東京都では持続可能な社会の実現に向け、電力を「へらす(H)」「つくる(T)」「ためる(T)」という脱炭素に直結する三つの活動を「HTTアクション」として、都内の家庭や企業による取り組みをサポートしている。企業に向けては、2023年に「HTT取組推進宣言企業」という登録制度を設けた。企業によるHTTの先行事例として、「HTT取組推進宣言企業」の一社であり、積極的な取組を行う株式会社首都圏環境美化センターに、具体的な取り組みとその成果について聞いた。

HTTの取り組みは経営課題の解決に直結

「私たち首都圏環境美化センターは、企業の事業所や学校、病院といった施設から紙類、プラスチック類、飲料容器などの廃棄物を回収し、選別、破砕、圧縮という中間処理を行うリサイクル企業です」

首都圏環境美化センターの事業について説明してくれるのは、同社の取締役の斉京由泰氏だ。

斉京由泰(さいきょう・よしやす) 株式会社首都圏環境美化センター 取締役
斉京由泰(さいきょう・よしやす)
株式会社首都圏環境美化センター 取締役

1994年にパッカー車1台で創業した首都圏環境美化センターは、現在は従業員100人を超える規模に成長し、100台を超える車両を保有、主に東京23区内や神奈川県川崎市の法人の事業所およそ2000カ所から廃棄物を集荷している。環境マネジメントシステムについての国際規格ISO14001の認証や、産業廃棄物の適正処理を行っていることを認定する東京都の「産廃エキスパート」を取得するなど、従来から環境経営には力を入れてきた。

「HTT取組推進宣言企業については、東京都さんとのやりとりの中で制度の存在を知りました。当社が独自に進めてきた省エネや発電の取り組みも該当しそうだということがわかり、登録を申請しました」と、斉京氏は登録の経緯を振り返る。

同社では2023年に、リサイクル施設の屋根に太陽光発電パネルを取り付けることを検討しており、HTT取組推進宣言企業の制度開始は絶好のタイミングだったという。

首都圏環境美化センターではまず2023年に飲料容器のリサイクルを行う第1、第2リサイクルセンターの屋根に合計112枚の太陽光発電パネルを設置。その後、プラスチック類をリサイクルする第5、第8リサイクルセンターにも同様にパネルを設置して、現在は計4施設で太陽光発電を行っている。設備導入にあたっては東京都の「地産地消型再エネ増強プロジェクト」や、その後継制度にあたる「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」の補助金も活用している。

「リサイクルの作業では廃棄物の選別や圧縮にかなりの電力を使うので、HTTの取り組みは経営課題の解決に直結します。屋根に太陽光発電パネルを設置したことで、それぞれの施設で使用する電力の2割から3割を賄うことができるようになり、太陽光発電システムの導入費用を差し引いてもトータルの電力コストを抑えることができました。とりわけここ数年、電力の価格は高騰しているので、経営的にも大きな助けになっています」(斉京氏、以下同)

同社の場合、施設の屋根に設置した太陽光発電パネルで生まれた電力を、その直下の工場のラインで利用している。工場は主に日中に稼働しているため、作った電力をそのまま使う形となり、大変効率がよいという。

【左上】第2リサイクルセンターの屋根に設置した太陽光発電パネル。 【右上】廃飲料容器を再資源化するためのリサイクル中間処理施設の一つである第2リサイクルセンターには、異物を含めた混合状態で回収されてくる。 【左下】廃飲料容器は選別機を用い、ペットボトル・缶・ビンなどマテリアルごとに選別される。画像は選別後、圧縮されたペットボトル。 【右下】圧縮後のペットボトルや缶は、積み上げられ次の工程を待つ。
【左上】第2リサイクルセンターの屋根に設置した太陽光発電パネル。 【右上】廃飲料容器を再資源化するためのリサイクル中間処理施設の一つである第2リサイクルセンターには、異物を含めた混合状態で回収されてくる。 【左下】廃飲料容器は選別機を用い、ペットボトル・缶・ビンなどマテリアルごとに選別される。画像は選別後、圧縮されたペットボトル。 【右下】圧縮後のペットボトルや缶は、積み上げられ次の工程を待つ。

HTTで客観性と自信をもって自社の取り組みを伝えられるように

同社では太陽光発電以外にも、節電委員会を社内に設置し、白熱灯や蛍光灯をLEDに交換する、空調効率向上のため空調機を省力型に切り替える、営業車両に電気自動車やハイブリッド車を採用する、またフリーオフィス制として使わないエリアの電気を消すといった地道な節電・省エネの取り組みも続けてきた。

「クールビズへの対応として、エアコンの設定温度を高めにすることができるよう、会社名のロゴを入れたポロシャツを作り、夏場はスーツではなくてポロシャツで仕事をするという取り組みも進めました。夏場、着衣に涼しさを求めると、ともすれば服装が乱れがちになってしまいますが、仕事着としてポロシャツを着てもらうことで、機能的かつ服装の乱れがないように考えています」

このポロシャツは社員に大変好評とのことだ。

こうした積極的な取り組みが東京都にも評価され、首都圏環境美化センターでは2023年12月に「HTT取組推進宣言企業優良取組表彰」(※)を受けている。

※「HTT取組推進宣言企業優良取組表彰」は現在実施されていません。

「2024年4月にオープンした新工場では、施設内のスペースにゆとりを設け、太陽光発電システムだけでなく蓄電池も併設しました。それによって太陽光発電された電力を蓄電し、工場内で利用することができます」

蓄電池については東京都の「地産地消型再エネ・蓄エネ設備導入促進事業」からの補助が見込めたことも設置の後押しになったという。同社では外部から購入する電力についても、ゼロエミッションのグリーン電力に切り替えている。

「ゼロエミッションの電力は普通の電気代よりも高くなると思いがちですが、当社の場合、そもそも使用する電力量が大きいこともあって、新たな負担なしで導入することができました。他社さまでも検討の余地があるのではないかと思います」と斉京氏。

「HTTの優良取組を企業として受賞したことで、社員のモチベーションも上がったと思います。例えば、新たなお客さまに自社を紹介する際、HTT取組推進宣言企業に登録し、かつ優良取組を受賞したとお話しすることで、会社として積極的に脱炭素の取り組みを行っていることを、自信をもって伝えられます。これは営業活動において、他社と比較しての優位性の構築につながっていると感じています」

HTT取組推進宣言企業に登録されると、東京都の公式ウェブサイトに掲載される。また、首都圏環境美化センターの本社入り口や社内のドアにはあちこちに「HTT」の青色のステッカーが貼られ、HTT取組推進宣言企業であることをアピールしている。一目で伝えることが難しい脱炭素に向けた自社の取り組みを、客観性をもって伝えられ、営業をはじめとした事業の強みにしていけるという点は、HTT取組推進宣言企業という制度の大きな魅力といえそうだ。

「HTT取組推進宣言企業 優良取組」の表彰状を手にほほ笑む斉京氏。
「HTT取組推進宣言企業 優良取組」の表彰状を手にほほ笑む斉京氏。

時代はマテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルへ

「リサイクル工場では経営課題として常に作業の効率化に取り組んでいます。例えば2022年に飲料容器の処理施設である第1リサイクルセンターに光学選別機を導入した際には、従来に比較して処理能力が約5倍に向上しています。同じ電力量で処理できる資源の量が大きく増え、省電力にもつながりました」

同社が現在、力を入れているのが、プラスチックゴミの処理だ。

東京都の法人の事業所は、基本的に全てのゴミを分別して出さないといけない決まりがあるのだが、実際には十分周知されておらず、プラスチックゴミの中に食べ残しや割り箸といった可燃ゴミが混ざっていることが少なくない。

「当社ではそうした廃棄物もただ燃やすだけでなく、その熱を使った発電につながるように取り組んでいます。これをサーマルリサイクルというのですが、政府の方針としては今後、サーマルリサイクルよりも素材をそのまま再利用するマテリアルサイクルや、プラスチックを原料である石油成分に戻して使うケミカルサイクルを推進していく方向になっています」

プラスチックにはペットボトルに使われるポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などがあり、素材ごとに選別することでマテリアルリサイクルの割合を高めることができるが、選別には相当な手間がかかる。

「当社で最新のプラスチックリサイクルを行う工場のラインには、風力選別機と光学選別機をセットで導入し、プラスチックの選別精度を上げて、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルへの切り替えを促進しています」

この二つの選別器をセットにしたラインを備えているリサイクル業者は、日本国内ではほとんどないという。同社では同様の取り組みが全国に広がってほしいと考え、同業者であっても見学を希望する先には公開している。

【左上】廃プラスチック類などの産業廃棄物中間処理施設の一つである第8リサイクルセンター。廃プラスチックを効率よく選別するために、風力選別機、光学選別機などの機械を独自に組み合わせ、ラインが作られている。 【右上】集められたゴミ袋は重機でゴミ袋を破る機械へ投入し、ここから選別作業がスタートする。 【左下】各工程は機械化が進むが、リチウム電池を含む廃棄物を取り除くなど、中には人手が欠かせない工程も。 【右下】首都圏環境美化センターのロゴが入ったパッカー車(産業廃棄物 4トン)。
【左上】廃プラスチック類などの産業廃棄物中間処理施設の一つである第8リサイクルセンター。廃プラスチックを効率よく選別するために、風力選別機、光学選別機などの機械を独自に組み合わせ、ラインが作られている。 【右上】集められたゴミ袋は重機でゴミ袋を破る機械へ投入し、ここから選別作業がスタートする。 【左下】各工程は機械化が進むが、リチウム電池を含む廃棄物を取り除くなど、中には人手が欠かせない工程も。 【右下】首都圏環境美化センターのロゴが入ったパッカー車(産業廃棄物 4トン)。

「取引先のお客さまにおいても、かつてはゴミの処理費用が安いことが最優先でしたが、近年は『どうやってリサイクルしているのか』を気にされるお客さまが増えてきました。新たな設備の導入はそうしたご要望に応えるものでもあります。今後は持続可能社会に貢献している企業でなければ、処理費用が安くてもお客さまに廃棄物処理業者として選定されない方向に向かうと考えており、その意味でもHTTでの表彰は当社の強みになっています」と斉京氏は語る。

首都圏環境美化センターにとってHTTの取り組みは、環境と経営の両面に大きく貢献するものとなっている。

HTT取組推進宣言企業登録申請受け付け中

760を超える企業・団体が登録している「HTT取組推進宣言企業」(2026年6月末現在)。登録した企業には、以下のような特典があります。

■HTT取組推進宣言企業としての登録証が発行されます。
■東京都の公式ウェブサイトに企業名や取組内容等を掲載します。
■東京都の中小企業制度融資の対象となります。
都内に本社または事業所を置く企業・団体等を対象に、以下から登録申請が可能です。