1566年、近江八幡で蚊帳・生活用品販売業として創業。1887年より布団の販売を開始。現在は寝具メーカーとして、良質な睡眠に関する研究などを踏まえた商品・サービスを提供。

単にモノを買うだけでなく特別な体験や発見の機会に
【西川】今年、nishikawaは、創業460周年という一つの大きな節目を迎えることになりました。1566年の創業以来、近江商人の精神を脈々と受け継いできた私たちにとって、この数字は長い歴史における「通過点」です。まずは代々のお客さま、お取引先さま、そして製品を使ってくださる皆さまへの深い感謝をお示ししたいと思います。それと同時に、「500周年」という40年先のあるべき姿から見据えなければならないと考えています。「500周年を迎える時にどうありたいのか」を起点として、ロングレンジのバックキャストを描く中で、今年を一つの転換点と位置付けました。
【竹内】私が社長として指名された理由は、まさにこの「第二の創業」を、スピード感を持って実現するためだと受け止めています。これまでのことを振り返ってみると、当社が440周年の際、会長の西川は38歳の若さで社長に就任しました。当時、営業の現場から本部に移ったばかりだった私は、西川が語る「製造小売り的な考え方」へのシフトを目指す改革案は遠い未来のことで、なんだか「夢物語」を聞いているようでした。しかし、「まだこの世にないもの」だった睡眠に関するサービスや製品開発が、この20年で一歩ずつ、着実に具現化されているのを強く感じています。この土台に立って、0から1になったものを、大きく100へと進化させていくのが私の使命だと考えています。
【西川】私たちの原点は「行商」です。自らの土地で吟味したものを持って外へ出て、工夫して良さを伝え、喜んでいただく、そうして得た対価で現地の産物などを買って戻る。ここにnishikawaが460年続いてきた根源があると思います。そこで改めて「行商」という原点を現代に置き換えてみると、緻密なマーケティング、おのおののお客さまにとって適切な製品やサービスのご案内、そして単にモノを買うということだけでなく、特別な体験や発見、学びの機会となって喜んでいただくことが重要な要素です。この循環が、売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」へとつながります。そう考えると、やはり私たちが展開する店頭のオペレーションはエンターテインメント性のある、いわば「眠りのテーマパーク」と呼べるようなものであるべきだと考えています。デジタル化が進んで簡単に買い物ができたり、コンテンツを消費できたりする中でも、例えば音楽業界では、実際に足を運ばなければ体験できない「ライブ」が高い支持を得ているでしょう。このライブ感というものが、当社にとっても付加価値を大きく生む要因になると思うのです。
SPA型企業へさらに加速 日本の課題を解決する
【竹内】当社は「卸主体」の時代が長く続いてきましたから、私も含めて、多くの社員は「お得意先さまに寝具を卸すこと」をなりわいとして入社してきました。近年では自分たちで小売りにもチャレンジし、試行錯誤を重ねてきたことで、「次のnishikawa」のフレームがはっきりしつつあるのが今というタイミングです。ここからいよいよSPA(製造小売業)型企業への転換を加速していく上では、生活者の皆さまが主役のものづくり、サービスづくり、店づくりが不可欠です。寝具を販売するのは一つの接点であり、その先には、日本全国に数多くの「睡眠に課題を持っている方」がいらっしゃいます。当社は元々、蚊帳や生活用品の販売からスタートした企業です。ずっと人々の生活を守るためのビジネスを展開してきたという意味では、われわれが皆さんの意見に耳を傾け、個々のお悩みに合わせた睡眠のソルーションを届けていくのは、必然であるといえます。
早稲田大学法学部卒業後、1990年住友銀行(現・三井住友銀行)に入行。ニューヨーク支店、国際統括部などを経て、95年に西川産業に入社。2006年代表取締役社長、24年より現職。
【西川】当社は常に、事業のベースに「社会全体の課題を解決する」ことを置いています。かつて蚊帳を販売していた時代も、蚊による睡眠不足や病気の媒介を防ぐという、ある意味では疾病予防を担っていたわけです。現代における社会課題といえば、人口減少と少子高齢化、そして社会保障費の増大です。多少賃金が上がったとしても、医療費などが増えているために、なかなか手取りが増えたという実感が湧かないと思います。実は長年の研究により、この解決において「睡眠」が大きく貢献できることが分かってきました。例えば糖尿病や腎臓病、認知症といった慢性的な疾患のリスクを減らすことができるのです。日本は世界でも睡眠が短く、質も良くありません。一方、AIが進化し、さまざまな作業が置き換わっていくこれからは、人間が「ひらめき」を発揮することが重要です。質の高い睡眠が十分に取れていないとひらめく力を発揮することができません。そうした意味で、社会の中での睡眠の価値をもう一段、二段と引き上げていきたいと考えています。
「毎日違う自分」に向けて最適な「衣食住遊」を提案
【西川】どんな睡眠が健康的で心地よいのかは人それぞれで、年齢や住んでいる地域の気温、環境によっても最適な解が異なります。われわれには、一人一人の状況に応じて睡眠をフィッティングさせていく、その裏付けとなる膨大なデータがあります。さらには、同じ一人のお客さまであっても、その日の体調や運動量、飲酒の有無、精神的なプレッシャーなどに影響を受け、睡眠の質は一定ではありません。当社がサポートしているアスリートの皆さんはいつでも安定したパフォーマンスが求められるわけですが、それは当然ビジネスパーソンにも当てはまります。大事なプレゼンの日に、「今日はちょっと気分が乗らない」といった言い訳はできませんよね。当社オリジナルのセンサーを搭載した「[エアーコネクテッド]SXマットレス」によって取得できる呼吸や脈拍といった高精度のバイタルデータは、その人の毎日の自律神経の状態を表します。データの「見える化」によって、朝を迎えるごとに「違う自分」であることがはっきりと分かるのです。今日はこんな状態だからこういう食べ物を食べよう、そうした睡眠を起点とした「衣食住遊」を最適化するプラットフォームの構築が可能となるのです。
「睡眠で困った時はnishikawa」そんな存在になりたい
【竹内】その「見える化」と「解決策の提示」のパッケージこそが、nishikawaがSPAとして提供する最大の価値でしょう。当社には「日本睡眠科学研究所」での42年にわたる研究成果という、他社にはないエビデンスの蓄積があります。計測したデータに基づく物理的な解決策から、生活習慣のアドバイス、さらには必要に応じた医療機関への受診勧奨までをシームレスにつないでいく、そんなソルーションの高度化を目指し、個人はもちろん、企業の健康経営推進に貢献していきます。
東海大学海洋学部船舶工学科卒業後、1993年西川産業に入社。営業本部営業戦略室課長、執行役員営業企画室室長、取締役上席執行役員営業統括、執行役員西日本営業統括などを経て、2026年より現職。
【西川】いい睡眠を取って健康を維持できている人には社会に貢献しているとしてポイントが付与される、そんな仕組みがあってもいいのではないかと想像しています。すると、皆さんや企業がいい睡眠を取ることに努める、病気になりにくい社会になって医療費が抑制される、生活の質が向上する――壮大な夢かもしれませんが、竹内が申し上げたように、かつては夢物語だったことが新たな技術でどんどん実現できるようになってきました。当社を含めて30社ほどが参画する睡眠マネジメントに関する産学連携コンソーシアム「スリープ イノベーション プラットフォーム」では、睡眠から得られる情報をどのように経済活動に落とし込んでいくのかという議論を本格化させています。睡眠の改善を企業は福利厚生の一環として取り入れることも考えられますし、睡眠時無呼吸症候群に起因する疾患の予兆を捉えることにも活用できます。
【竹内】そうした構想を前進させていくためにも、生活者の皆さまをはじめとする多くの声をダイレクトに聞く機会を増やしていきたいと思っていますし、社員一人一人が同じ目的に向かって一緒に進める組織でありたいと思っています。そして、気軽に製品を試したり、適切なアドバイスを受けられたり、楽しい時間を過ごせたり、「睡眠に関して困った時に最も寄り添ってくれるのがnishikawaだ」と感じてもらえる拠点をもっと展開していきたいですね。
【西川】睡眠のデータを徹底して活用する「超デジタル」と、日本ならではのおもてなしを中心とした「超アナログ」の融合を進めていきます。医療や美容、お子さんの教育など、各領域とも連携して、日本や、世界の課題の解決に挑んでいく。睡眠プラットフォーム企業となって、新たな時代のエコシステムの中心的役割を担っていきたいと考えています。