「楽しいね」「おもしろいね」。驚きや感動を共有する
人間の脳は3歳までに80%が完成します。「三つ子の魂百まで」は、脳科学的にもおおむね正しいといえます。乳幼児期は、いわば知性の「根っこ」を育てる段階。「脳の土台づくり」の時期です。
乳幼児にとって、日常のありとあらゆることが「はじめて」の体験です。はじめて見る、はじめて聞く、はじめて触る――。
乳幼児期の感動体験に、特別な環境や道具は必要ありません。たとえば、公園で泥団子をつくり、水たまりで跳ねる。ポイントは、五感が同時にたくさん働くこと。リアルで立体的な刺激ほど、脳は差分(ギャップ)を感じとってドーパミンを放出します。
このとき親と一緒に遊ぶことは重要です。驚きや感動を共有して「楽しいね」「おもしろいね」と共感する。脳科学では「共同注意(ジョイントアテンション)」と呼んでいます。一緒に同じものを見て、同じ感情を抱いていると確認する経験で、「親の膝の上で指さし・語りかけ」もそうです。子どもが鳥を見つけた瞬間に「あ、鳥さんだね」と話しかけるだけで、子どもの脳は安心して探索への意欲をもちます。
まだ自分で話せない時期だからと手を抜くのは誤り。しゃべりはじめる前の時期は「サイレント・ピリオド」といって、聞いた言葉や感じた空気はすべて脳に蓄積されます。手を抜かずにたくさん話しかけてください。
五感を丸ごと使う「泥んこ遊び・水遊び」
乳幼児期の感動体験は、自然の中で「五感」をフル回転させることが最も効果的です。最近は都会にも、子どもたちが水や泥に触れられる公園などが増えたので、利用するといいでしょう。
たとえば、泥団子を丸めて、乾くのをじっと待つ。手のひらの冷たさ、土や草の匂い、泥の重さ、跳ねた水の音……などをはじめて感知すると、子どもの脳は驚きと感動の刺激を受けます。「差分(ギャップ)」の刺激を受けた脳はドーパミンを分泌します。子どもの脳が喜んでいる状態です。
できれば親も汚れていい服装で出かけ、一緒に泥団子をつくってください。親も楽しんで感動体験を共有していることは乳幼児にも伝わり、さらに脳を活性化させます。
創造力の芽を育てる「ごっこ遊び」
ごっこ遊びはイマジネーションの訓練です。コップを持って「ゴトンゴトン、電車だよ」と動かしたり、ペットボトルを「ロケット発射!」と飛ばしたり、別のモノに見立てます。調理のまね事をする「おままごと」もよいと思います。
演じることや見立てる遊びには、脳の前頭葉を中心とする回路を強化する働きがあります。「ごっこ遊び」ができるのは人間だけであり、まさに創造力の土台です。
タブレットで見る動画が制作者から完成品を受け取るだけなのに対して、ごっこ遊びは自分でルールを設定し、好きな物語を紡ぐことができます。与えられた体験に比べて、自分で創造した体験のほうが脳への刺激が強いのです。
親の役割は「おもしろいね」と共感し、一緒に遊んでやること。自然で温かい反応があることで、子どもは安心して創造の翼を広げることができるのです。


