?」とリマインドされ、メールの海を捜索するはめになる。その過程では、各部署の部門長が部員に催促するといった、依頼する側・される側・部門長それぞれにとって軽微とはいえない負担が生じている。こうしたリマインドにまつわる関係者の負担を日立ソリューションズでは「リマインド疲れ」と呼ぶ。同社の推計によれば、リマインド疲れによる損失は、従業員1,000名の企業で年間2,000万円以上にもなるという。
株式会社 日立ソリューションズ
スマートライフソリューション事業部 AIワークオートメーション本部
マーケティングスペシャリスト
「『最近、社内依頼が増えて主業務に支障が出ているのではないか』という声が社内から上がり、2014年に人事部門主導の社内業務効率化プロジェクトが始まりました。グループタスク リマインダーサービスの原型となるシステムは、その流れを受けて生産技術部が社内向けの業務効率化ツールとして2016年に実装し、社内利用を開始しました」
と振り返るのは、日立ソリューションズでグループタスク リマインダーサービスの販売を統括するマーケティングスペシャリストの武藤耕多氏だ。
「当初は社内業務の効率化を目的として開発されたもので、販売を前提としたものではありませんでした。実際に利用した社員から高い評価を得るとともに、当初の課題解決にもつながる仕組みであったことから、本サービスの拡販を担当していた前任者が『他の企業にもぜひ活用してほしい』という強い思いを持ち、商品化に至りました。まずは日立グループ内で口コミを通じて導入が広がり、現在は業種・業態を問わず、社内依頼の管理や運用に課題を抱える企業や組織へ提案を行っています」
メールやチャットベースだった社内依頼をポータル上に「ひとまとめ」
グループタスク リマインダーサービスは、それぞれの企業が利用しているポータルサイトのトップ画面の上部に「TODOバー」を配置し、そこに社内依頼のリストを一覧表示する仕組みだ。対応が必要な依頼を1カ所で確認できるため、メールやチャットでは埋もれがちな社内依頼を探す手間を削減できる。
TODOバーには実施すべき社内依頼が1件ごとに付箋形式で表示される。本日期限もしくは期限切れの依頼は赤、2週間以内に期限が来る依頼は黄色、時間に余裕がある依頼は青と色分けされ、期限が早いものからバーの左寄りに表示される。ポータルサイトを開くと、「まず対応すべき依頼」が真っ先に目に飛び込んでくるようになっている。
また、部下の名前と社内依頼の対応状況が画面上に表形式で一覧表示されるので、部門長が部下の対応状況を把握しやすくなる。さらに、未対応者にはその一覧画面からリマインドメールを送ることもできるため、依頼の発信者や部門長のリマインドに関する負担軽減にもつながる。
日立ソリューションズ社内で、7割を切っていた期限内の回答率が98.2%に改善
社内にグループタスク リマインダーサービスを導入した日立ソリューションズでは、各種社内依頼の期限内の回答率が67%から98.2%へと飛躍的に高まった(*1)。依頼の発信者にとっては、期限内の回答率が向上したことで、リマインドにかかる負担の軽減につながった。一般社員は、催促を受けてから受信トレイに埋もれた社内依頼のメールを探す手間を、部門長は部下の実施状況の確認やフォローにかかる手間を削減できた。約6,000名(*2)が利用する日立ソリューションズでは、グループタスク リマインダーサービスの導入により、全社で年間3万9,461時間の工数削減効果(*3)が得られたという。
工数の削減に加え、従業員のマインドに与えるプラス効果も無視できない。実施者である社員にとっては、締め切り直前に催促される従来の手法では「やらされ感」が強いのに対し、自分でポータルサイトをチェックし自然と目に入ってくるグループタスク リマインダーサービスなら、自発的にタスクを処理できる。この差は大きい。
グループタスク リマインダーサービスは、行動変容を促すデザインを取り入れ、自発的に社内依頼へ対応しやすくするための仕掛けを数多く備えている。
たとえばTODOバーの左端には、依頼への対応状況に応じて天気マークが表示される。順調な状態は「晴れ」、遅れ気味になると「曇り」、さらに状況が悪化すると「雨」に変わる。そのため社員一人ひとりが「晴れ」の状態を維持しようと依頼への対応を意識するきっかけとなる。依頼ごとに自部署の実施率も表示され、「残り何人か」が一目でわかるようになっているため、未実施者には自然と「対応しなければ」という意識が働く。
企業経営者にとってグループタスク リマインダーサービスは、全社に対して緊急にガバナンスを利かせる必要がある場合にも強い味方となる。たとえば「サイバー攻撃を受けたので、情報の流出がないか各自のPCを直ちにチェックしてほしい」といった待ったなしの場面でも、グループタスク リマインダーサービスを使うことで全社へ迅速に周知し、実施状況を把握できる。
「ガバナンス強化の支援とEX(Employee Experience=従業員体験)の向上という、両立が難しいテーマをバランス良く実現するアプリケーションは珍しいのではないでしょうか」と武藤氏は強調する。
グループタスク リマインダーサービスはリリース後、日立グループのIT系事業部間の口コミで「シンプルで効果的だ」という評判が広がり、グループのIT部門を中心に導入が広がっていった。2020年には日立グループ以外への外販も開始。そこでも「日立グループで使われている」という実績が効果を発揮し、2026年8月時点で導入企業は累計48社、利用ユーザー数は累計13万4,500人に達した。
武藤氏によれば、見逃せない相乗効果もあるという。
「お客さまの中には『ポータルサイトの閲覧率が低いので、導入効果が期待できないのでは?』と心配される方もいらっしゃいます。でも、事実は逆なんです。グループタスク リマインダーサービスを導入して、多くの社員が頻繁に自分への依頼をチェックするようになれば、ポータルサイトの閲覧率が高まります。ポータルサイトを活性化するためにも、グループタスク リマインダーサービスをお薦めしています」
進化が続く「グループタスク リマインダーサービス」を自治体、学校などの現場にも
グループタスク リマインダーサービスは現在も進化を続けている。依頼された内容について改善の提案ポイントがあると感じた場合に、実施者から依頼者へポジティブな意見をフィードバックする仕組みや、社内依頼を発信する際に、他の依頼と締め切り日が重ならないよう、依頼の集中度をチェックするといった機能も実装された。
グループタスク リマインダーサービスの導入効果は規模の大きな企業ほど顕著だという。
「とりわけ2020年代に入ってからは、ESG経営やDX推進、デジタル化に伴うサイバー攻撃へのリスク対応など、いわゆるサステナビリティ(持続可能な社会)の実現に向けて、企業の取り組みは多様化し、活発化しています。その取り組みの中から従業員への社内依頼が発生し、今後もなくなることはないと考えています。従業員の負担を軽減するためには、まず社内依頼が増加する背景を理解し、そのうえで社内依頼を効率的に管理・運用する仕組みを整えることが重要です」と武藤氏は指摘する。
今後は企業だけでなく自治体や学校など、報告や依頼業務の割合が高い組織へも導入を広げていく計画だ。
*1 2020年度の依頼数228件を対象とした日立ソリューションズの実績
*2 派遣社員を含む本サービスの利用者数(2026年8月時点)
*3 導入初年度に対する5年後の削減工数