エネルギー安全保障の強化にもつながる
――住友重機械工業の事業概要から教えてください。
【渡部】当社は「メカトロニクス」「インダストリアル マシナリー」「ロジスティックス&コンストラクション」「エネルギー&ライフライン」の四つのセグメントで事業を展開し、その中でギヤモータや各種生産設備・機器、建設機械、エネルギープラントなどの開発、提供を行っています。多くの製品・ソリューションに共通するのは、それらが社会や産業活動を支えるインフラの役割を担っている点。各現場で多様な社会課題、事業課題と向き合っています。

――そうした事業において「脱炭素」をどう位置付けていますか。
【渡部】重要な社会課題の一つである脱炭素社会の実現にいかに貢献するか。これは当社が果たすべき使命だと捉えています。また私たちは「こだわりの心と、共に先を見据える力で、人と社会を優しさで満たします」というパーパスを掲げており、その実践のためにもCO2排出量の削減は避けて通れません。事業を通じて課題を解決し、それによって当社自身の企業価値を向上させ、さらに貢献度を高めていく。そうした好循環の創出を目指しています。
――具体的にどのような形で脱炭素社会の実現に貢献していきますか。
【渡部】土台となるのは独自に策定した「カーボンニュートラル戦略」です。「森林循環・バイオマス」「再エネ推進」「燃料転換・省エネ」により、実効性のあるカーボンニュートラルの実現を目指します。化石燃料に頼らない仕組みをつくることは、石油や天然ガスなどのエネルギー資源が戦略物資としての色合いを強める中で大きな意味を持つ。国のエネルギー安全保障を強化するという観点でも重要な取り組みだと考えています。

国内外から多数の見学者が訪れるエネルギー貯蔵施設も
――「カーボンニュートラル戦略」を支える代表的な製品・ソリューションを教えてください。
【渡部】「森林循環・バイオマス」ではバイオマス発電プラント関連の事業が一つの柱で、多様な燃料を燃やすことができるボイラなどの各種設備や運用支援システムを提供しています。さらにボイラの技術を応用したシステムにより、合成ガスから液体燃料をつくる取り組みなども手掛けています。
他方、長年培ってきた排水処理技術を生かし、有機排水からのバイオガス製造システムの高効率化も、その独自性が評価されています。
「再エネ推進」では広島ガスと進めている「液化空気エネルギー貯蔵」が国内初となる先進的な事業です。これは再エネなどの余剰電力で空気を圧縮・冷却・液化し貯蔵するというもの。液化空気を気化・加熱し膨張させれば、そのエネルギーでタービンを回して発電できるため、余剰電力をためる技術として注目されています。再エネの活用に有効なため、商用実証プラントには国内外から多くの見学者が訪れています。
――「燃料転換・省エネ」の取り組みについてはいかがですか。
【渡部】建設機械の電動化などは以前から進めており、すでに電動ショベルをはじめ多くの製品を開発しています。また、高効率モータの開発も当社の知見が存分に生かされている分野です。産業活動での電力使用の多くを占めるのが実はモータの駆動。モータを高効率化することで非常に大きな省エネ効果を生み出すことができるのです。
技術や製品を組み合わせ他にない提案が可能
――顧客からはどんな声がありますか。
【渡部】おかげさまで製品やシステムが「安定して稼働する」との声を多く頂いています。安定稼働は製品の基本の部分であり、安定性や信頼性への評価は私たちにとって非常に励みになります。なぜなら、例えばバイオマス発電も安定稼働しなければ、お客さまの事業は成立せず、社会に持続的に価値を提供できないからです。
――住友重機械工業の強みはどんなところにありますか。
住友重機械工業株式会社
代表取締役社長 CEO
1986年住友重機械工業入社。プラスチック機械事業部企画管理部長、財務経理本部長などを経て、2024年1月から取締役専務執行役員CFO。26年1月より現職。
【渡部】多様な事業、製品を有している点は当社の大きな強みです。それらを組み合わせることで、他にはない課題解決策を提案することが可能になります。例えば、発電、ギヤモータ、生産設備・機器を束ねてエンジニアリングできる会社は多くない。そうした総合力は脱炭素の分野でも生きてくるはずです。また課題解決策を検討する際、プロダクトアウトの発想ではなく、お客さまと密にコミュニケーションを図り、一緒に最善の道を探っていく。そうした文化が組織に根付いている点も当社の特長です。
――最後に今後の抱負をお願いします。
【渡部】「脱炭素と自社の事業活動を切り分けることなく、事業を通じて社会課題を解決していく」。引き続きそうしたメッセージを発信していきます。自らの仕事が社会課題の解決につながっていると感じられれば、社員のモチベーションも向上する。それが仕事の質を高めることにもなります。
加えて、外部との連携にもいっそう力を入れていく考えです。他社との技術的な連携はもちろん、行政や地域との協働も社会課題の解決には欠かせません。多様な主体と協力しながら、まだ世の中にないソリューションを生み出し、共通の目標である脱炭素社会の実現を支えていきます。