「アントレプレナーシップ」は課題と向き合い挑戦する意欲そのもの
学びの価値を最大化する「1学年99人」の少人数制
【大竹】これからの時代を生きるあらゆる人にとって欠かせないのが「自らのキャリアを切り開く力」です。社会課題を乗り越えながら主体的にライフキャリアをデザインしていく上で、経済学は論理的に分析し、選択していくための基盤となります。
日本女子大学経済学部
特別招聘教授
大阪大学特任教授。博士(経済学)。専門は行動経済学、労働経済学。日本経済学会・行動経済学会会長、政府新型コロナ対策分科会委員などを歴任。NHK「オイコノミア」で経済学の普及にも尽力。日本学士院賞など受賞多数。データや行動経済学を用いて社会課題の解決に取り組む。
【伊ヶ崎】社会で活躍する女性が増え、自分らしいキャリアを描くことが当たり前になった今、ビジネスや社会の動きに深く関わる経済学を学ぶ重要性はますます高まっていると感じます。大竹先生は「女子大学という環境で経済学を学ぶ意義」を、どのようにお考えですか。
【大竹】行動経済学の視点から、女性は男女混合の集団にいると男性との競争やリーダーになることを避ける傾向があることが分かっています。「女性は控えめに振る舞うべき」というステレオタイプの考え方にとらわれてしまうためです。リーダーシップを発揮したい、積極的に競争に参加したいという意欲を、自ら抑え込んでしまうのです。
【伊ヶ崎】周囲の環境しだいで行動が変わるのですね。
【大竹】もう一つの大事な視点として、一般的に経済学部は女子学生の比率が低いという現状があります。女子大学に経済学を学べる環境が用意されていれば、心理的なハードルは下がり、真に学びたい学問に安心して打ち込むことができますね。
【伊ヶ崎】女子大学ならではのきめ細かな視点で学生たちをフォローできる、そんな学びの環境は今のニーズに十分に応えるものだと思います。特に恵まれたST比(※)による「1学年99人」という少人数体制は、本学部の価値を最大化する特徴です。
※ 教員1人に対する学生数。
AI時代に求められる本質を問うための力
【大竹】単なる知識の獲得だけなら生成AIやインターネットで十分に代替できます。重要なのは、その前後にある「問いを立てる力」や「結果を適切に解釈する力」です。例えばある課題について、私と学生が生成AIで調べてみると、提示される結果の品質には大きな差があります。同じ道具を使っているのに、なぜでしょうか。それは全体像が見えているか、何を問うべきかを分かっているかどうかの違いです。
日本女子大学経済学部
学部長就任予定
九州大学経済学部3年次から同大学院経済学研究科へ進み、博士課程修了。博士(経済学)。九州大学大学院助手、熊本学園大学准教授、日本女子大学准教授などを経て、2018年より教授、前家政学部長。専門分野はマクロ経済学。研究領域はイノベーション、持続的成長、環境問題。
【伊ヶ崎】それこそ経済学の本質ですね。「それっぽい」情報があふれている時代だからこそ、振り回されない冷静な判断力が求められます。日常でも、せっかくたくさんの時間やお金を費やしてきたのだからと、合理的な判断ができなくなることがあります。経済学でいう「サンクコスト(埋没費用)」の仕組みを知ると、過去のコストと今後の見通しをきちんと分けて考えられるようになります。
【大竹】そもそも、綿密に計画を立ててもその通りに実行できないのが人間の特性であることは、行動経済学が明らかにしています。経済学は自身の非合理な行動まで織り込んだ、本当に実効性のある人生設計にも役立つわけです。自ら課題を見つけ、分析し、考えを形にしていくプロセスは、日本女子大学の経済学部が重視する「アントレプレナーシップ」を育む上でも大事な要素ですね。
【伊ヶ崎】本学が考えるアントレプレナーシップとは起業にとどまらず、課題を自らの問題として受け止め、挑戦する意欲そのものといえます。
【大竹】新たな技術によって既存の仕組みがすぐに陳腐化していく時代ですから、学び続ける姿勢は欠かせません。経済学の面白さは、こうした激変する社会や人生のあらゆる場面に応用できる点にあります。皆さんが重視するタイパやコスパ。これらは本当に自分の意思で選んだ合理的なものか、あるいは巧みに誘導されているだけなのか? 経済学を活用することで、一歩立ち止まって深く考え、本当の意味で賢く豊かな選択ができるようになるでしょう。
【伊ヶ崎】身近な消費行動の裏側にも、経済学的な視点が隠れていますよね。自分の中に「思考の軸」があれば、実社会で何よりの力になります。大規模な総合大学の経済学部が何でもある「大きなホテル」だとすれば、本学は学生一人一人に寄り添う「オーベルジュ」のような存在です。少人数だからこそ、それぞれの関心や将来に合わせた質の高い「オーダーメードの学び」を提供します。
【大竹】3年次から全員がゼミに所属して卒業論文を執筆するのも、私立大の経済学部としては異例のぜいたくな環境ですね。
【伊ヶ崎】日本女子大学は125年に及ぶ歴史において、自ら学び、問いを立て行動して新しい価値を創造できる人材を育ててきました。その強固な基盤の上に生まれる経済学部から、女性たちが高く羽ばたいていけるよう、全力で支えていきます。

経済を知ることは、人間を知ること。豊かな未来をつくる幅広い専門知識と分析手法が身に付く「経済学部」
日本女子大学の経済学部経済学科では、4年間で「経済」「経営・起業」「生活・公共」の3領域を複合的に修得。
経済の原理や仕組みを理解し、日常のさまざまな選択から、地域やビジネス、地球規模の課題までを捉える確かな知識と分析力を養う。
家族の在り方や少子化、子育て支援といった身近なテーマを経済学の視点から学ぶ「家族の経済学」や、女性の働き方を通して日本社会の課題や政策の効果について考える「女性労働論」など、女性の一生に寄り添い、当事者として社会に対する理解を深めることのできる科目を提供。
写真は労働経済学を専門とする中山真緒専任講師のゼミ授業の様子。

125年の節目を通過点に、さらなる改革を推進中
東京都文京区目白台に位置する女子総合大学・日本女子大学。1901年、日本初の組織的な女子高等教育機関として創立。 時代の変化や社会のニーズに応じた学びへの発展・深化を目指して大学改革を推進。 2028年度に「ファッションデザイン学部(仮称)」「人間科学部(仮称)」、29年度に「理工学部(仮称)」の開設を構想中。 高い就職率を誇り、例えば経済学部の前身となる家政経済学科は過去5年で100%近くを維持。
