特別対談 MUFG×ミライロ
株式会社ミライロ
代表取締役社長
骨形成不全症という遺伝性疾患のため、幼少期より骨折が多く、車いすでの生活を送る。2010年立命館大学在学中にミライロを設立。ユニバーサルマナー検定、デジタル障害者手帳「ミライロID」などの開発・運営を行う。
株式会社三菱UFJ銀行
取締役常務執行役員 CHRO(人事部担当)
1996年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。営業店、本部勤務の後、人事部にて人事企画および運用を担当。執行役員コーポレート情報営業部長、執行役員法人・ウェルスマネジメント企画部長を歴任し、2025年4月より現職。
障がいは人ではなく社会に存在する
【南】「障がいは人が抱えているのではなく、社会に存在する」。私は垣内さんのこの言葉にハッとさせられました。まさにそのとおりで、この視点に立てば社内施策もお客さまへのサービスも取り組む際の意識が変わる。やるべきことも明確になります。
【垣内】意識や気持ちの部分はやはり大切です。日本のバリアフリーは世界でもトップクラスですが、これに“ハート”が加われば、真の共生社会に大きく近づくと感じます。
【南】MUFGでは共生社会の実現が自らの成長、しなやかな強さの獲得、そして社会の発展にも不可欠だと考えています。異なる価値観を掛け合わせ、化学反応を起こすことで新たな価値を生み出せる。また、お城の石垣が形や大きさの違うさまざまな石でできているように、組織を強くするのも多様性です。
【垣内】まさにミライロにも障がいの有無や種別、年齢、キャリアなど、多様な社員が在籍しています。そうした人たちによる多角的な視点が、デジタル障害者手帳をはじめ画期的なサービスを生み出す原動力になっているのは間違いありません。
「無関心」でも「過剰」でもなく
【南】三菱UFJ銀行では、ミライロの知見が詰まった「ユニバーサルマナー」を新入行員向けの研修に取り入れました。全ての人と向き合うときの「マインド」と「アクション」を身に付けるためのもので、研修を受けた者からは「相手の立場になるとはどういうことかを考える貴重な機会となった」などの声が上がっています。
【垣内】「相手の立場になる」というのは重要なポイントです。障がいのある人や高齢者への対応というと「無関心」か「過剰」に二極化しがちですが、相手や状況に即した対応こそが大切。ある経営者の方からは「ユニバーサルマナーを習得し、誰かに寄り添い行動できるようになることは社員自身の幸福にもつながる」との言葉を頂きました。
【南】昨年施行された「改正障害者差別解消法」では、民間事業者にも障がいのある人への合理的配慮の提供が法的義務化されました。この対応でも同じことが言えますね。お客さまが何を求めているのか、どうしたら気持ち良くサービスを利用していただけるか、何よりそうした発想が大切だと私たちは考えています。
【垣内】「障害者差別解消法」というと言葉が強烈で身構えてしまいますが、お客さまと対話をしながらできることから始めていく。対応のルールも必要ですが、ガチガチに決め込まず、動くことが大事だと思います。
【南】おっしゃるとおり。企業にとってルールや計画は重要なものですが、ある部分ではそれを変えていく必要があると感じています。近頃は「アジャイル」と言われますが、まずやってみて、改善しながら物事を素早く前に進めていく。その実現のためにも多様な考え、人材が必要で、DEIの促進がアジャイルな事業展開につながると思っています。
【垣内】共生社会の実現は新規顧客の獲得につながり得ますし、社会的価値と経済的価値を同時に生み出すチャンスでもあります。今後、金融業界で展開されていくサービスにおいても、多様な人が自分に合ったものを選択できる機会が広がっていくことを願っています。

真に必要とされるものを追求していく
【南】誰もが必要な金融サービスを利用できるようにする「ファイナンシャル・インクルージョン」はさらに注力していきたい分野です。先端技術も賢く生かし、障がいのあるお客さまを含めそれぞれに適したサービス、商品をまさにアジャイルに開発していきたい。MUFGには十分そのポテンシャルがあると信じていますし、それは私たちの責務でもあると考えています。
【垣内】ミライロはバリア(障がい)をバリュー(価値)に変えることを理念としており、「ファイナンシャル・インクルージョン」はそれを実践できる分野。私たちから見て、まだまだ伸び代がある分野です。多様な障がいへの対応は、高齢者への接客にも応用が利きますから、社会的な意義も大きいと感じます。
【南】MUFGのパーパスは「世界が進むチカラになる。」であり、共生社会の実現は欠かせないテーマです。そして、それを支えるのは繰り返しになりますが、多様な価値観が内在する組織だと思っています。ミライロさんとの連携もさらに強めながら、今後もお客さま、また社員が真に必要としているものを追求していきますのでよろしくお願いします。
