世界と日本の
ツーリズム産業の比較

日本のツーリズム産業にはまだ伸びしろがある
ツーリズム産業は非常に裾野の広い産業であり、グローバルで見ると金融、通信、教育に続く規模を誇る。日本においては伸びしろがあり成長が見込める産業だ。

観光立国実現に必要な
オールジャパンの連携

観光立国というのは観光だけで成し遂げられるものではありません。さまざまな「立国」、いわば国家ブランドを打ち立てることが大事だと私は考えます。例えば「技術立国」は日本の匠を世界に知らしめる。他にも「環境立国」、「貿易立国」、「農業立国」、「スポーツ立国」、「医療立国」、「文化芸術立国」など観光素材になり得る「立国」はたくさんありますが、これらを推進する基軸になるのが“交流”です。人が「交流」することで認知が広がり、「文化」が交わることで新しいものが生まれる。すべてはツーリズムと密接にかかわってくるのです。

私達JTBグループは旅行業の次なるステップとして「交流」と「文化」を事業にしていこうと決意しました。それが現在、事業ドメインに掲げている「交流文化事業」です。その推進としてDMC(デスティネーション・マネジメント・カンパニー)戦略があります。地域の様々な主体と一緒に地域資源の魅力を再発見し、磨きをかけて、日本全国、世界各国から集客を促すということです。全国にある支店の従来のミッションは地元のお客様の旅行を取り扱うことでしたが、今では全国、全世界から地元に人を呼び込むことも各支店の重要なミッションです。

一方でグローバルレベルでの交流文化事業も進めています。これまでJTBも含め旅行会社の海外ネットワークは日本からやってくるお客様をお迎えするためのものでした。いわば「日本発・世界着」だったものを「世界発・世界着」のネットワークに変え、世界トップレベルのホスピタリティ・マネジメント、おもてなしの精神を「世界発・世界着」にしたいと思います。

是非、観光立国を企業のイノベーションドライバーにしていただきたい。内外の人々の交流が活発になることで新たなニーズが顕在化、社会や文化に変化が起こる。それに対応していく中で企業の中にイノベーションが生まれ、新しい市場の創造につながるのではないでしょうか。

観光立国の実現に向け、私達ツーリズム業界に携わる者がやるべきことはいくらでもあります。しかし冒頭に申し上げたように、ツーリズムはあらゆる産業・組織とかかわりがある。「多彩な産業による連携」が観光立国実現に向けた重要なキーワードで、観光によるかけ算の六次産業化を進めるべきというのが私の持論です。地元の一次産品を生産者の紹介つきで販売、地元の食材を使った料理の提供など地産地消は多くの地域で取り組まれていますが、まだ十分とはいえません。各地域を活性化するには地域の宝探しをして、農林水産業の一次産業、製造業の二次産業、サービスの三次産業、すべての産業にツーリズムの観点を導入してイノベーションを起こすことが重要です。

そう確信し、実現のために、私達は大いに汗をかきたいと考えています。