社会課題と向き合う際、「コミットメントとオーナーシップ」が重要に

2022年に「カーボンニュートラル宣言」を行い、翌年、学内使用電力の100%再生可能エネルギー化を達成。また24年に生物多様性の損失を止め、その回復を目指す「ネイチャーポジティブ宣言」を発出するなど、先進的な取り組みで知られる龍谷大学。27年度には全国初の「環境サステナビリティ学部」(仮称)を開設する予定だ。その狙いや養成する人材像、そして社会的意義とはどのようなものか。今回、同学部の学部長に就任予定の岸本直之教授と三井物産サステナビリティ経営推進部長の恩田ちさと氏が語り合った。
岸本直之さん、恩田ちさとさん

自らの感性を大事に 対立ではなく対話を

【岸本】浄土真宗の精神を建学の精神とし、仏教SDGsを推進する龍谷大学にとって持続可能な社会の実現は重要なテーマ。そこで、環境サステナビリティ学部(仮称)では実践的に課題解決と向き合い、未来をデザインできる人材の育成を目指しています。

岸本直之(きしもと・なおゆき) 龍谷大学 副学長 環境サステナビリティ学部(仮称) 学部長(就任予定) 1995年京都大学大学院工学研究科衛生工学専攻修士課程修了。京都大学大学院工学研究科講師などを経て、2003年龍谷大学理工学部助教授。23年同先端理工学部長。25年同副学長。専門分野は水質システム工学。博士(工学)。
岸本直之(きしもと・なおゆき)
龍谷大学 副学長
環境サステナビリティ学部(仮称)
学部長(就任予定)
1995年京都大学大学院工学研究科衛生工学専攻修士課程修了。京都大学大学院工学研究科講師などを経て、2003年龍谷大学理工学部助教授。23年同先端理工学部長。25年同副学長。専門分野は水質システム工学。博士(工学)。

【恩田】「実践的」はポイントですね。三井物産も事業において「現実解」を重視しており、それは社会課題に対しても変わりません。事業を通じて、収益性と両立させながら課題を解決していく。まさに具体的、実践的な取り組みを意識しています。

【岸本】サステナビリティと人の暮らし、営みは切り離せない。おっしゃるとおり、経済活動とも不可分です。そのため環境サステナビリティ学部(仮称)では、都市環境工学や生物多様性科学および経済学・経営学の専門知、そしてそれらを“統合”した知の習得を大事にしています。社会を変えていく際、科学や技術も重要ですが、それだけでは不十分。人間の考えや行動も理解する必要があります。文理の枠組みを超えた複眼的思考の養成は私たちのテーマです。

【恩田】今の時代、「自己と他者」「味方と敵」を区分けして対立軸で物事を語りがちです。しかしサステナブルな社会を実現するには多様な価値観の尊重が欠かせません。そこで生きてくるのが統合知や複眼的思考ですね。さらに持続可能な社会をけん引するには、個々のビジネスや活動が今の、また将来の世の中に“フィットするか”。これを判断する判断軸として経験や学びに基づく価値観や感性も必要だと私は感じています。

【岸本】自分の中に専門的な知見などに基づく基準をしっかりと持ち、同時に相手の考えに耳を傾け、柔軟にコミュニケーションを取りながら物事を判断していく――。

【恩田】はい。自らの判断軸、そして感性を大事にしながら、対立ではなく対話をする。これはサステナビリティ関連の課題解決に限らず、物事を前に進めていく際に求められる姿勢だと思います。

環境サステナビリティ学部(仮称)が養成する人材像

現場での体験を重視し学生一人一人に伴走

【岸本】環境サステナビリティ学部(仮称)では、そうした感性や判断力を養うためにもリアルな現場での体験を大切にしていきます。具体的には、体験・共創型のPBL科目(※2)「クエスト科目群」を1年次から4年次まで体系的に開講し、実際の自然環境に触れて課題を発見する力を磨いたり、企業や団体と連携してチームで課題解決に挑んだり――。座学と現場を行き来しながら学んでいきます。

恩田ちさと(おんだ・ちさと) 三井物産株式会社 執行役員 サステナビリティ経営推進部長 1995年一橋大学社会学部を卒業し、三井物産入社。化学プラント部、ベネズエラ駐在、プロジェクト本部中南米担当などを経て、2014年プロジェクト本部の中南米担当部署にて室長。20年よりサステナビリティ経営推進部長。23年より現職。
恩田ちさと(おんだ・ちさと)
三井物産株式会社
執行役員 サステナビリティ経営推進部長
1995年一橋大学社会学部を卒業し、三井物産入社。化学プラント部、ベネズエラ駐在、プロジェクト本部中南米担当などを経て、2014年プロジェクト本部の中南米担当部署にて室長。20年よりサステナビリティ経営推進部長。23年より現職。

【恩田】企業にとっても事業現場はサステナビリティ活動実践の最前線です。三井物産のサステナビリティ経営推進部は各事業本部のメンバー、つまり現場の人間が集まる形で基本的に構成されています。事業本部ごとに観点や立場が異なる部分もあるため、バランスを見ながら調整し、継続的に施策を進めています。

【岸本】そうして社会や事業の在り方を地道に変革していくわけですね。ただ、大学に入学したばかりの学生には「社会は完成されたもの」といったイメージを持っている者も少なくありません。「自分に何ができるのか」と。それが現場でリアルな課題と向き合うと、「自分たちにもできること、やるべきことがある」とだんだん目の色が変わってきます。

【恩田】貴重な経験ですね。私が社会人として大切にしていることに「コミットメントとオーナーシップ」があります。責任感や主体性、当事者意識を持って、仕事や課題に取り組む。お話を聞いて、環境サステナビリティ学部(仮称)の学びはそうした考えともつながっていると感じました。

五つの専門教育プログラム

【岸本】まさにつながっています。「クエスト科目群」や五つの専門教育プログラム(上部参照)をはじめとするカリキュラム、また環境省などの行政や地域、企業・団体との連携などを通じて、主体的、自律的に、加えて周囲と協力して行動できる人材を育成していきたいと考えています。

【恩田】当社も自社の事業活動を学びの題材とした探究型アクティブラーニング「サス学」アカデミーを小学生から大学生までに提供するなど、人材育成に力を注いでいます。人材は持続可能な社会実現の土台。龍谷大学からこれからの社会を支える人材が輩出されることを期待しています。

【岸本】ありがとうございます。知識や体験を単に与えるのではなく、学生の興味や関心を引き出し、一人一人にしっかり伴走して成長を支えていきたい。そう思っています。

※1 設置計画は予定であり、内容に変更が生じる場合があります。
※2 PBLはProject Based Learningの略で課題解決型学習のこと。

ブランドデザイン・ストーリー
環境サステナビリティ学部広告

智と知を結集させ、さまざまな課題が複雑に絡み合った現代の環境問題を解決へとリードする人間を育成し、持続可能な地域、そして地球を、次世代へと継いでいく様を表現している。

【2027年4月にキャンパス名称を変更】
・深草キャンパス→京都深草キャンパス(京都市伏見区)・大宮キャンパス→京都大宮キャンパス(京都市下京区)・瀬田キャンパス→びわ湖大津キャンパス(滋賀県大津市)