FIT開始で実感が高まる
再エネの事業可能性

──日本で昨年7月に始まった「固定価格買い取り制度」(FIT)について、どうお考えでしょうか。

【山家】日本で初めての、本気度が見える再エネ促進策ととらえています。これまでの支援策は、再エネ普及にはむしろ制約になるものも見受けられましたが、FITは事業者目線に立った条件でスタートしています。また、再生可能エネルギーの資源は地域によって賦存量が違います。今回のFITは太陽光、風力など、技術・分野ごとに条件を定め、それぞれの資源を有する地域が活躍できる基盤を整えている点も、評価されるべきですね。

──FIT開始から約1年半が経ちました。普及状況をどう見ていますか。

【山家】「再エネは事業になる」と多くの関係者が実感しています。特に、太陽光発電市場の盛り上がりは突出しています。遊休地に太陽光パネルを敷けば、それがビジネスにつながっていく。また、太陽光や地熱、風力が資源として活用される可能性が広がったため、日本中のさまざまな自治体が、地域に眠っているエネルギーを意識するようになりました。すでに先進的な自治体は、再生可能エネルギーの活用を地域活性化策の1つとしてとらえ、独自のエネルギー戦略や計画を策定し始めています。

──太陽光以外の再生可能エネルギーの動きはいかがでしょう。

【山家】風力は他の資源と比べて開発期間が短いとされているため、当初は太陽光と並ぶスタートダッシュが期待されたのですが、環境アセスや農地法の規制が見直された影響で、普及に時間がかかっています。しかし、経済面でのポテンシャルが高く、重要度が高いことには変わりありません。地熱、風力、バイオマスのそれぞれの開発計画も動いています。今後のFITの認定分野としては、海洋エネルギーが注目されています。

──FITに、今後解決していくべき問題点はありますか。

【山家】FITは、“発電設備が開発できたら20年間は固定条件で買い取る”という制度です。これは再エネ活用の1つの出口であり、普及の必要条件であっても、十分条件ではありません。十分条件を満たすには、(1)立地(2)送配電網などの系統(3)各地域間のネットワークの整備という3つの課題をクリアしていく必要があるでしょう。立地については、環境アセスや農地法などの制約をどうクリアしていくか。系統は、現実的に優先接続になっていない日本の送電システムをどう見直すのか。ネットワークとは、各地域でバラつきがある電力の需要と供給を広域で調整していくもので、電力システム改革にもつながります。

──「スマートハウス」や「スマートグリッド」などの可能性についてはいかがでしょうか。

【山家】「スマートハウス」とは、省エネ・節電と再エネ利用を同時に実践できる住宅のことで、すでに日本では有力なビジネスになっています。省エネ家電や太陽光パネル、蓄電池、さらにHEMS(家庭用エネルギー管理システム)や充電池などをセットにした住まいのあり方が急速に普及しています。住宅というハードに、環境配慮型のソフトを加えて迅速にビジネス化するのは日本人の得意分野。今後ますます発展していくのではないでしょうか。

一方、「スマートグリッド」とは「次世代送電網」のこと。発電所が電力を各家庭やオフィスに供給するという一元的なシステムではなく、発電所、電力会社、家庭(スマートハウス)、各事業所などをネットワークで結び、より効率的な電力の発送電を可能にするシステムです。電力の「地産地消」を可能にするもので、今後の発展に期待が寄せられています。