日本社会の構造が変化する今、生命保険会社にも新たな役割が求められるようになっている。そうした中、保険商品・サービスの提供に加え、社会課題の解決にも力を注いでいるのが日本生命だ。業界をけん引する立場として多様な取り組みを進める同社は、何を重視し、いかなる世界の実現を目指しているのか――。朝日智司社長に聞いた。

自分仕様に組み合わされた多面的な安心を提供

――社会構造の変化は事業にどのような影響をもたらすと考えていますか。

朝日智司(あさひ・さとし) 日本生命保険相互会社 代表取締役社長 社長執行役員 1987年京都大学経済学部を卒業し、日本生命保険入社。総合企画部担当部長、営業企画部長 兼 営業人事部長、東京中央総合支社長などを歴任。2014年執行役員。18年取締役常務執行役員。21年取締役専務執行役員。23年代表取締役副社長執行役員。25年4月より現職。
朝日智司(あさひ・さとし)
日本生命保険相互会社
代表取締役社長
社長執行役員
1987年京都大学経済学部を卒業し、日本生命保険入社。総合企画部担当部長、営業企画部長 兼 営業人事部長、東京中央総合支社長などを歴任。2014年執行役員。18年取締役常務執行役員。21年取締役専務執行役員。23年代表取締役副社長執行役員。25年4月より現職。

【朝日】所得格差の拡大や少子高齢化、また気候変動といった課題がさらに深刻化すれば、社会の活力は奪われます。それは日本生命グループを縮小均衡に陥らせる要因にもなりかねません。その意味で、社会課題の解決に直接働きかけていくことは私たちにとって非常に重要で、いっそう拡充していくべき取り組みだと考えています。

――取り組みを通じて、どのような世界の実現を目指しますか。

【朝日】人、地域社会、地球環境など非財務資本の課題解決に貢献することで日本社会全体のウェルビーイング向上を支えていく。それにより私たちも持続的に成長し、さらに社会課題の解決を後押ししていく。そうした価値創造サイクルの構築が目標で、その基盤となるのが“ニッセイ安心圏”です。

――“ニッセイ安心圏”とはどのようなものですか。

【朝日】生活の変化や地域の状況に応じて、それぞれが必要な支援につながることができるネットワークをイメージしています。年齢や家族構成、働き方、また将来の備えなどによって個々の課題は異なります。そこで、自分仕様に組み合わされた安心体験を提供していきたい。私たちは、生命保険を中心にアセットマネジメント・ヘルスケア・介護・保育などの事業を展開する“安心の多面体”を志向しています。グループ会社も含め一体でそれを強化し、安心を提供する社会インフラとして、地域ごとの“ニッセイ安心圏”を形成していきたい考えです。

日本生命は長期的に目指す企業像として「“安心の多面体”としての企業グループ」を掲げる。保険だけではカバーできない多面的な安心を地域社会、顧客に提供することを目指している。
日本生命は長期的に目指す企業像として「“安心の多面体”としての企業グループ」を掲げる。保険だけではカバーできない多面的な安心を地域社会、顧客に提供することを目指している。

――取り組みを進める中でどのようなことを重視していきますか。

【朝日】“Pan-Japan”から“地域起点”へ。これが一つのポイントです。社会課題と一口に言っても、当然地域によって差異があり、“日本全体”の視点ではくみ取り切れません。また、ある課題解決策を全国で展開しようとすれば時間もコストもかかってしまう。であれば、地域起点でそれぞれの実情に合った施策を進め、成功事例を似た課題を持つ地域に横展開していけばいいというのが私たちの考え方です。

人ならではの共感・共創力を大事にしてそれぞれの地域に寄り添う

――これまでの具体的な取り組みにはどんなものがありますか。

【朝日】代表的なものに「がん啓発活動」があります。地域住民の方へがん検診に関するアンケートを行い、結果を自治体などにフィードバックする活動で、検診受診率の向上など地域の皆さまの行動変容をサポートしています。

また昨年から、国のNDB(※)を活用した「ニッセイ医療費白書」を発行し、自治体を中心に無償提供しています。疾病ごとの有病率や患者1人当たりの医療費などがまとめられ、自治体の政策立案や住民の健康リテラシー向上に活用できる内容になっています。

※匿名医療保険等関連情報データベース(National Database of Health Insurance Claims)。

――取り組みを進める際の日本生命グループの強みは何でしょうか。

【朝日】全国に支社があり、そこに人材を有している。やはりこれが強みです。課題解決に当たっては、地域の実情を正しく把握し、自治体や地域の企業、金融機関などと連携することが求められます。そうした中で、各地の支社は地域の課題解決のプラットフォームの中核になり得ると考えています。

社会課題解決を通じて実現したい世界

――人と人とのコミュニケーションが重要になってくるわけですね。

【朝日】はい。約1100万人のお客さまとつながるデジタルネットワークを活用しながら、人は人にしかできない仕事をしていきます。私は営業部長時代にベテラン営業職員の保険金支払い手続きに同行したときのことが今も忘れられません。お客さまが職員に「あなたがいたから、保険に入り、続けられた。本当にありがとう」と心から感謝していたのです。こうした“思い”のやりとりは人と人だから可能になる。デジタル全盛の時代だからこそ、人ならではの共感・共創力を大事にして、地域に寄り添っていきます。

――目指す世界の実現に向け、どうリーダーシップを発揮していきますか。

【朝日】私は社長就任後、「まっすぐ、お客様へ。もっと、地域、社会のために。」を基本方針として掲げました。ここには職員が自分のすべきこと、できることは何か、これまでの仕事の枠組みにとらわれず、主体的に考えてほしい。社外に飛び出し、多様なステークホルダーと真摯しんしに向き合ってほしいとの願いを込めています。この方針を職員一人一人に腹落ちさせることが私の重要な仕事の一つです。

――最後に今後に向けた抱負などステークホルダーへのメッセージをお願いします。

【朝日】地域ごとの“ニッセイ安心圏”を形成し、社会に不可欠なインフラとしての役割を担っていく。繰り返しになりますが、私たちは具体的な取り組みを通じてこれを実現させていきたい。その中では多くのチャレンジが必要となるに違いありませんが、チャレンジを通じて私たち自身も成長し、新たな価値創造サイクルをつくっていきますので、ぜひこれからの日本生命グループにご注目ください。