批判的思考力が身に付く意外な本の種類
批判的思考力に優れる人は、
・多様な視点や証拠を考慮し、積極的、かつ、粘り強く慎重に物事を考えられる人
・偏見や思い込みによる一方的な発言や提案がなく、信頼されやすい人
といえるでしょう。
さて、そんな批判的思考力と読書との関係を検討した研究として、イギリスのヘレナ・ホリスさんの研究を紹介します(※)。大学生が2週間の実験に参加しました。
(※)Hollis,H(2022).The influence of reading fiction upon critical thinking. Doctoral thesis(Ph.D), University College London.
この実験期間中、参加者は、
・フィクション(物語)を読む条件
・ノンフィクション(説明文)を読む条件
・何も読まない条件
という3つの条件のいずれかで過ごすことが求められます。
実験に参加する前と参加した後の2回、批判的思考力が測定されます。批判的思考力は、記述式の国際批判的思考力テストで測定されました。
このテストでは、参加者はある文章を読み、この文章の主な目的と結論は何か、著者の考え方の根底にある主な前提は何か、それは疑問視されるべきものか、著者の結論に暗示されるものは何で、社会にどのような影響を及ぼすものであるか……といったことを書き表すよう求められます。
物語を読むほど信頼されやすい人になる理由
結果として、批判的思考力の向上効果は、
・フィクション(物語)を読んだグループ>何も読まなかったグループ
・ノンフィクション(説明文)を読んだグループ≒何も読まなかったグループ
となりました。
さらに、2週間の間に読まれたフィクション(物語)の量が多いほど、批判的思考力が高まることも示されました。批判的思考力なら、ノンフィクション(説明文)のほうが上がりそうですが、結果はそうなりませんでした。
この結果について論文著者のホリスさんは、批判的思考力というものが単に知識の有無で決まるようなものではなく、自分とは社会的に異なる立場に立って考える力、他者への共感力、想像力、そして何かを考えるときに、これらの力を発揮しようという態度と関わるからだと考えています。
物語読書はこれらの力を高め、かつ、物語の教訓を「実感」させます。こうした実感が、相手の立場をおもんばかり、共感する力を発揮しようという姿勢をつくり上げるのかもしれません。
読書と思考力の関わりとして、もっと華やかな感じのする思考力……すなわち、知的好奇心や創造性との関わりも見てみましょう。
すでに、Part2(75ページ)にて、読書をする人は知的好奇心を含む「開放性」という性格特性が高い傾向があることを述べました。


