「ニコニコ」している子は強い
寝ぐせと並んで、私が現場で確信めいたものを感じたのが、合格する子は驚くほど「ニコニコ」しているという事実です。
特に女の子に多く見られますが、彼女たちは人生をかけた大一番の朝であっても、応援に来た私を見つけるとパッと表情を輝かせ、「先生、来てくれてありがとう」と笑顔で駆け寄ってきました。
これは、視野が極端に狭まっていないことの証しと言えます。中には、視野が狭まり、応援に来ている私たち講師の存在に気づかないまま通り過ぎてしまう子もいました。しかし、合格する子は自分の状況を俯瞰できており、周囲への感謝を伝える余裕を持っています。この精神的な余裕があるからこそ、難問に直面してもパニックにならず、冷静に対処できるのです。
そして、校門をくぐった後の行動でも、差が出ます。合格する子は、一度も親のほうを振り返らない傾向にあります。親としては手を振って送り出したい気持ちがあるかもしれませんが、彼らの背中は意外にもあっさりとしています。私はその背中を見るたびに、頼もしさや合格への確信を同時に抱いていました。
これは親からの自立が完了したというサインなのかもしれません。親の顔色をうかがう段階を脱し、自分ひとりで勝負する覚悟が決まっている、とも言えます。受験が「親にやらされているもの」から「自分の戦い」へと完全に切り替わっています。
トラブルにも臨機応変に対応できる
また、合格する子の強さは、不測の事態が起きた時にこそ発揮されます。
過去には、入試当日の朝、校門をくぐった後に腕時計を忘れたことに気づいた教え子がいました。普通の子なら顔面蒼白になりかねない場面です。しかし、彼は違いました。校門前にいた私のほうへ猛ダッシュで駆け寄ってきて、開口一番こう言ったのです。
「先生、時計貸して!」
彼は一瞬で「塾の先生なら時計を持っているはずだ」「先生に頼めば確実に貸してくれる」と考えたのでしょう。この「トラブルシューティング」の速さと図太さは、合格する子に共通する能力です。彼らは起きてしまったミスを悔やむことにエネルギーを使わないようです。事実を前提に、どうすれば最短でリカバリーできるかを考えたようなのです。
その後、彼からは「先生の時計なら縁起が良さそうだから、入試が終わるまで貸しておいて」と言われました。結果、彼は借りた時計を返さないまま、最難関校を含むすべての受験校に合格しました。
また、ある教え子は、試験会場の机がガタついていることに気づき、試験官を呼ぶのではなく、手元にあったプリントのような紙を小さくちぎって脚の下に挟み、自分でガタつきを直して試験に臨んだそうです。大人が仕事の現場で行うような「現場判断」を、小学生が自ら行ったのです。
彼らのように「自分に最適な環境を自分で作る」という意識がある子は、どのような環境でも実力を発揮できます。会場の席に着くまでの所作の中に、その子の実力が表れると言えます。


