活発化する国内回帰の動きに呼応した産業団地の実現へ
東急不動産株式会社
インフラ・インダストリー事業ユニット
インダストリー事業本部 開発企画部
基幹産業拠点推進室 室長
日本の産業構造は大きな転換点を迎えている。長らく続いた海外生産シフトから一転、地政学リスク、為替変動リスクの顕在化などを背景とした国内回帰の動きが顕著だ。しかしながら、受け皿となる地方では人材の流出による労働力不足が深刻化し、またサプライチェーン全体での脱炭素化を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)への対応をどう進めていくか、多くの企業が頭を悩ませている。
こうした複雑な社会課題に対し、東急不動産が打ち出した解がGXPである。同社の石井拓也氏は、プロジェクトを立ち上げた動機を次のように語る。
「近年、特にコロナ禍以降は国内に生産・物流拠点を戻そうとする企業の動きが活発化しています。しかし、単に土地を切り売りするだけの従来の産業団地では、現代の企業が抱える脱炭素化や労働力の確保といった課題を根本的に解決することはできません。東急不動産ホールディングスの中期経営計画では、重点テーマとしてGXビジネスモデルの確立や、地域共創による成長領域の創出を図るグローカルビジネスの拡大を掲げています。さらに、渋谷エリアの大規模再開発などで培ってきた豊富な経験値を掛け合わせることで、地域と企業の持続的な価値向上に貢献できる産業団地を創出したいと考えたのです」
地域に深く根差した活動で共に問題の解決に挑む
まさに「産業の在り方を再構築」できるだけの実績を、着々と全国で重ねてきた。石井氏が説明する。
「この10年ほどで、当社がインフラ・インダストリー事業の一つとして展開してきた再生可能エネルギー事業が急成長を遂げました。太陽光、風力、バイオマスを合わせて2.1ギガワット規模(2025年12月末時点)の発電能力があり、再生可能エネルギー由来の電力を豊富に供給しています。これまで全国の自治体と連携し、再生可能エネルギーを活用した地域活性化や防災基盤整備において深い信頼関係を築いてきました。例えば当社が風力発電事業を手掛ける北海道松前町では、町内に当社事務所を構え、顔の見える事業者として地域の皆さんと一緒に地域課題の解決を図っています。地域に根差し、さまざまな取り組みを通じてまちづくりや企業の事業活動を後押ししていく。このプロセスを実現できる力こそがデベロッパーである当社のアイデンティティーであり、他社には真似できない強みと言えるでしょう」
GXPが目指すのは、物流倉庫を核としながら、工場、住宅、商業、交流施設などが有機的に結びついた複合型のまちづくりである。その具体像は、先行して整備が進んでおり、2030年前半にまちびらきを予定している「(仮称)サザン鳥栖クロスパーク」(佐賀)に象徴される。石井氏は、GXPが提供する付加価値として「GX」と「DX」の高度な融合を挙げる。
「一部の土地についてはわれわれが物流倉庫を建設し、それ以外の多くの土地に関しては産業用地として分譲するのが基本的な形です。産業の集積に伴って必要とされる電力量も増加するわけですが、それを当社が作る再生可能エネルギー由来の電力供給でカバーすることができます。地球環境、サステナビリティに対する情報開示が強く求められ、サプライチェーン全体での温室効果ガス削減が欠かせない中で、GXPの取り組みに大きな価値があると感じていただけると思います」

実用化に近づきつつある先進的な自動化技術
そして、DXの鍵は「自動化技術」が握っているという。
「GXPはいずれも高速道路インターチェンジ近接の立地を選定しています。早期から自動運転技術に強みを持つベンチャー企業への出資を通じて、実装に向けた取り組みを進めてきました。われわれなら自動運転の精度を検証するための広大なフィールドを用意することができます。将来的には高速道路上の自動走行だけでなく、目的の倉庫にたどり着いたトラックがそのまま倉庫内に入って他社の自動化技術と連携するなど、異なる企業間をつなぎ合わせる役割も担いたいと考えています。24時間、人の手を介さないオペレーションが可能になれば、人手不足を解消する有効な一手となるでしょう」
今年1月には、東急不動産が展開する大型マルチテナント型物流施設間をドローンが運航して配送する実証実験も実施。関東圏の人口集中地区(DID)上空におけるレベル3.5の遠隔自動運航で得た成果も踏まえ、今後、GXP内での活用も検討している。
多様な進出企業を募り連携してまちづくりを進めたい
「当社が所有し続ける一画は、地域交流施設の建設や、防災拠点としての整備も計画しています。さらにGXP周辺の住宅整備も含めたコンパクトシティー化を視野に入れ、上下水道など老朽化するインフラ設備の最適化、懸念される大規模災害の備えとしても機能させ、安心安全に暮らし続けていただけるよう注力します」
そう展望を語る石井氏は、改めて「共創」こそが重要であると強調する。
「他社も含めた多様なプレーヤーが力を合わせることでGXPは成長し続けられると考えています。全国の自治体や地域の皆さん、大学、そして共に未来を創っていきたいとプロジェクトに賛同してくれる企業、それぞれの知恵や技術が不可欠なのです」
専業農家に生まれた石井氏は、一次産業に触れながら育ち、時代とともに地域の姿が変わっていく様子を見つめてきた。その経験が、地域の問題を当事者として捉え、解決策を考える上での独自の視点につながっている。
「日本が再び世界で存在感を高めるために、このプロジェクトの成功へ全力を尽くします。誰もが幸せになれる事業を実現したいですね」