Q 国内外の経済情勢が不透明な局面で、資産を守り、育てるにはどんな資産運用が有効でしょうか?

A 株式や不動産に加えて、海外資産も。国際分散投資がスタンダードです。

横山利香●よこやま・りか
ファイナンシャル・プランナー 検定テクニカルアナリスト、独立系ファイナンシャル・プランナー。 株式投資をはじめ、外貨投資や投資信託、不動産投資などを実践する個人投資家として、自身の投資体験を元に、マネー誌から一般誌まで幅広く執筆やコメントする。著書に『「株」で着実に資産を10倍にふやした私の方法』(ダイヤモンド社)など

【横山】先ほども述べたように、景気回復の恩恵を受けるには、まずは国内の株式や不動産への投資が考えられます。不動産を安定した収益源として考えるなら、賃貸住宅経営などの収益不動産が一般的です。不動産は株式などと比べて値動きのブレ幅が小さいため、資金計画を立てやすいという利点がありますね。ただ不動産は20年、30年を見据えた長期運用となる資産ですので、ローンを組む際はしっかりとした資金計画が求められます。物件価格や投資利回りも大切ですが、長い間住まいとして利用するのですから、耐震性や快適性、環境性能といった建物の施工品質もおろそかにはできません。そして将来はその不動産を家族に引き継ぐのか、売却して老後資金の原資とするのか、早い段階から出口戦略を検討しておくと、いざというときに慌てずにすみます。

さらに資産運用の成長力や安定性を考えるなら、世界経済の中心である米国や高い成長が見込まれる新興国など、海外へ投資資金を振り向ける国際分散投資が、これからの投資戦略のスタンダードといえるでしょう。

とはいえ、投資経験の浅い個人投資家が海外、それも新興国の株式にいきなり投資するとなると、ハードルを感じてしまうかもしれません。そこで活用したいのが、投資信託やCFD(差金決済取引)などの投資ツールです。例えばCFDを使えば、欧米や中国など企業の個別銘柄や、金や原油などのコモディティを運用に組み入れるのも容易になります。ただしこれらの資産は一般的に値動きの幅も大きいので、一度にまとまった資産を投じるのではなく、少額から組み入れるのがおすすめです。

投資信託なら専門家が海外の個別銘柄の業績やマクロの経済環境などを勘案したうえでファンドを構成するので、海外の資産でも情報収集や銘柄選択などに苦労することなく、国際分散投資に役立ちます。しかし組成が複雑で値動きの仕組みを理解するのが難しいファンドは、結果的に成り行きまかせの運用に陥りがち。投資経験の浅いうちは、できるだけ値動きを理解しやすいファンドから組み入れたほうがベター。その点、インデックス型ファンドはベンチマークの動きを追っていれば、おおよその値動きが分かるシンプルさが魅力です。

Q 長く、安定した資産形成に取り組むために、どのような心構えを持って投資に臨むべきでしょうか?

A 知的好奇心を持って、「楽しむ投資」が成功の秘訣。

【横山】「資金計画」「資産運用」というと、どこか面倒くさく、敬遠してしまうという方も多くいらっしゃいます。そんな方には、投資の魅力が金銭的な利点だけではないことを知ってほしいですね。投資は、これから成長が期待できる企業などを見極め、投資という形でその発展を後押しする。ビジネスパーソンの知的好奇心を刺激し、達成感を与えてくれる行為でもあるんです。そんな個人投資家を手助けするツールも次々と登場しています。かつて資産運用といえば、株式や債券という限られたメニューしかありませんでしたが、現在は投資信託やCFD、不動産とさまざまな投資商品が登場、進化し、一人ひとりのライフプランに応じて自由な選択が可能になっています。投資に関する情報も豊富。プロと同等の情報が、瞬時に手に入るよう、投資環境は変化しています。もちろん、手に入れた情報の峻別には、ビジネスの現場で培った知恵と視点も存分に生かされることでしょう。早いうちから投資経験を積み重ね、運用資金を育てておけば、退職金などまとまったお金を運用するのとはまた異なる「投資の魅力」を学ぶことができると思います。

投資を通じて世界経済を読み解き、楽しみながら資産形成を始めてみる。これが、長続きする資産運用の第一歩といえるのではないでしょうか。