英語を話すことが苦手なビジネスパーソン必読!「話せる英語」のための学習方法を紹介しよう。アドバイスをいただいたのは、NHK教育テレビ「しごとの基礎英語」で講師を務めている言語学者の大西泰斗さん。3つのポイントを前向きに取り組めば、英会話の苦手意識は克服できる。
大西泰斗●おおにし・ひろと
言語学者。東洋学園大学教授。NHK教育テレビ「しごとの基礎英語」の講師としても活躍中。英語の感覚をわかりやすく伝える教授法に定評がある。『ビジネスパーソンの英語』(日本実業出版社)『一億人の英文法』(東進ブックス)など著書多数。

英文資料の読解や英文eメールの処理には慣れてきたが、どうしてもうまく話すことができない。そんな悩みをもつビジネスパーソンは多いが、ビジネスに英語を使う必要性がさらに高まることを考えると、のんびり構えていられるわけでもない。

そこで今回は、東洋学園大学教授の大西泰斗さんに、話せるようになるにはどうしたら良いかについてアドバイスをいただいた。

『一億人の英文法』(東進ブックス)など多数の著作を発表するかたわらでNHK教育テレビの「しごとの基礎英語」の講師も務め、国民的な課題とも言える英語習得に向けて言語学者の立場から尽力しているが、教鞭をとる大学での現状をこう語る。

「英語を読むことはある程度できても、話す、書くとなると苦手な学生が多いですね。これは日本人全体の傾向ですが、さまざまな試みが出てきているものの、改善への決定的な方法論はまだ見つかっていません」

しかし、勉強の方法がないわけではない。同氏は、ビジネスパーソンが英語を話せるようになるために不可欠なポイントを3つ掲げる。

ポイント1
話すための文法を身につけるべき

「これまでに勉強してきたリーディングや文法の知識が、実際に英語を話すときに役立っていないことが最初の大きな課題です。多くの日本人の文法知識は、英文の訳読には役立っても、話すためには役に立たない。話すことに最適な文法を身につける必要があります」

話すために必要な文法とはなにか。それは、これまで身につけてきた文法が、ネイティブの文法といかに違うかを知ればよく理解できるという。
「関係代名詞の入る文章が典型的ですが、日本人は後ろから前へと遡って意味を把握します。一方のネイティブは英文を左から右へ、文章の頭から末尾へ向けて読み、理解します。『I went to school yesterday.』というごく平易な文章でも、日本人は『私は昨日学校へ行きました』と遡って理解するが、ネイティブはそのままの語順で理解しています。

リスニングやリーディングをするだけならこのように語順を置き換えて解読できますが、自分から話すときにも同じような置き換えをすると話がそこで止まってしまう。ネイティブたちの語順と同じように、英語を左から右へ紡いでいくための文法がどうしても必要です」

右へ進むほどに修飾によって文意が開かれていく。それが、ネイティブたちが普通に使う英語の文法なのだ。

「英語は説明のための語句が『後ろ』に置かれます。『I met her at a bar in Roppongi.』という一文は、『彼女に会った』から始め、どこで会ったかを説明するために『バーで』が入り、バーがどこにあるかを説明するために『六本木の』で終わる。こうした右へ右へと展開するのは英語の気持ちと言っていいでしょう。『It's difficult to speak English.』なら、『英語を話すことは』から話し始めるのではなく、『難しいんだよ』から始める。こうした英語の気持ちを、文法を通して効率よく学ぶことが何よりも重要です」