第2の経済圏をカバーする新拠点、大阪「国際金融都市」構想にも魅力あり
「大阪出張所は玉山銀行の日本市場拡大における重要な戦略拠点です。今後、玉山銀行は台湾のお客様へのサービス範囲を拡大するとともに、関西地域における同業他社との連携を強化し、日本での事業をより一層深めてまいります。そして東京、福岡、熊本、大阪の4拠点による緊密な連携を通じて、国境を越える台湾企業および日本企業の皆さまにサービスを提供し、より良い未来を築いてまいります」
9月4日、台湾の大手民間商業銀行、玉山銀行がJR大阪駅北口の複合ビル「グランフロント大阪」(大阪市北区)に大阪出張所を開設した。オープンを祝う式典で経営トップの黃男州氏(玉山フィナンシャルホールディング代表取締役会長・玉山銀行代表取締役会長)は多くの関係者を前にこう語り、日本市場への関与を従来以上に深めていく決意を表明した。
玉山銀行は、日本でいえばメガバンクに当たる大手金融機関だ。証券やベンチャーキャピタル、生命保険などを展開する金融グループ・玉山フィナンシャルホールディングの中核企業であり、個人・法人向けの金融サービスを世界展開するグローバルバンクでもある。
これまで台湾企業の海外進出増加に伴い海外拠点を充実させてきた。今回開設された大阪出張所は、日本で4つ目の拠点に当たる。東京、九州に続いて大阪への進出を決めた理由を、玉山フィナンシャルホールディング最高マーケティング責任者(CMO)の林俊佑(リン・ジュンヨウ)氏は次のように語る。
玉山フィナンシャルホールディング
最高マーケティング責任者(CMO)
「大阪を中心とする関西は日本第2位の経済圏であり、大阪府においては国際金融都市を目指す動きも進行中で、将来の発展が十分期待できる地域です。大阪や神戸、京都など関西地域の製造業や中小企業には、AIやデータセンター、ESG推進などに積極的に取り組んでいる企業も多く、これらはいずれも玉山銀行が支援やサービスを提供できる分野です。関西にも拠点を持つことは、私たちの日本展開にとって大きな助けとなり、お客様により包括的なサービスを提供できるようになるでしょう」
また、「近年は台湾の富裕層が日本で不動産投資を行うケースも増加傾向にあり、大阪は東京に次ぐ投資先になっている」(林CMO)という。
大阪府は2030年までに50社の海外金融機関を誘致する目標を掲げ、海外企業への優遇・支援策を打ち出している。今回の進出は、台湾の顧客ニーズや関西圏の企業の傾向、府の地域政策などを見据えてのものといえるだろう。
玉山銀行は地域の金融機関との連携にも積極的だ。すでにりそな銀行と業務提携契約を締結しているが、今後は関西圏の他の地方銀行などとも協力関係を深め、日本進出を望む台湾企業や台湾進出を望む日本企業に対し、金融サービスをともに支援していく考えだ。
台湾企業サポートと日本企業のアジア進出サポートが2本柱
顧客の新規開拓に向けた計画も着々と進んでいる。東京支店長で大阪出張所所長を兼ねる林國維(リム・コクイ)氏は、「お客様第一という理念の下、事業の2本柱にしっかり取り組んで関西市場に根を張っていきたい」と力を込める。
「柱の1つ目は日本で活動する台湾企業様のサポートです。融資や口座開設、為替業務といった、東京支店で提供しているメニューをこちらでも展開していきます。2つ目は関西圏の日本企業顧客の開拓です。関西経済の成長を背景に、地方銀行との連携やネットワークの構築を通じて、地域の日系企業の資金ニーズを支援してまいります。また、皆様の台湾およびアジアへの進出にも、玉山銀行の国内外拠点のネットワークを活かし、現地の金融サービスや産業交流といった面からサポートさせていただきたいと思っています」(林支店長)
玉山銀行
東京支店 支店長
兼大阪出張所 所長
その実現に向けて、林支店長らは大阪出張所開設の数カ月前から、地方銀行や商工会議所、産業団体などとの関係構築を進めてきた。こうした活動を通して関西企業のニーズを確実につかみ、同行の強みを生かせる領域を開拓していく構えだ。
一方、世界に目を転じると、玉山銀行はアジア太平洋地域やアメリカなど11の国・地域に36の海外拠点を展開している。この海外ネットワークは、「台湾企業にとって最良の金融パートナーになる」(林CMO)というグローバル戦略に基づいて形成された。
「私たちはこの戦略に基づき、台湾企業の海外進出に合わせて海外での拠点展開を進めてきました。『台湾の玉山』から『アジアの玉山』となることを目指し、今後も海外ネットワークを拡大していく方針です」(林CMO)
その中で日本市場には、特に半導体や電子製造、情報通信サービス、金融といった分野での相互協力・相互発展を期待しているという。これらは台湾が強い分野であり、日本政府もさまざまな推進政策を打ち出していることから、林CMOは「日台企業の相互投資や融資ニーズはさらに拡大すると確信している」と自信を見せる。
玉山銀行が初の日本進出となる東京支店を開設したのは2017年。順調な成長を受けて、23年には地理的に台湾と近く、半導体産業をはじめ製造業が集積する九州へ進出した。まず開設したのは福岡支店だ。福岡市が海外企業の誘致に積極的だったこと、九州経済連合会が福岡を「九州経済発展の牽引役」とする方針を示したことも決め手になった。
翌24年には台湾の世界的な半導体メーカー「TSMC」が熊本県に進出し、熊本を中心とする各地に大きな経済効果をもたらした。そのため熊本に拠点を設けてほしいとの要望が増え、同年に開業したのが熊本出張所である。現在では地域の金融機関と連携して、両国の企業によるM&Aや提携なども支援している。
林CMOは「私たちは台湾と日本をつなぐ懸け橋になりたいと考えています。アジア各地に広がる拠点網を生かし、台湾企業だけでなく日本企業に対しても、そのアジア展開を支える金融サービスを提供することで貢献していきます」と決意を示す。
多様な文化交流事業を通じて日本と台湾の「懸け橋」に
大阪出張所を含む日本国内4拠点すべてを統括するのが東京支店だ。林支店長は、「東京支店では円・米ドル・ユーロ建てでの融資や口座開設、預金、外国為替送金といったフルスペックの金融サービスを提供している」と説明する。
「東京支店は開設以来、日本現地のパートナー様と緊密な関係を築き、国際シンジケートローンも提供できるようになりました。当初は外資系ならではのハードルもありましたが、突破口を模索しながら少しずつ取り扱い分野を広げてきました。大阪出張所がカバーする関西地域でも、同じように積極的にサービスを展開していきたい」と林支店長。
4拠点共通の施策として、今後は人材育成も強化していく。すでに各拠点には多言語能力を持つ従業員を配置しているが、サービスの品質維持と業績の継続的な成長を果たすには対応力のさらなる向上も欠かせない。林支店長は「日台の絆を深めるという点でも貢献できるような優秀な人材を揃えていきたい」と意気込む。
その言葉通り、玉山銀行は日本と台湾の友好促進に向けて文化交流事業にも積極的に取り組んでいる。23年には福岡で「日台友好『心の絆』コンサート」を、26年には熊本で「日台友好『希望の音色』コンサート」を開催し、いずれも大好評を博した。スポーツの分野でも、プロ野球の試合において「玉山台湾デー」を数多く開催している。林CMOは「これらの事業を通じて台湾と日本の距離をさらに縮め、友好関係を深めていきたい」と話す。
林支店長によれば「銀行業務の拡大だけでなく、日本と台湾の絆を深めることも当行の大事な役割」。大阪出張所の開設後は、関西地域における文化交流事業に積極的に取り組んでいく予定という。
「文化交流は、日本の人々に台湾と玉山銀行に親しみや信頼感を抱いてもらえる機会であると同時に、当行の誠意や長期的なコミットメントを感じていただける機会でもあります。そうして初めて日台の懸け橋になれるのではと思っています。今後も業務やイベントを通じて、日本の皆様とより温かい関係を築いていけるよう努めてまいります」(林支店長)
初の日本進出から9年、今では日台友好の懸け橋としても存在感を発揮している玉山銀行。新たに加わった大阪出張所も、日台関係にさらなる好影響をもたらしてくれるに違いない。