何歳まで生きるかは誰にもわからない
では、公的年金は一体どんな不幸に備える保険なのでしょうか。年金が想定している最も大きな不幸は「予想外に長生きすること」です。
「え? 長生きするって幸せなことじゃないの?」と思うかもしれませんが、長生きして幸せなのは、健康でお金がある場合です。長生きはしたけれどお金が全くなくなってしまったのでは、悲惨なことになりかねません。
そこで、金融機関の人などは、よく「年金なんてあてになりませんから、老後に備えて自分で投資(貯蓄)しましょう」と言いますが、何歳まで生きるかは誰にもわかりません。自分で備えると言っても「いくらあれば安心か?」というのは正直に言ってわからないのです。だからこそ終身、つまり死ぬまで受け取ることのできる年金制度が必要なのです。
これは言わば所得保障の役割を果たすもので、「老齢年金」というものです。事故や病気や火災といった不幸は必ず起きるかどうかはわかりませんが、年をとって働けなくなるというのは等しく誰にでも訪れます。だからこそ死ぬまで受給することができる「老齢年金」というのは「長生きリスク」に備える公的年金の最も大事な役割なのです。
傷害保険や生命保険と同じような役割
2番目の不幸は病気や怪我で障がいを負ってしまった場合です。これに対応するのが「障害年金」です。「老齢年金」の場合は原則65歳、繰り上げても60歳からしか年金を受給できませんが、障害年金だと、一定の要件はありますが年齢に関係なく、障がいを負った時から、こちらも終身で受けることができます。民間の保険で言えば、仕組みは異なりますが、「傷害保険」に似た役割ですね。
そして3番目の不幸は死亡です。自分自身は死んでしまえばそれでおしまいですが、自分が一家を支える働き手であった場合、残された家族の生活に支障が生じます。そこでそれをカバーするために思いつくのは生命保険ですが、公的年金には「遺族年金」という制度があるため、残された家族に対して生活の立て直しができるまで、年金が支給されます。
したがって、民間の生命保険に加入する場合でも自分がもし亡くなった場合、遺族年金がどれぐらい支給されるのか、をよく調べた上で生命保険に入った方がいいでしょうね。