グローバル化の進展によって、他国の社会課題や紛争が自国のビジネス活動にも大きな影響を及ぼす現在。企業は利益を追い求めるだけでなく、社会とどう関わり、持続可能な未来に貢献できるのか、その「存在価値」が問われるようになった。
世界に目を向けて企業が行動を起こすことは、ステークホルダーの信頼や優秀な人材の獲得を後押しし、より強い組織の構築につながる。それを後押ししてきたのが、1937年に創立し、誰もが平等な世界の実現に向けて世界80カ国以上で子どもたちや女の子たちと共に活動する国際NGOプラン・インターナショナル(国際本部・英国)だ。その一員である公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン(以下プラン)では、多様な機関や企業と共に、途上国開発、国内外におけるアドボカシー(政策提言)活動、啓発活動を推進している。寄付を通じてプロジェクトに参画する多くの企業が、単に「寄付をして終わり」ではなく、その先にある「自社の成長」を実感しているという。関西圏を中心に外食事業、精肉小売業を展開する株式会社1&Dもその一社だ。
透明性の高い活動を通じて社会貢献を「見える価値」に
株式会社1&D
代表取締役社長
1&Dの代表取締役社長・髙橋淳氏は、2009年にプランとの連携をスタートさせた理由について、「社会貢献活動を、より目に見える価値に変えたかった」と説明する。ビジョンとして「未来から選ばれる企業へ。―未来のお客さま、未来の仲間、未来社会―」を掲げる同社が最重要テーマとしているのが「人財の採用・育成・定着」である。その強化を図る上で、プランとの協業には大きな意味があった。
協業する支援団体の選定に当たって髙橋氏が重視したのは、ネームバリューではなく、活動の「高い透明性」や「確かな計画性」だったという。
「会社の資金を拠出する以上、その使い道を従業員に胸を張って伝えなければなりません。自分たちが頑張って働いて得た利益が社会の役に立っている。それを実感し、誇りを持って働くことが、組織にとってプラスになると考えています」
プランでは、プロジェクト管理、支援者への活動報告、会計報告、個人情報保護などを徹底している。長期にわたり支援を続けている企業が多い背景には、密なコミュニケーションによる信頼関係がある。1&Dではこれまで、カンボジアで10校、ラオスで4校、そして同社の初の海外進出先でもあるベトナムで7校の学校建設支援プロジェクトを支援してきた(26年5月現在)。コロナ禍の影響で事業が苦境に立たされた時期は中断を余儀なくされたが、平時を取り戻したタイミングで迷わず、支援を再開させた。1&Dにとっての社会貢献活動は、すなわち企業の存続を左右する人材への投資に他ならないからだ。
「学校の落成式には、毎回、社内公募で選ばれた10人程度の従業員を派遣し、現地の子どもたちと交流しています。この経験を通じて、派遣したメンバーの価値観は大きく変わることになります。日本では当たり前のことが世界では決して当たり前ではない。自分たちの仕事が遠い国の誰かの未来を支えていることを実感するのです。日々の業務に対する姿勢に前向きな影響を与えますし、周囲に当社の存在意義を伝え、浸透させていく役割も担います」
パートナー企業とのベクトルを合わせてより強固な関係性へ
社会貢献と事業戦略の高度な融合はステークホルダーとの関係性強化という効果も生む。例えば1&Dでは、学校建設プロジェクトの軌跡を記録したドキュメンタリー映像を制作し、ステークホルダーに向けて上映する機会を設けている。「単にコストや効率を追求するだけのビジネスライクな関係を超え、私たちが目指す未来社会の姿を共有することで、パートナー企業とのベクトルを一致させています。目線を合わせることが、強固なパートナーシップの基盤になるのです」と髙橋氏は言葉に力を込める。
プランと1&Dの取り組みは、ベトナム政府からも高く評価された。ホーチミンでのレセプションには現地の商工会議所の職員や領事も出席し、ハノイではベトナムの首相との面談も実現するなど、学校建設プロジェクトは「国と国との架け橋」としての発展が期待されている。そして髙橋氏のまなざしは、育成した人材たちがより高く羽ばたいていく光景を捉えている。
「建設した学校に通う子どもたちが将来日本へ留学し、当社の店舗で働く。われわれの技術、作法、考え方を学び、リーダーとしてベトナムの店舗で働いたり、自分でビジネスを展開したりする。両国間の人材の好循環を加速させていきたいと考えています」
企業らしさを発揮できるプロジェクトを作り上げる
このようにプランでは、企業の理念や事業領域に合わせて、世界80カ国以上のネットワークから最適な支援先と手法を提案している。既存のパッケージに企業を当てはめるのではなく、「その企業らしさ」が伝わるプロジェクトを共に作り上げていくアプローチが特徴的だ。店舗への募金箱設置を通じて顧客と共に課題解決を目指すケースや、技術を生かした職業訓練支援など、企業の規模や業種、リソースに合わせたオーダーメードの参画が可能である。
これからの主役である若い世代が「企業に求めるもの」も、かつてとは大きく異なっている。プランが18歳~29歳の414人を対象に実施した調査「Z世代はどう見ている? 最新調査から見えてくる企業のSDGs・社会貢献活動の形」(25年10月)によれば、就職・転職先を検討する際の軸の一本として、社会貢献活動をする企業を就職・転職先として考える人は全体の62%、特に男性社会人ではその傾向が高く、77%を占めるとの結果だった。社会貢献は「善意の一方通行」ではない。「次の時代にも選ばれる企業」へと進化するための、未来への投資である。
企業価値を高めるSDGs・DE&Iの取り組みを、具体的なアクションへ
プラン・インターナショナルでは、企業の目的や課題、予算・期間などに応じて、社会貢献活動をSDGs・DE&I施策として社内外に発信できる形で具体化している。また、10月11日は、プランの働きかけを受けて国連が定めた「国際ガールズ・デー」。この日に向けて、女の子の権利やエンパワーメントを共に進めるパートナー企業を募集している。

企業の支援方法の一例:
●「国際ガールズ・デー」の協賛(単年キャンペーン)
●海外教育支援・緊急支援など(中長期プロジェクト)
・寄付は税制優遇(損金算入)対象
・活動報告書・PR素材の提供により社内外への展開が可能
・約80カ国での活動実績
これらの取り組みは、社会的インパクトの創出と同時に、企業の信頼性やブランド価値の向上にも寄与する。
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