前例のない提案が高い評価につながった
――ドバイでのプロジェクトの概要について教えてください。
伊藤忠商事株式会社
機械カンパニー
都市環境・電力インフラ部
プロジェクト開発第三課
課長
【原田】当社はヨーロッパでの環境意識の高まり、循環型社会への移行というニーズを早期に掴み、イギリスを皮切りにこれまで20年近くにわたり廃棄物事業、特に官民連携事業による廃棄物処理発電事業に取り組んできました。都市化が進む中、世界で廃棄物管理は深刻な問題となっており、年間で東京ドーム約3000個に相当する廃棄物が発生しているといわれています。そのうち適切な処理がなされている廃棄物は半分程度といわれ、周辺地域の大気、水質、土壌を汚染、生態系に悪影響を及ぼしています。また、埋め立てた廃棄物から発生するメタンガスは、CO2のおよそ25倍もの温室効果があります。
このような中、人口・経済成長が著しいドバイ首長国も、「廃棄物の埋め立て処分ゼロ」を掲げ新たな廃棄物管理の仕組みを導入しようとしていました。さらに脱炭素社会への転換の流れもあり、廃棄物・環境問題、脱炭素への転換、エネルギー問題へ同時に解を提供する廃棄物処理発電プラント事業の計画が立ち上がりました。
伊藤忠商事株式会社
機械カンパニー
都市環境・電力インフラ部
プロジェクト開発第三課
課長代行
――受注の決め手はどこにあったのでしょうか。
【牛山】元々の事業計画では、工事のみを請け負うEPC(設計=Engineering、調達=Procurement、建設=Construction)の案件でした。しかしながらその後、同国初の廃棄物処理発電事業であること、巨額の資金を必要とし事業開発・運営が複雑なことから、事業開発・管理、ファイナンス・技術・マーケティングという民間の強みを最大限に活用する官民連携という手法の検討がなされ、この種の事業で英国・セルビアで実績のある弊社が参画し開発を進めました。ドバイではこれまでに例のないプロジェクトですから、政府と何度も協議を重ねて、新たなルールなども整備しながら事業化にこぎ着けました。ドラスティックな課題解決策を示し、実行できたことが、数多くいる関係者の高い評価につながったと思います。
【原田】化石燃料に頼ることなく、廃棄物を焼却処理する熱を使って蒸気を作り、タービンを回すことで発電します。ドバイのゴミ全体の約半分をこの施設で燃やすことができ、14万世帯に相当する約200メガワットの発電量を誇る「世界最大級の廃棄物処理発電プラント」です。
ロールモデルとして確立し、他の国にも展開
――建設期間中にはコロナ禍もあり、苦心されたのではないでしょうか。
伊藤忠商事株式会社
機械カンパニー
都市環境・電力インフラ部
プロジェクト開発第三課
マネジャー
【馬場】私は2020年、2021年の2年間、コロナ禍がピークのドバイに駐在していました。当時は違う部署にいたのですが、この案件の進捗を見ていて、やりがいの大きさに惹かれて異動を希望したのです。廃棄物処理発電プラントが完成する前の現地の風景といえば、まるで丘のようにゴミが積み上げられていました。それが適切に燃やされ、減っていくのを見て、改めてドバイの皆さんに貢献できているのだと実感しています。
【牛山】太陽光や風力といったクリーン電力もありますが、日中しか発電できなかったり、風に左右されたりと不安定です。一方で、人間が出すゴミは常に供給されます。「24時間安定して発電できる」というのは、クリーン電力の中でも非常に信頼性の高い方式です。これを一つのロールモデルとして、今、アラブ首長国連邦周辺の中東諸国でも同様の方式で廃棄物処理発電プラントを建設したいという動きが広がっています。
――周囲の期待値が高まっていますね。
【馬場】4年間という定められた工期の中でコロナ禍もありつつ、期限を守って工事を完遂できたことも、関係者からの信頼感につながったと思います。現在のプラントで処理ができるのはドバイのゴミの50%。残りの50%も手がけられるよう働きかけたいと思います。他国での複数のプロジェクトも動いていますので、ぜひこの経験を活用していきたいですね。
【原田】継続的に施設のメンテナンスを行いつつ、政府へのノウハウの共有も進めていきます。今後はリサイクル事業や、AIのさらなる活用も進んでゆくと考えています。例えばプラントの発電効率の向上、廃棄物のトレーサビリティなど管理の向上にAIを使うなど、多様なパートナーとともに新たな技術を組み込んでいくことで、我々のサービスの向上を目指し付加価値を高めていきたいと思っています。政府、国際機関、金融機関、住民等多様かつ複雑なステークホルダーを取りまとめながら、事業を推進する役割を果たせるのは、やはり商社の強みでしょう。
【牛山】ドバイのプラントの運営は35年と長期間に及びますから、伊藤忠商事としてノウハウを蓄積し、組織に還元することで次の世代につなげていくことが重要です。挑戦し続けることでノウハウが溜まり、それをもってさらに世界中のお客さまに質の高いプロジェクトを提供していきます。
――環境フォト・コンテストについても、ひとことお願いします。
【原田】グローバルに事業を行う伊藤忠グループにとって、地球環境問題は経営の最重要課題の一つです。募集テーマ「地球のめぐみ」も、グループ企業理念の「三方よし」の精神に基づき、事業活動を通じて持続可能な社会に貢献したいとの想いを重ねて設定しています。今回の優秀賞作品「桜エビの天日干し」は、地域が誇る富士山や桜エビといった「地球のめぐみ」と人の営みをうまく切り取っており、撮影者のエールが強く伝わってきます。こうした風景を守れるよう、当社の事業もより進化させていきます。
●「環境フォト・コンテスト2026」入賞作品
●募集テーマ:地球のめぐみ