1時間増えるごとにうつリスクが高まる

実際、科学はスマホ利用を制限することに、一定の意義があることを示しています。

2025年6月、医学誌『JAMA Pediatrics』にこうした実態に関連するアメリカの研究が発表されました。対象は9~10歳の子ども976人。うつ症状は9~10歳時と11~13歳時の2時点で調べ、睡眠時間と脳の白質構造は11~13歳時に測定した、というものです。

結果として、スクリーンタイムが1時間延びるごとに、2年後のうつ症状スコアが平均0.12ポイント高いことがわかりました(95%信頼区間0.04~0.20、P=0.008)。

差はごく小さなものですが、統計的には有意といえます。

ただし、ここから「スマホを使うとうつになる」と結論づけるのは短絡的です。

この研究のすばらしさは、このうちおよそ3分の1以上で、うつ症状が「睡眠時間の短縮」と「脳の白質構造の変化」という2つの要因によるものと推定できた点です。

研究チームが拡散MRIという手法で、脳神経のネットワークが集中する「白質」の成熟度を解析したところ、特に感情の調整に関わる「帯状束(cingulum)」、前頭葉同士をつなぐ「小鉗子(forceps minor)」、側頭葉と前頭葉を結ぶ「鈎状束(uncinate fasciculus)」のうち、睡眠時間が短い子どもほど帯状束の組織化がわずかに低い傾向がみられました。ほかの二つの線維路では、統計的に有意な関連はみられませんでした。

すこし複雑になってしまいましたが、この結果から見えてくるのは、次のような一連の流れです。

まず、スクリーンの使用時間が長くなると、夜ふかしにつながりやすくなり、結果として睡眠時間が短くなります

十分な睡眠がとれない状態が続くと、情動の制御に関わる白質ネットワークの成熟過程に影響します。これが将来的なうつ症状の出現リスクを高める可能性があるのです。

寝ている子どもの掛け布団を直している親の手
写真=iStock.com/undefined undefined
※写真はイメージです

もちろん、これも完璧な研究ではありません。今回の調査の対象や手法には、以下のような限界があるからです。

この研究の限界

① 参加している子どもの社会経済的要因、家庭環境(親のスマホ使用習慣、学習環境、MRIをとりに行けるような家庭)、身体活動量、栄養など、調整しても取りきれない交絡因子が影響している可能性がる。

② スクリーンタイムや睡眠時間は子どもや保護者の自己申告に基づいているため、主観的なバイアスが含まれていたり、過少あるいは過大に評価されていたりする可能性がある

③ デバイスの目的が、学習なのか、SNSか、あるいはゲームなのか、区別されておらず、スクリーンタイムの増加によるポジティヴな効果については触れられていない

④ 睡眠と白質の変化で説明できた36%以外の64%は他の要因があったと考えられる

それでも、この研究は「睡眠を削ることが子どもの心の発達に影響する」という点を、脳画像を用いて科学的に示した点で価値があるといえます。

スクリーンそのものが悪者ということではなく、睡眠という土台が揺らぐことが子どもの心の発達に影響するということです。

学校時間の4分の1がスマホに

では、睡眠に影響しなければ際限なく使ってもいいのかと言うと、そういうわけではありません。

2025年4月には、医学誌『JAMA Pediatrics』に、中高生が学校にいる間どのくらいスマホを使用しているかを客観的に測定した研究結果が掲載されました。

アメリカの13歳から18歳を対象とし、自己申告ではなく専用アプリで使用時間を記録した信頼性の高い調査です。

その調査からは、学校にいる時間(6.5時間)のうち平均1.5時間をスマホに費やしており、クラスの4人に1人は2時間以上使用していることがわかりました。

1.5時間というと授業1〜2コマ分、全体の4分の1ほどの時間です。